核兵器禁止条約が発効して1年になった。2021年1月22日に発効した時点では批准国は51だった。その後一年間でモンゴル、チリ、ペルーなどが参加し59ヶ国になっている。3月には第一回締約国会議が開かれる予定で、ドイツ、ブラジル、インドネシア、スウェーデン、ノルウェーなどがオブザーバー参加を表明している。しかし、核兵器保有国は相変わらず核禁条約に対して「国際社会を分裂させる」と批判している、ブリンケン米国務長官は12月の記者会見で「何の役にも立たない」と述べたという。
ところで、1月3日にその核保有国、国連安保理の常任理事国である5大国(アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス)が核軍縮に向けた共同声明を発表した。事前には全く予想されていなかったから、とても驚いた。一体、それをどう理解するべきだろうか。その声明には「核戦争には勝者はなく、決してその戦いはしてはならない。核兵器は防衛目的、侵略防止、戦争回避のために限定されるべきだ」「核軍縮に向けた誠実な交渉を含め核不拡散条約の義務を果たす」「我々の核兵器はいかなる国家にも向けられていないことを再確認」などと書いてある。
(五大国声明と各国首脳)
正直言って、僕は全くこの声明が理解出来ない。「いかなる国家にも向けられていない」なんて嘘八百を平然と書いている。アメリカの核兵器はソ連に対抗するために配備されたわけで、今もロシアや中国を意識しているのは間違いない。それはロシアや中国も同様だろう。まあフランスは「国家の威信」のためだけに持っているのかもしれないが。核戦争はしてはならないから、防衛目的に限定して持っているというのも理解出来ない。本気でそう思っているのなら、双方の合意で廃棄することが可能なはずである。
五大国声明のおかしさは核不拡散条約の扱いに一番現れている。核兵器が防衛目的、侵略防止に役立つんだったら、すべての国連加盟国が核兵器を保有した方が効果があるはずである。ロシアに対抗してウクライナも核兵器を持つ。アメリカに対抗してキューバにも核兵器を配備する。その方が戦争防止に意味があるということになる。それなのに、核不拡散を重要視する。条約では五大国以外の核兵器保有を認めていない。それに対して、条約に未加盟のインド、パキスタンは自国の核兵器保有を認めている。同じく未加盟のイスラエルは保有の有無を明らかにしない政策を取っているが、事実上の核保有国とされる。また条約脱退を表明した北朝鮮も核兵器を保有していると言われる。
(核兵器保有国の状況)
核不拡散条約では、条約発効時に核兵器を保有していた、そして国連安保理常任理事国の五大国のみに核兵器を認めている。それはインドやパキスタンが主張するように、確かに合理的な理由を見出せない差別的規制である。核兵器に防衛目的の有効性があると主張するんだったら、五大国以外にも核兵器保有の権利を認めないとおかしい。五大国声明で核不拡散の重要性を述べるのは、事実上「核兵器クラブ」の特権を維持したいということと考えられる。アメリカは中国やロシアと様々に対立しているはずだが、核兵器を独占したいという思惑では共同行動を取るのである。
ところで五大国は何でこのような共同声明を出したのだろうか。この声明を出すに至った経過については僕はよく知らない。やがて判明するんだろうけれど、こういうものを出すきっかけは間違いなく核兵器禁止条約の締約国会議だろう。核軍縮に向けた国際世論が高まる前に、自分たちも努力してますという材料ということだと思う。しかし、先に見たように共同声明には矛盾も多く、核保有国の特権意識を感じざるを得ない。それにしても、こういう共同声明が出るんだから、核禁条約はブリンケンが言うような「何の意味もない」ものではないことが明らかだ。
ところで、日本の対応は相変わらず消極的でアメリカ追随である。広島1区選出の岸田首相は、一応安倍政権、菅政権よりは核禁条約を評価しているようだ。まあ地元感情への配慮もあるんだろう。しかし、ドイツと違って締約国会議にオブザーバー参加はしないと表明している。最初の会議にオブザーバーとは言え参加しないとなれば、本気度が疑われるし世界の議論から除かれてしまう。実は世論調査では野党だけでなく、与党内にも条約締結、あるいはオブザーバー参加を求める議員は数多い。自民党内にも56人の議員が参加を求めているようだ(下記画像)。立憲民主党や共産党は条約参加を求める立場だからオブザーバーは求めていない。だが今は野党が中心になってオブザーバー参加を広く求めるべき段階ではないか。
(核禁条約への衆院議員の対応)(主なオブザーバー参加国)
ところで、1月3日にその核保有国、国連安保理の常任理事国である5大国(アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス)が核軍縮に向けた共同声明を発表した。事前には全く予想されていなかったから、とても驚いた。一体、それをどう理解するべきだろうか。その声明には「核戦争には勝者はなく、決してその戦いはしてはならない。核兵器は防衛目的、侵略防止、戦争回避のために限定されるべきだ」「核軍縮に向けた誠実な交渉を含め核不拡散条約の義務を果たす」「我々の核兵器はいかなる国家にも向けられていないことを再確認」などと書いてある。
(五大国声明と各国首脳)
正直言って、僕は全くこの声明が理解出来ない。「いかなる国家にも向けられていない」なんて嘘八百を平然と書いている。アメリカの核兵器はソ連に対抗するために配備されたわけで、今もロシアや中国を意識しているのは間違いない。それはロシアや中国も同様だろう。まあフランスは「国家の威信」のためだけに持っているのかもしれないが。核戦争はしてはならないから、防衛目的に限定して持っているというのも理解出来ない。本気でそう思っているのなら、双方の合意で廃棄することが可能なはずである。
五大国声明のおかしさは核不拡散条約の扱いに一番現れている。核兵器が防衛目的、侵略防止に役立つんだったら、すべての国連加盟国が核兵器を保有した方が効果があるはずである。ロシアに対抗してウクライナも核兵器を持つ。アメリカに対抗してキューバにも核兵器を配備する。その方が戦争防止に意味があるということになる。それなのに、核不拡散を重要視する。条約では五大国以外の核兵器保有を認めていない。それに対して、条約に未加盟のインド、パキスタンは自国の核兵器保有を認めている。同じく未加盟のイスラエルは保有の有無を明らかにしない政策を取っているが、事実上の核保有国とされる。また条約脱退を表明した北朝鮮も核兵器を保有していると言われる。
(核兵器保有国の状況)
核不拡散条約では、条約発効時に核兵器を保有していた、そして国連安保理常任理事国の五大国のみに核兵器を認めている。それはインドやパキスタンが主張するように、確かに合理的な理由を見出せない差別的規制である。核兵器に防衛目的の有効性があると主張するんだったら、五大国以外にも核兵器保有の権利を認めないとおかしい。五大国声明で核不拡散の重要性を述べるのは、事実上「核兵器クラブ」の特権を維持したいということと考えられる。アメリカは中国やロシアと様々に対立しているはずだが、核兵器を独占したいという思惑では共同行動を取るのである。
ところで五大国は何でこのような共同声明を出したのだろうか。この声明を出すに至った経過については僕はよく知らない。やがて判明するんだろうけれど、こういうものを出すきっかけは間違いなく核兵器禁止条約の締約国会議だろう。核軍縮に向けた国際世論が高まる前に、自分たちも努力してますという材料ということだと思う。しかし、先に見たように共同声明には矛盾も多く、核保有国の特権意識を感じざるを得ない。それにしても、こういう共同声明が出るんだから、核禁条約はブリンケンが言うような「何の意味もない」ものではないことが明らかだ。
ところで、日本の対応は相変わらず消極的でアメリカ追随である。広島1区選出の岸田首相は、一応安倍政権、菅政権よりは核禁条約を評価しているようだ。まあ地元感情への配慮もあるんだろう。しかし、ドイツと違って締約国会議にオブザーバー参加はしないと表明している。最初の会議にオブザーバーとは言え参加しないとなれば、本気度が疑われるし世界の議論から除かれてしまう。実は世論調査では野党だけでなく、与党内にも条約締結、あるいはオブザーバー参加を求める議員は数多い。自民党内にも56人の議員が参加を求めているようだ(下記画像)。立憲民主党や共産党は条約参加を求める立場だからオブザーバーは求めていない。だが今は野党が中心になってオブザーバー参加を広く求めるべき段階ではないか。
(核禁条約への衆院議員の対応)(主なオブザーバー参加国)