東京高検の黒川弘務検事長が辞任した。黒川氏に関しては、1月に特例で「定年延長」された。そのことに関して何回かも批判記事を書いた。その後安倍内閣は「定年延長」を後から合法化する「検察庁法改正案」を強引に審議入りさせ、先週末には「強行採決」とも言われていた。それに対し、ツイッター上の批判が集中し、今国会での成立を断念したのが今週月曜の18日である。ところが、20日に「週刊文春オンライン」が5月1日に黒川氏がマスコミ関係者と「賭け麻雀」をしていたと報じた。翌日に週刊文春が発売され、その日のうちに黒川氏が辞表を提出。22日の閣議で辞任が承認された。

そのような流れなんだけど、この事件には「謎」が多い。まずは何故週刊文春が報道できたのか。僕は記事を読んでいないが(わざわざ買いに行くのも面倒なので、外出してない)、タクシーで帰宅する写真も撮られていて、相当はっきりした内部情報がなければ取材できない。それは何でも同席していた「産経新聞社」側からの情報だとも言われているが、なんで情報をリークするのかも判らない。同席したのは、産経の記者2人と朝日の元記者1人だという。朝日の場合は今は記者ではなく管理職だというが、産経記者は帰宅時のタクシーも用意し、車内で「取材」していたという。
法務省は黒川氏を「訓告」処分にして、直ちに辞職を認めた。「訓告」は公務員の「懲戒処分」に当たらない。懲戒処分には、重い順で「免職」「降任」「停職」「減給」「戒告」がある。懲戒に至らない軽微事案の場合、「訓告」「厳重注意」「口頭注意」となる。これらは履歴書の「賞罰」に残らないので、昇格などに影響しない。退職金の計算にも影響しない。黒川氏の「訓告」処分は、重いのか、軽いのか。
多くの国民、そしてテレビのニュース番組のコメンテーターなども、概ね「軽すぎる」と批判している。問題は3つある。一つ目は「賭け麻雀」が「賭博罪」に当たるという問題。二つ目は「取材相手からタクシーなどの利益供与を受けた」という問題。三つ目は「緊急事態宣言下で、不要不急の行動を繰り返してた」という問題である。「賭け麻雀」は、いつも必ず黒川氏が勝つというわけではなかったらしい。何でも5年ぐらい同メンバーで続いていたらしいが、「自白」のみでは罪に問えない。遊びレベルなら、「証拠」も残っていないだろう。恐らく「刑事事件」として立件には至らないレベルになると思う。
だから「賭け麻雀」「マスコミ対応」は僕も「訓告」レベルだと考える。だが最後の「緊急事態宣言下」は違う。「外出自粛要請」は法律じゃないから、違反しても処分は出来ないかも知れない。しかし、あれほど「ゴールデンウイークはステイホーム週間」と言われていたときに、深夜遅くまで外出して麻雀をしていた。それも検察№2が「賭け」である。政権はこの人を検事総長に据えようとしていたと言われる。大部分の人がマジメに家で過ごしていたのに、これでは「それでもパチンコ屋に行ってる人」と同じじゃないか。それが「訓告」レベルで、退職金満額支給ですか? と国民なら怒るだろう。
黒川氏本人の責任じゃないのだろうが、国会では黒川氏問題をめぐってずいぶん時間を空費した。空費というのは、安倍首相や森法相の答弁が、例によって詭弁に満ちていたからだ。それが「賭け麻雀で辞任」では、新型コロナウイルス問題の最中に使った国会の時間は何だったのか。この「訓告」処分は、かつての「金丸上申書問題」と同じだ。法律的には問題ないかも知れないが、国民感情的にはアウトである。恐らくは「退職金満額支給」と「今後の沈黙」がバーターされたのであろう。
(森法相の国会答弁のようす)
ところで、先に書いた「内閣人事局」はこのような黒川氏の行動を知らなかったのだろうか。黒川氏は2016年9月から2019年1月まで法務事務次官を務めていた。一方、前川喜平氏は2016年6月から2017年1月に文部科学事務次官を務めていた。前川氏が「出会い系バー」に出かけたことを、杉田官房副長官は知っていた。では黒川氏がマスコミ関係者と賭け麻雀をしていたことは知られていたのだろうか? それとも公安警察も、検察には恐れ入って情報収集していなかったのだろうか。
これが今回の最大の謎だと思う。憶測をたくましくするならば、「黒川氏が余人をもって代えがたい」というのは、「内閣が弱みを握っている」ことだったのではないか。前川氏が「天下りあっせん問題」で辞任した後に、加計学園問題で安倍政権批判を公にしたら、出会い系バー問題が読売新聞に報道された。今後安倍政権を揺るがすようなスキャンダルの捜査が進んだ時に、あたかも検察の威信を揺るがすように「黒川検事総長が賭け麻雀」という記事が読売新聞に出る。いや、産経新聞なのか。だから「取材」として賭け麻雀としていたのだろうか。
これは考えすぎかも知れない。考えすぎならばいんだけど、どうも「検事総長に無理押し出来そうもない」情勢になったから、黒川検事長は「用済み」になった感じがしてならない。今回の事態は、週刊文春がまた「文春砲」を放って、安倍内閣に衝撃を与えたと一見そのように見える。しかし、黒川氏の「個人的スキャンダル」で問題が終結してしまった。今後の検事総長問題や検察庁法改正案問題がなくなった。もちろん短期的には「任命責任がある」安倍首相にも打撃ではある。しかし、「責任を痛感」しても、今まで一回も首相の行動に変化はなかった。今回も同じだろう。
そして国民は選挙の時までに忘れてしまう。今まではそうだった。今回もまた同じかどうかは、安倍政権の問題というより、有権者の問題だ。今、2019年参議院選挙の広島選挙区、河井案里派の選挙違反事件が重大な段階に入っている。夫の河井克行前法相は多くの県議や町長などに意図不明の金をばらまいていた。自分の選挙区なら公選法違反でアウトだが、参院選は全県の選挙区だから選挙区外の有力者にも票をお願いする必要がある。そこで金を渡したのは「社会通念」ではなく「事実上の買収」である。だから広島地検も河井克行議員の立件を目指していると報道されている。
そこに今回の「黒川辞任劇」。安倍政権は「賭け麻雀」を「社会通念の範囲内」として、訓告で済ませた。これは河井克行ケースも「社会通念の範囲内」なんじゃないですかという「謎かけ」かもしれない。そうじゃないことを祈るけれど、僕には特別の情報があるわけではないので判らない。何にせよ、安倍政権も長期になりすぎて、政権内部のどこかで権力争いが起こっているのではないか。「河井夫婦公選法違反事件」で、買収資金を特別に送り込んだ党本部まで捜査が延びるかが焦点になる。

そのような流れなんだけど、この事件には「謎」が多い。まずは何故週刊文春が報道できたのか。僕は記事を読んでいないが(わざわざ買いに行くのも面倒なので、外出してない)、タクシーで帰宅する写真も撮られていて、相当はっきりした内部情報がなければ取材できない。それは何でも同席していた「産経新聞社」側からの情報だとも言われているが、なんで情報をリークするのかも判らない。同席したのは、産経の記者2人と朝日の元記者1人だという。朝日の場合は今は記者ではなく管理職だというが、産経記者は帰宅時のタクシーも用意し、車内で「取材」していたという。
法務省は黒川氏を「訓告」処分にして、直ちに辞職を認めた。「訓告」は公務員の「懲戒処分」に当たらない。懲戒処分には、重い順で「免職」「降任」「停職」「減給」「戒告」がある。懲戒に至らない軽微事案の場合、「訓告」「厳重注意」「口頭注意」となる。これらは履歴書の「賞罰」に残らないので、昇格などに影響しない。退職金の計算にも影響しない。黒川氏の「訓告」処分は、重いのか、軽いのか。
多くの国民、そしてテレビのニュース番組のコメンテーターなども、概ね「軽すぎる」と批判している。問題は3つある。一つ目は「賭け麻雀」が「賭博罪」に当たるという問題。二つ目は「取材相手からタクシーなどの利益供与を受けた」という問題。三つ目は「緊急事態宣言下で、不要不急の行動を繰り返してた」という問題である。「賭け麻雀」は、いつも必ず黒川氏が勝つというわけではなかったらしい。何でも5年ぐらい同メンバーで続いていたらしいが、「自白」のみでは罪に問えない。遊びレベルなら、「証拠」も残っていないだろう。恐らく「刑事事件」として立件には至らないレベルになると思う。
だから「賭け麻雀」「マスコミ対応」は僕も「訓告」レベルだと考える。だが最後の「緊急事態宣言下」は違う。「外出自粛要請」は法律じゃないから、違反しても処分は出来ないかも知れない。しかし、あれほど「ゴールデンウイークはステイホーム週間」と言われていたときに、深夜遅くまで外出して麻雀をしていた。それも検察№2が「賭け」である。政権はこの人を検事総長に据えようとしていたと言われる。大部分の人がマジメに家で過ごしていたのに、これでは「それでもパチンコ屋に行ってる人」と同じじゃないか。それが「訓告」レベルで、退職金満額支給ですか? と国民なら怒るだろう。
黒川氏本人の責任じゃないのだろうが、国会では黒川氏問題をめぐってずいぶん時間を空費した。空費というのは、安倍首相や森法相の答弁が、例によって詭弁に満ちていたからだ。それが「賭け麻雀で辞任」では、新型コロナウイルス問題の最中に使った国会の時間は何だったのか。この「訓告」処分は、かつての「金丸上申書問題」と同じだ。法律的には問題ないかも知れないが、国民感情的にはアウトである。恐らくは「退職金満額支給」と「今後の沈黙」がバーターされたのであろう。

ところで、先に書いた「内閣人事局」はこのような黒川氏の行動を知らなかったのだろうか。黒川氏は2016年9月から2019年1月まで法務事務次官を務めていた。一方、前川喜平氏は2016年6月から2017年1月に文部科学事務次官を務めていた。前川氏が「出会い系バー」に出かけたことを、杉田官房副長官は知っていた。では黒川氏がマスコミ関係者と賭け麻雀をしていたことは知られていたのだろうか? それとも公安警察も、検察には恐れ入って情報収集していなかったのだろうか。
これが今回の最大の謎だと思う。憶測をたくましくするならば、「黒川氏が余人をもって代えがたい」というのは、「内閣が弱みを握っている」ことだったのではないか。前川氏が「天下りあっせん問題」で辞任した後に、加計学園問題で安倍政権批判を公にしたら、出会い系バー問題が読売新聞に報道された。今後安倍政権を揺るがすようなスキャンダルの捜査が進んだ時に、あたかも検察の威信を揺るがすように「黒川検事総長が賭け麻雀」という記事が読売新聞に出る。いや、産経新聞なのか。だから「取材」として賭け麻雀としていたのだろうか。
これは考えすぎかも知れない。考えすぎならばいんだけど、どうも「検事総長に無理押し出来そうもない」情勢になったから、黒川検事長は「用済み」になった感じがしてならない。今回の事態は、週刊文春がまた「文春砲」を放って、安倍内閣に衝撃を与えたと一見そのように見える。しかし、黒川氏の「個人的スキャンダル」で問題が終結してしまった。今後の検事総長問題や検察庁法改正案問題がなくなった。もちろん短期的には「任命責任がある」安倍首相にも打撃ではある。しかし、「責任を痛感」しても、今まで一回も首相の行動に変化はなかった。今回も同じだろう。
そして国民は選挙の時までに忘れてしまう。今まではそうだった。今回もまた同じかどうかは、安倍政権の問題というより、有権者の問題だ。今、2019年参議院選挙の広島選挙区、河井案里派の選挙違反事件が重大な段階に入っている。夫の河井克行前法相は多くの県議や町長などに意図不明の金をばらまいていた。自分の選挙区なら公選法違反でアウトだが、参院選は全県の選挙区だから選挙区外の有力者にも票をお願いする必要がある。そこで金を渡したのは「社会通念」ではなく「事実上の買収」である。だから広島地検も河井克行議員の立件を目指していると報道されている。
そこに今回の「黒川辞任劇」。安倍政権は「賭け麻雀」を「社会通念の範囲内」として、訓告で済ませた。これは河井克行ケースも「社会通念の範囲内」なんじゃないですかという「謎かけ」かもしれない。そうじゃないことを祈るけれど、僕には特別の情報があるわけではないので判らない。何にせよ、安倍政権も長期になりすぎて、政権内部のどこかで権力争いが起こっているのではないか。「河井夫婦公選法違反事件」で、買収資金を特別に送り込んだ党本部まで捜査が延びるかが焦点になる。