トロイの木馬像がトルコの町チャナッカレという町にあるという話を書いたばかり。一方、浅草には「木馬亭」という寄席がある。日本で唯一「浪曲の定席」があるところだ。今朝新聞を見たら、席亭の根岸京子さんが91歳で亡くなったという記事が掲載されていた。根岸京子という人は、浅草で有名な根岸興業部の一族で、僕の大好きな映画監督根岸吉太郎の母にあたる。1970年以来、浪曲の定席を守り続け、その功績で2015年に松尾芸能賞功労賞を受賞した。
僕はその木馬亭に16日の夜に行ってきたばかり。浪曲の玉川奈々福と上方落語の桂吉坊が二人で続けてきたコラボ企画「みちゆき」の第10回にして最終回である。僕はその会に後半半分ほどを妻に連れられて見に行ってる。7時始まりで、最後にある実に面白いトークまでたっぷりと聞いてると10時になってしまう。翌日が早かったので、トークを聞かずに出てしまって残念だった。この会は相当に「通好み」の演題が多く、あまりここでは書かなかった。
(玉川奈々福)
今回もスルーするつもりだったが、席亭の訃報を聞いて書いておこうかと思った。浪曲という芸能は、昔は大人気だったと知ってるが、僕はマキノ雅弘監督の「次郎長三国志」シリーズで広沢虎造がうなっているのを思い出すぐらいだ。一時は国本武春が若い人気者になったが早く死んでしまった。もう聞くこともないかと思っていたら、女性浪曲師、玉川奈々福の人気がブレイクしてきた。今や「知る人ぞ知る」段階を過ぎて、「えっ、まだ聞いたことないの」レベルまでは来てるだろう。
今回の「親鸞聖人御伝記 六角堂示現巻」は他では聞けない演題だった。何しろ築地本願寺の依頼るで作った新作で、他ではやってないという。それをやったのは本人の希望と言うより、企画者がリクエストしたらしい。親鸞、あるいは鎌倉仏教の始祖たちの浪曲はかなりあるというが、築地本願寺住職でもある宗教学者、釈徹宗氏が今までの台本は却下、新作を依頼したという。そこで出来た作品だが、叡山を下り京の六角堂で聖徳太子の夢告を受けた場面に絞り込んでいる。奈々福さんの声はいつものように素晴らしいんだけど、「親鸞聖人」という枠がある以上マジメ一途で、どうもゆとりがない。
(吉坊と奈々福)
桂吉坊の落語は「弱法師」(よろぼし)という噺で、これは冒頭で断りがあったが全く笑いもギャグもない。それどころか内容が暗くて、これは何だという思い。元々謡曲だったもので、おとなしくて口答えできない息子に父親が怒鳴りつけ家を出て行けという。真に受けた息子が家を出てしまい、それ以来どこでどうしていることやら。そして一年が経って…という展開だが、頑固な父と間に入って取りなそうという母を演じ分ける吉坊の芸は完成されて見事だ。だけど、一体何なの、この噺、笑いがなくてもいいけど、その場合は涙と人情が欲しいのにそれが全くない。浪曲の方とは「聖徳太子」つながり」かな。
(天中軒すみれ)
今回の収穫は、前座で出た浪曲の天中軒すみれ。なんと芸大出の才媛で「すみれ嬢」と呼びたい感じ。演題は「山内一豊の妻」だったが、時間的に中途で終わった。声が素晴らしくて顔もカワイイんだから、アイドル浪曲師としてブレイク必至と見たがどうだろう。今後の成長が注目される期待株。
(根岸京子さん)
木馬亭の席亭はどうなるんだろうか。今や浪曲定席も一週間だけで、後は貸席である。上が木馬館という大衆演劇の舞台。東京で二つしか残っていない。僕は夜行くと、いつも迷ってしまう。不思議に毎回迷うんだが、夜の浅草も迷宮的でどこがどこだか判らない。そんな浅草に残った不思議の空間がいつまでも続いて欲しいと思う。
僕はその木馬亭に16日の夜に行ってきたばかり。浪曲の玉川奈々福と上方落語の桂吉坊が二人で続けてきたコラボ企画「みちゆき」の第10回にして最終回である。僕はその会に後半半分ほどを妻に連れられて見に行ってる。7時始まりで、最後にある実に面白いトークまでたっぷりと聞いてると10時になってしまう。翌日が早かったので、トークを聞かずに出てしまって残念だった。この会は相当に「通好み」の演題が多く、あまりここでは書かなかった。
(玉川奈々福)
今回もスルーするつもりだったが、席亭の訃報を聞いて書いておこうかと思った。浪曲という芸能は、昔は大人気だったと知ってるが、僕はマキノ雅弘監督の「次郎長三国志」シリーズで広沢虎造がうなっているのを思い出すぐらいだ。一時は国本武春が若い人気者になったが早く死んでしまった。もう聞くこともないかと思っていたら、女性浪曲師、玉川奈々福の人気がブレイクしてきた。今や「知る人ぞ知る」段階を過ぎて、「えっ、まだ聞いたことないの」レベルまでは来てるだろう。
今回の「親鸞聖人御伝記 六角堂示現巻」は他では聞けない演題だった。何しろ築地本願寺の依頼るで作った新作で、他ではやってないという。それをやったのは本人の希望と言うより、企画者がリクエストしたらしい。親鸞、あるいは鎌倉仏教の始祖たちの浪曲はかなりあるというが、築地本願寺住職でもある宗教学者、釈徹宗氏が今までの台本は却下、新作を依頼したという。そこで出来た作品だが、叡山を下り京の六角堂で聖徳太子の夢告を受けた場面に絞り込んでいる。奈々福さんの声はいつものように素晴らしいんだけど、「親鸞聖人」という枠がある以上マジメ一途で、どうもゆとりがない。
(吉坊と奈々福)
桂吉坊の落語は「弱法師」(よろぼし)という噺で、これは冒頭で断りがあったが全く笑いもギャグもない。それどころか内容が暗くて、これは何だという思い。元々謡曲だったもので、おとなしくて口答えできない息子に父親が怒鳴りつけ家を出て行けという。真に受けた息子が家を出てしまい、それ以来どこでどうしていることやら。そして一年が経って…という展開だが、頑固な父と間に入って取りなそうという母を演じ分ける吉坊の芸は完成されて見事だ。だけど、一体何なの、この噺、笑いがなくてもいいけど、その場合は涙と人情が欲しいのにそれが全くない。浪曲の方とは「聖徳太子」つながり」かな。
(天中軒すみれ)
今回の収穫は、前座で出た浪曲の天中軒すみれ。なんと芸大出の才媛で「すみれ嬢」と呼びたい感じ。演題は「山内一豊の妻」だったが、時間的に中途で終わった。声が素晴らしくて顔もカワイイんだから、アイドル浪曲師としてブレイク必至と見たがどうだろう。今後の成長が注目される期待株。
(根岸京子さん)
木馬亭の席亭はどうなるんだろうか。今や浪曲定席も一週間だけで、後は貸席である。上が木馬館という大衆演劇の舞台。東京で二つしか残っていない。僕は夜行くと、いつも迷ってしまう。不思議に毎回迷うんだが、夜の浅草も迷宮的でどこがどこだか判らない。そんな浅草に残った不思議の空間がいつまでも続いて欲しいと思う。
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