尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

衆院選、「自民単独過半数」をめぐる大激戦=序盤戦情勢報道を読む

2024年10月19日 22時04分44秒 |  〃  (選挙)
 15日に公示された衆議院選挙、序盤戦の情勢に関する報道が出始めた。この「序盤」に関しては、選挙期間が短いため調査しないマスコミもある。しかし、いくつかの報道を総合すると、大体同じような傾向がうかがえる。それは「自民党の退潮」と「立憲民主党の堅調」だが、そんなことは言われなくても誰でも知っているだろう。しかし、減るといってももともと議員数が多い自民党だから、石破首相が目標に掲げた「自公で過半数」には届くんじゃないかという予測が多い。それは逆に言えば「自民党単独過半数は微妙な情勢」ということだ。これを「与党過半数確保の情勢」と報じるか、「自民党単独過半数割れも」と報じるかで、ずいぶん印象が変わってくる。ちょっとしたことで情勢は大きく動く可能性がある。
(テレビが報じる予想獲得議席)
 今回は様々な事情が重なり、結果が読みにくい選挙になっている。投票率がどうなるかも、全然予想出来ない。一つには「10増10減」の影響で、今までとは小選挙区の区割りが変更されたところが多く、票の出方が読みにくいのである。自分のところもそうなんだけど、前回から変わって知ってる候補者が一人もいない。「なじみ」がいなくなって自由に投票するのか、それとも棄権が多くなるのか。自民党非公認、比例名簿不登載の影響も読み切れない。小選挙区で当選しないとダメだから陣営が固まる可能性もあるが、有権者が「懲罰」的投票を行う可能性も否定出来ない。
(選挙関心度)
 世論調査による選挙関心度は、「大いに関心がある」から10ポイントぐらい減るのが実際の投票率となる。聞かれた時に「ある程度関心がある」と答える人は、実際には行かない。衆院選は5割は行くが、近年は6割には届いていない。政権交代をもたらした2009年が69%と異例に高く、2012年は59%。その後は、おおよそ53、54、56%推移してきた。これが6割に近づくか、それとも保守系に棄権が出て下がるかは結果に直結するが、どうも読みにくい。
(解散時勢力)
 前提になる議員数を確認しておきたい。衆議院議員の定数は、小選挙区289、比例代表区176の合計465議席。だから、過半数は233議席となる。だけど、それでは議長を出した後の総理大臣指名選挙で過半数を得ることが出来ない。(実際には保守系無所属がいるので、自民党が優位となる。)前回の当選者は、自民党=261、公明党=32で、与党合計293議席だった。小選挙区だけを見ると、自民=189、公明=9だった。解散時勢力は、自民党256、公明党32。野党は前回、立憲民主党=96、日本維新の会=41、国民民主党=11、日本共産党=10、れいわ新選組=3、社会民主党=1、無所属=10。 
 
 今回の解散時議席は、自民党=256、公明党=32で与党合計288、野党は立憲民主党=98、日本維新の会=41、日本共産党=10、国民民主党7、教育無償化を実現する会=4、れいわ新選組=3、社会民主党=1だった。「10増10減」は、まあおおよそのところ自民党が強いところを減らして、野党が強い都市部を増やすんだから、今回は自民が10程度減らすのが前提になる。その上に「安倍派裏金問題」があって、自民党全体が逆風にさらされている。同時に非公認議員や比例名簿不登載があって、地元議員への支持は継続しても、比例区の自民票が減りそうだという観測が強い。

 そのうえ、大阪・兵庫の「公明党擁立区」に「維新」が新たに候補を立てて全面対決になっている。10増10減に伴い、今回公明党は11小選挙区に候補を立てたが、今まで(2009年を除き)「全勝」を誇ってきた公明党だが、今回は小選挙区で全部勝つのは不可能である。ひょっとすると近畿で全滅もあり得る。比例区でも減る可能性もあって、公明党が微減になる予測が多い。そのことも考えると、「自公で過半数」も微妙になるかもしれない。

 「自公で過半数」なら良いはずだが、実際には「自民党単独で過半数割れ」だと、わざわざ禁じ手の石破総裁にした意味がないと考える人も出て来る。「石破首相では参院選が戦えない」と判断して「倒閣運動」が始まるのではないか。石破首相からすれば、安倍派問題で足を引っ張られたのに自分が辞める理由がない。自民党の減り具合では、反石破派が高市早苗を首相候補に立て、それに数議席獲得の可能性がある「日本保守党」などが乗る可能性もあるか。一方、石破側は国民民主党などに働きかけて首相指名を模索する。その可能性は高くはないと思うが、一応頭には入れてある。

 立憲民主党は「保守系」の野田元首相を代表に選出したのがどう出るか。今のところ自民を離れる保守票を獲得する可能性もあって、功を奏したような印象になっている。野党側は(まあ「維新」は除くとしても)乱立が目立ち、その影響は終わってみなければ読めない。共産党やれいわ新選組などの票がどのぐらいになるか、今は読み切れない。立憲民主党が野党の中では一番大きいのは間違いなく、その意味で反自民票が立憲民主に集まる傾向はあるようだ。それが自民系候補を圧倒するまでになるのか。

 まとめてみると、今回で与野党逆転はなかなか厳しいが、石破首相への批判、不満も強く、それは自民党政治そのものへの批判でもある。従って、このままだと2025年参院選の自民党はかなり厳しいことが予想される。次の参議院選挙こそ「天下分け目の戦い」になるんじゃないだろうか。

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