尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「今そこにある」医療崩壊ー世界比較で医師が少ない日本

2020年04月16日 23時17分25秒 |  〃 (新型コロナウイルス問題)
 政府は「緊急事態宣言」を全国に広げると発表した。当時のブログでは愛知県や京都府を除外するのはおかしいと書いたが案の定だ。また政府は「世帯ごとに30万円給付」という緊急経済対策を打ち出し、国会で「全体で事業規模108兆円、GDP(国内総生産)の2割に当たる対策は世界的にも最大級だ」などと豪語していた。それが一転、「国民一人当たり10万円支給」に変わるという。「世界最大級」はどうしたんだ? こんなに「朝令暮改」が相次ぐとホントどうなってるのと思う。こういう批判が出て、こうせざるを得なくなるという想像力が働かないのだろうか。

 日本でも新型コロナウイルス感染者数が増え続け、「医療崩壊」が近い、いや始まっているという報道が多くなってきた。昔謀略小説をよく書いたトム・クランシーに「今そこにある危機」(1989)という小説があった。ハリソン・フォード主演で映画化もされたが、なんだかその題名を思い出してしまった。原題を調べると「Clear and Present Danger」という。この「Present Danger」が日本の病院にも迫っているという。自分では医療現場を実感で知ることが出来ないが多くの報道が危機的状況を示している。
(横倉医師会長の発言)
 報道によれば日本全国の感染者は9千名を超えたという。大都市ばかりではなく、地方でも感染者数が急拡大しているのは事実である。クルーズ船関係者を含めると死者も200名を越えた。しかし、死者が3万を超えたアメリカ2万を超えたイタリアに比べて、まだ相当少ない段階にある。それでも「医療崩壊」してしまうんだろうか。そこには新型コロナウイルス独自の問題だけに止まらず、特殊日本的な課題がそこに現れていると思う。

 まず「院内感染」が非常に多い。福祉施設も含めて報道されたものは全国で幾つになるんだろうか。特に最初に大きく問題化した東京都台東区の永寿総合病院のケースでは、なんと163人が感染し、入院患者20人が死亡している。この死者はウイルス感染肺炎で入院したわけではない。他の病気で入院していて、今は感染防止のため面会も出来ないまま、突然院内感染したと言われ、数日後に突然亡くなって最期も看取れないまま遺骨だけが届くのである。また永寿総合病院から、コロナウイルス感染者じゃない患者が慶応大学病院に転院したことから、そちらにも院内感染が及んでしまった。

 何でそんなことが起きたのか。ウイルスの特徴は別に考えることにしたいが、このような院内感染が各地で起きたことにより、患者を受け入れ可能な病院がどんどん減っていく。救急搬送されても受け入れられず、「たらい回し」される事態がすでに起こっているという。コロナウイルス患者が受け入れられないだけでなく、他の病気の患者のケアに回せる人的余裕も失われつつあるんだと思う。千葉の障がい者施設で起こった集団発生では、朝も全員検温していればもっと早く察知できたのではないかと思うが、人員的にそこまで手が回らなかったとニュースで聞いた。医療や福祉の現場では、もともと待遇も不十分なのに重労働が続き慢性的に人手不足だったのではないだろうか

 発熱をしても検査が受けられないという声も多い。「PCR検査」Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)は病原体のDNAを増幅させることによって検査する方法で、時間も人材も必要だ。(ポリメラーゼはDNA鎖を合成する酵素だそうだが、複雑なので僕には説明不能。ポリメラーゼ連鎖反応で検索すれば説明が出てくる。チェーン・リアクションで「連鎖反応」である。)

 意図的に検査させないという憶測もあるが、少なくとも首相自らが1万人、2万人と数値目標を挙げても目立った改善がないんだから、いつものように「現場無視の数値目標」なんだと思っている。保健所も手一杯、病院も受け入れ不能、若い患者はどうせ自宅療養しかないから検査は後回し。これなら熱が下げれば、クビにならないように仕事(アルバイト)に行く若い世代がいても責められない。

 医療者の世界比較を探してみると、やはり案の定、医師も看護師も日本は低かった。看護師はまだしも、医師の数は明らかに少ない。教育にかける予算が世界先進国の中で日本が非常に少ないことは教育界では知られている。だから多分そうだろうと思うんだけど、やっぱり医師の数が少なかった。その中で最前線で重労働を担っているんだから、医療従事者は本当に大変だ。「感謝」ではなく、「差別」を医療従事者に投げかける人が多くいる日本という国に驚き、悲しみ、怒りを感じている。
(人口当たり医師、看護師数の世界比較)
 我々にすぐ出来ることが何かあるか。特に緊急に出来ることは、まあSNS上などで感謝のメッセージを広げることもいいと思うけど、それ以上に今僕たちは他の病気やケガにならないことだと思う。好きで病気になるわけじゃないから、心筋梗塞や脳梗塞に突然なったら仕方ない。しかし防げることも多い。季節的にも、手洗い等をみんなしているから食中毒は少ないと思う。でも家で食べることが多いから、油断していると期限切れのものを食べて中毒することもあり得る。それ以上にケガである。家はけっこう危険な場所で転倒などがよく起こっている。宅配を頼むことが多いと、急いで出ようとして転倒することもある。注意すれば防げることで救急車を呼ばないように、みんなで気をつけたい。
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