2022年の初落語。落語は誰を聴いたか忘れないように記録しておくことにしている。東京にはいつもやってる4つの寄席があって、それを「定席」(じょうせき)と呼ぶ。しかし、他にも落語や講談などの演芸をやっているところが幾つかある。永谷商事が運営している4つの小さな演芸場の中で、お江戸上野広小路亭、お江戸日本橋亭、お江戸両国亭の3つは大体毎日のように落語をやっている。(「新宿永谷ホール」は主に貸しホールらしい。)定席の一つ、上野鈴本演芸場は落語協会しか出られないので、上野広小路亭では逆に落語芸術協会や五代目圓楽一門会、落語立川流を中心にしたプログラムを組んでいて貴重。
(お江戸上野広小路亭)
と書いたけれど、実は一度も行ったことがなかった。場所は上野松坂屋本館の(中央通りをはさんだ)真向かいにある。場所が小さいので、どうせなら大きいところで見たいなと思っていたんだけど、正月の寄席は顔見世興行である。いつもより高い料金なのに、多くの芸人が顔を見せてちょっと漫談を話して代わる。それも楽しいといえば楽しいけれど、最近は行ってない。代わりに正月に地元ホールでやってる「初笑い寄席」なんていうのに行くことも多かった。しかし、これも芸人は他の寄席と掛け持ちで、急いでやっている。客も普段は落語なんて聴かないシロウトばかり。会場も大きすぎることが多く、最近は行ってない。
ということで、お江戸上野広小路亭にそろそろ行ってみるべきだと思った。当日2千円のところ、予約すると5百円も安い。だから予約電話をしたら、スリッパを持参してくれという。靴を脱ぐのである。いつもはスリッパを置いてるが、今は感染対策で貸してないという。パイプ椅子が50ぐらい置いてある小さなホールだった。まず靴を脱いで、靴は2階の靴入れに入れる。寄席は3階で、全部で50人ぐらい入るところ、今日は20人ぐらいだった。今日は多いと言ってたけど、本当かどうか判らない。
今日しか時間が取れなかったけど、トリが三遊亭好楽、仲入前が三遊亭鳳楽なのが楽しみだった。でも、鳳楽は休演で、一番面白かったのが三遊亭兼好。評判はずっと聞いてたが、寄席には出ないので(最近は新宿に時々出ているが)、今まで聴いたことがなかった。どういう人か知らなかったのだが、1970年生まれの52歳。社会人経験を経て、1998年に好楽に入門した。2008年に真打昇進。昔の俳優の山村聡みたいな容貌で、元気いっぱいの落語を演じた。演目は「王子の狐」で、狐が人間を欺すのではなく逆に人間が美女に化けた狐を欺そうとする話。勢いがあって面白く、人気があるのも当然。また機会があれば是非聴きに行きたい。
(三遊亭兼好)
前座は立川流の立川半四楼、その後に落語芸術協会所属の二人。上方落語の笑福亭希光、講談の日向ひまわり。ひまわりは前にも聴いてるが、大岡政談を30分たっぷり。次が兼好で、さらにラッパ漫談のトリトン海野。聞いたこともない名前だが、日本唯一の自衛隊を定年退職した芸人だという。つまりラッパは、陸上自衛隊時代の仕事だった。ラッパにマスクを掛けたりして笑わせる。意外にもとても面白かった。続いて鳳楽の代演、立川談之助だが、この人は浅草演芸ホールの芸協公演に時々出てるから聴いたことがあった。前も「笑点裏話」だったが、今回は林家三平が代わった(下ろされた?)最新ニュースがある。一番知られている落語番組だけど、こんなに「笑点」や他の落語家の悪口ネタでみんな面白いんだろうかと疑問。
仲入り後に、活動弁士の坂本頼光。活弁を寄席でやるのは珍しいが、アート無声映画は別にして、娯楽映画の活弁は今は話芸の一種として扱うのもありだろう。昔のアメリカ映画「ジャックと豆の木」をDVDで流しながら、説明を付ける。昔は特撮のレベルが低いから、今となっては笑えるシーンが多い。そこを弁士が誇張して述べると、立派な寄席の芸だった。続いて阪妻(阪東妻三郎)の「血煙高田馬場」をちょっと流して終わる。落語芸術協会に正式に入会するという話も聞いたが、これは受けるのではないか。
(坂本頼光)
次に芸協重鎮の桂竹丸で、僕はこの人がお気に入りだけど今日は漫談に終始してちょっと残念。さらに俗曲の桧山うめ吉。昔国立演芸場で夏に桂歌丸が圓朝の怪談をやっていた頃、トリの前は大体この人が出て来た。すごい美人だなあと思って、ブログを時々のぞいている。今日は久しぶりだったが、踊りもあった。そして最後に三遊亭好楽。実は初めてである。この人は昔林家久蔵と言われた時代に「笑点」大喜利メンバーで、一端退いた後で三遊亭好楽になった後で復帰したという過去がある。もともと林家彦六(先代林家正蔵)に入門して真打になった。その後師匠が亡くなって、五代目圓楽一門に移籍した。師匠没後に他の師匠に付くのはよくあるが、好楽の場合は落語協会から脱退してしまったわけだから、凄い決断である。
(三遊亭好楽)
最近は時々浅草や新宿に出ているが、基本的に定席では聴けないから、五代目圓楽一門や立川流には聴いてない人がかなりいる。好楽は「死神」というネタで、貧乏神に取り憑かれた男が死にたくなって死神に出会う。死なない方策を伝授されて医者になって、成功するが…。上野広小路亭はトリの持ち時間が長いので、長いネタをタップリできる。どうも本当に年取った感じがあって、死神に取り憑かれてもおかしくない。やっぱり凄いなと思うところと、なんだか一本調子だなという場面がある。もう絶頂期ではないのでやむを得ないだろう。近くの鈴本演芸場の半分の値段なんだから、十分もとを取った気になって帰宅した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/0b/da/01edd7cdd037db329e29b2106654979b_s.jpg)
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と書いたけれど、実は一度も行ったことがなかった。場所は上野松坂屋本館の(中央通りをはさんだ)真向かいにある。場所が小さいので、どうせなら大きいところで見たいなと思っていたんだけど、正月の寄席は顔見世興行である。いつもより高い料金なのに、多くの芸人が顔を見せてちょっと漫談を話して代わる。それも楽しいといえば楽しいけれど、最近は行ってない。代わりに正月に地元ホールでやってる「初笑い寄席」なんていうのに行くことも多かった。しかし、これも芸人は他の寄席と掛け持ちで、急いでやっている。客も普段は落語なんて聴かないシロウトばかり。会場も大きすぎることが多く、最近は行ってない。
ということで、お江戸上野広小路亭にそろそろ行ってみるべきだと思った。当日2千円のところ、予約すると5百円も安い。だから予約電話をしたら、スリッパを持参してくれという。靴を脱ぐのである。いつもはスリッパを置いてるが、今は感染対策で貸してないという。パイプ椅子が50ぐらい置いてある小さなホールだった。まず靴を脱いで、靴は2階の靴入れに入れる。寄席は3階で、全部で50人ぐらい入るところ、今日は20人ぐらいだった。今日は多いと言ってたけど、本当かどうか判らない。
今日しか時間が取れなかったけど、トリが三遊亭好楽、仲入前が三遊亭鳳楽なのが楽しみだった。でも、鳳楽は休演で、一番面白かったのが三遊亭兼好。評判はずっと聞いてたが、寄席には出ないので(最近は新宿に時々出ているが)、今まで聴いたことがなかった。どういう人か知らなかったのだが、1970年生まれの52歳。社会人経験を経て、1998年に好楽に入門した。2008年に真打昇進。昔の俳優の山村聡みたいな容貌で、元気いっぱいの落語を演じた。演目は「王子の狐」で、狐が人間を欺すのではなく逆に人間が美女に化けた狐を欺そうとする話。勢いがあって面白く、人気があるのも当然。また機会があれば是非聴きに行きたい。
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前座は立川流の立川半四楼、その後に落語芸術協会所属の二人。上方落語の笑福亭希光、講談の日向ひまわり。ひまわりは前にも聴いてるが、大岡政談を30分たっぷり。次が兼好で、さらにラッパ漫談のトリトン海野。聞いたこともない名前だが、日本唯一の自衛隊を定年退職した芸人だという。つまりラッパは、陸上自衛隊時代の仕事だった。ラッパにマスクを掛けたりして笑わせる。意外にもとても面白かった。続いて鳳楽の代演、立川談之助だが、この人は浅草演芸ホールの芸協公演に時々出てるから聴いたことがあった。前も「笑点裏話」だったが、今回は林家三平が代わった(下ろされた?)最新ニュースがある。一番知られている落語番組だけど、こんなに「笑点」や他の落語家の悪口ネタでみんな面白いんだろうかと疑問。
仲入り後に、活動弁士の坂本頼光。活弁を寄席でやるのは珍しいが、アート無声映画は別にして、娯楽映画の活弁は今は話芸の一種として扱うのもありだろう。昔のアメリカ映画「ジャックと豆の木」をDVDで流しながら、説明を付ける。昔は特撮のレベルが低いから、今となっては笑えるシーンが多い。そこを弁士が誇張して述べると、立派な寄席の芸だった。続いて阪妻(阪東妻三郎)の「血煙高田馬場」をちょっと流して終わる。落語芸術協会に正式に入会するという話も聞いたが、これは受けるのではないか。
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次に芸協重鎮の桂竹丸で、僕はこの人がお気に入りだけど今日は漫談に終始してちょっと残念。さらに俗曲の桧山うめ吉。昔国立演芸場で夏に桂歌丸が圓朝の怪談をやっていた頃、トリの前は大体この人が出て来た。すごい美人だなあと思って、ブログを時々のぞいている。今日は久しぶりだったが、踊りもあった。そして最後に三遊亭好楽。実は初めてである。この人は昔林家久蔵と言われた時代に「笑点」大喜利メンバーで、一端退いた後で三遊亭好楽になった後で復帰したという過去がある。もともと林家彦六(先代林家正蔵)に入門して真打になった。その後師匠が亡くなって、五代目圓楽一門に移籍した。師匠没後に他の師匠に付くのはよくあるが、好楽の場合は落語協会から脱退してしまったわけだから、凄い決断である。
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最近は時々浅草や新宿に出ているが、基本的に定席では聴けないから、五代目圓楽一門や立川流には聴いてない人がかなりいる。好楽は「死神」というネタで、貧乏神に取り憑かれた男が死にたくなって死神に出会う。死なない方策を伝授されて医者になって、成功するが…。上野広小路亭はトリの持ち時間が長いので、長いネタをタップリできる。どうも本当に年取った感じがあって、死神に取り憑かれてもおかしくない。やっぱり凄いなと思うところと、なんだか一本調子だなという場面がある。もう絶頂期ではないのでやむを得ないだろう。近くの鈴本演芸場の半分の値段なんだから、十分もとを取った気になって帰宅した。