尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

どう見る?立憲民主党代表選、「野党を育てなかった有権者」の12年

2024年09月05日 21時43分41秒 | 政治
 自民党総裁選と同時期に立憲民主党の代表選が行われる。9月7日告示、23日投開票なので、いずれも自民党に数日先んじている。しかし、報道は自民党総裁選に集中し、立憲民主党代表選は埋没しているという声が絶えない。しかし、自民党の次期総裁は「次期首相」なのに対し、立憲民主党次期代表は「次の次の首相になるかもしれない(可能性が存在する)」という存在に過ぎない。マスコミだけでなく、人々の注目が自民党に集中するのもやむを得ないではないか。

 代表選に関しては、枝野幸男前代表が出馬を表明し、続いて野田佳彦元首相も出馬を表明した。泉健太現代表も続投を目指しているというが、なかなか推薦人20人が集まらない状態と報道されている。他には当選1回の女性議員吉田晴美氏も出馬の意向を表明しており、江田憲司馬淵澄夫氏を推す声もあるが馬淵氏は撤退。西村智奈美代表代行は不出馬を表明した。立憲民主党代表選に出馬するには、国会議員の推薦人20人を集める必要があるが、このハードルは自民党以上に高い。何しろ所属議員が衆参合わせて136人しかいないのに、自民党総裁選と同じ条件なのである。
(出馬を表明する枝野前代表)
 その条件を変えるべきだという声が高いが、まあそれは今後党内で議論すれば良いだろう。今回に関しては、いくら何でも枝野、野田2氏だけでは自民党に比べて見映えしないので、何とか4人ぐらいにはなるのではないか。推薦人確保も危うい泉現代表の再選は厳しいだろうし、一期生の吉田氏は出馬できても当選ラインには遠いだろう。ということで、結局は二人。保守系がまとまりそうな野田氏が優勢枝野氏が対抗という情勢と思われる。小沢一郎氏が野田氏を推すという話で、じゃあ2012年の分裂は何だったのかと思うが、自民党に対抗する以上「政権交代のためなら何でもアリ」かもしれない。

 野田元首相は「昔の名前で出ていますではいけない」と言っていたのに自ら出馬するのは何故だろうか。(この表現に対して、新聞が「1975年の小林旭さんのヒット曲に例えて」と書いてたのをみて、説明がいるのかと感慨があった。)これは自民党で小泉進次郎氏が出馬するのに連動した動きだと思われる。立憲民主党の若手議員はもちろん誰も閣僚経験などないし、党役員さえやっていない。だから「知名度」と「経験」では誰も小泉進次郎首相に対抗出来ない。「」「」の小泉首相には、「老巧」「重厚」イメージの方が有効なのではないかと党内で思われているのだろう。
(出馬を表明する野田佳彦氏)
 ちょっと立憲民主党の立党経緯を振り返ってみたい。2017年総選挙を前に、当時の民進党前原誠司代表が小池百合子都知事らが結党した「希望の党」と合流を決めた。しかし、小池氏は民主党時代の閣僚経験者などを公認せず「排除」した。その時「排除」された人々によって作られたのが立憲民主党である。結党当初の代表を務めて当選したのが枝野幸男氏、無所属で当選したのが野田佳彦氏、希望の党で当選したのが泉健太氏である。その後、無所属を含めて合流の機運が高まったが、合流しなかった人たちが国民民主党に集まり、それ以外で今の立憲民主党に結集した。

 そういう成り立ちだから、内部的にはいくつかの潮流が存在する。代表、幹事長、国対委員長などの要職は民主党政権時代に閣僚経験がある人が就くことが多く、顔ぶれに既視感が強いと批判され続けている。ただ、この問題で立憲民主党を非難出来るとは僕には思えない。2009年の政権交代選挙では、当時の民主党は全国300小選挙区のうち、221で勝利した。(他にも連立を組む社民党が3、国民新党が3、新党日本が1と、新与党で228議席を獲得した。)

 一方、自民党で小選挙区を勝ち抜いたのは、わずか64人に過ぎなかった。それでも西日本では強さを発揮し、安倍晋三、麻生太郎、岸田文雄、石破茂、二階俊博、加藤勝信氏など政権復帰後に要職を務めた人がいる。また神奈川県では全18小選挙区中、自民党はわずか3人しか勝てなかったが、それは菅義偉、河野太郎、小泉進次郎氏だった。つまり、2009年の民主党旋風の中でも勝ち抜いた議員が2012年の政権復帰後の自民党を支えたわけである。

 ところが2012年の総選挙では、民主党が獲得した小選挙区はわずか27議席に激減した。民主党から分裂した日本未来の党(小沢一郎系)が2議席、国民新党1,政権を離脱した社民党1である。それに対し、自民党は小選挙区で237議席も当選したのである。その中には後に「魔の○回生」と呼ばれて任期途中で辞任、さらには逮捕・起訴されたような新人議員が何人もいる。そして民主党で当選したわずか27人の中には、長島昭久細野豪志松本剛明(現総務相)、山口壯氏など今は自民党に所属している人もいる。また玉木雄一郎前原誠司古川元久氏など立憲民主党に合流しなかった人もいる。

 だから2012年に民主党で小選挙区を勝ち抜いた、枝野幸男岡田克也安住敦長妻昭馬淵澄夫氏などがその後の党運営でいつも何らかの役割を担わざるを得なかった。(野田佳彦元首相はその後はしばらく表に出なかったが。)そして、2009年に初当選した多くの若手、女性議員はほとんど2012年に落選し、その後の2014年にも戻って来れなかった人が多い。その結果、生活のために政界を引退せざるを得なかった人が多いだろう。中には当選を続けていれば、今頃はリーダーに相応しい人も出ていたかもしれない。しかし、野党議員を落選させ続けたのは有権者の判断だった。その結果、立憲民主党には「ベテラン」がいて、「若手」もかなり多いが、「中堅」が少ない。(前回衆院選当時、当選7回以上=28人、当選6~4回=22人、当選3~1回=46人。)
(出馬を模索する吉田晴美氏)
 野党第一党のそういう構造を作ったのは有権者の審判だったので、今さら批判してもむなしい。若手議員はかなりいるので、今後は変わっていく可能性があるが、人がいない以上しばらく「ベテラン優位」が避けられない。有権者の側は自分たちの判断が自民党のスキャンダル議員を選び続けてきたことを自覚する必要がある。そのことを前提にして、10月にもあり得る解散・総選挙に臨む以外にないのである。だが…、それにしても「野田佳彦首相の復活」というストーリーに我々は「萌える」ことが可能だろうか。小泉進次郎政権=菅義偉前首相の復活よりはマシと思うしかないのだろうか。政策面は今回は細かく書かないけれど、「保守」に寄ることで「安心」する人もいるんだろうが、何も変わらないなら政権交代の意味もない。
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