2024年衆院選の各党の比例区票を検討したい。なお、比例区当選者数だけを見てみると、自民党=59議席、公明党=20議席で、与党計は79議席。立憲民主党=44議席、国民民主党=17議席、日本維新の会=15議席、れいわ新選組=9議席、日本共産党=7議席、参政党=3議席、日本保守党=2議席になる。野党系議席は総計で97議席。比例だけなら、与野党の差はもっと大きくなる。(国民民主党は比例名簿登載者が足りず、自民、公明、立民に各1議席を譲ったので、本来なら与党=77、野党=99だった。)
★各党を順番に見てみる。まず自民党だが、今回比例区で1458万票、全体の26.7%になる。これは2021年の衆院選の得票率34.43%から激減した。前に紹介した朝日新聞(21日)掲載の情勢報道では、自民党の獲得予想議席は、小選挙区は135~144~154、比例区は49~56~63だった。合わせると、184~200~217となっている。この時は例の「2千万円問題」はまだ報道されてない。最終盤に小選挙区で落ち込んだことが想像できるが、比例区はむしろ予想の中心値より多かったのである。この10数年の政治史を思い出せば、自民党を離れて、より右の、または左の党を作るのは(大阪の「維新」を除き)成功しなかった。従って、自民党を離党して日本保守党に加わったりする政治家は、いても少数に止まり、数年後の党勢回復を待ち望む人の方が多いだろう。
以下に最近6回の国政選挙の得票数を示す。(参院選後のカッコは獲得議席。)
(16年参院選)→17年衆院選→(19年参院選)→ 21年衆院選→ (22年参院選)→24年衆院選
(2011万=19)→1856万 →(1711万=19)→1991万 →(1826万=18)→1458万
★公明党は596万票ほどで、ついに600万票を割り込んだ。
(753万=7)→ 698万→ (654万=7)→711万→ (618万=6)→596万
公明党は16年参院選から減り続けていたが、21年衆院選で久しぶりに700万票台に載せた。しかし、22年参院選で100万票減らし、今回はついに600万票以下に落ち込んだ。自民党の低調に影響されただけではないだろう。比例区票が減っているのは、構造的な原因があると思われる。選挙運動もかつてほどの勢い(というか、「熱心さ」「強引さ」)が見られなくなった。組織の弱体化が進んでいるのかと思う。今後、一時600万票を回復するかも知れないが、遠からず500万票台前半になるのでは。
(公明党の石井代表は落選)
★次は野党を見る。立憲民主党は2017年衆院選で登場したので、そこから見ることにする。立憲民主党は小選挙区では1,540万票を得ていて、非自民票の受け皿として一応の存在を示している。しかし、比例票は下の推移に明らかなように、おおむね過去の衆院選と大差ない。確かに今までで一番多いけれど、今回の「躍進」は自民票が減ったから浮上しただけなのである。
1108万 → (792万=8)→ 1149万 →(677万=7)→1156万
★続けて国民民主党を見ると、ここは確かに22年参院選から300万票増やして「倍増」に近い。「手取りを増やす」と若者向け政策を打ち出したのが一定の効果を上げたらしい。今まで時に自公政権に協力する時もあり、その「中間的立ち位置」は「維新」と共通し、競合する存在なのではないか。近畿を除き、今回は「維新」ではなく、国民民主党が選ばれたということか。
19年参院選から、(348万=3)→ 259万 →(316万=3)→ 617万
★次に「日本維新の会」を見るが、16年参院選は「おおさか維新の会」で、その時は515万票・4議席だった。今回は前回衆院選から約300万票減らした。大阪万博や兵庫県の斎藤前知事問題などで、一度失った勢いが全国に波及したということか。大阪の小選挙区は全勝したが、それが比例に及ばない。(大阪府でさえ、小選挙区は164万票だが、比例は115万票なのである。)それでも福岡11区で武田良太を破ったのは、維新だった。ここは立民、国民、共産、れいわなど主要野党が立たず、維新と社民党が対抗馬だった。そういう時は維新が受け皿になるときがある。
(515万=4)→ 339万 →(491万=5)→ 805万 →(785万=8)→ 510万
★共産党は336万票ほどで、7議席。どんどん減らしていて、どこで落ち着くのか判らない。今回委員長が田村智子に交代したが、大きな効果はなかった。共産党と競合する立ち位置にあるのは、「れいわ新選組」かなと思う。物価高で困窮する国民への訴求力では、共産党ではなく「れいわ新選組」に分があった。「政治とカネ」問題、あるいは今回の自民非公認候補への2千万円問題などを報道したのは、確かに「しんぶん赤旗」だった。だから「新しいプロセスへ扉を開いたのは共産党」と言うけど、共産党への投票にはつながらないのは何故か。「科学的」に分析してみれば、党の抜本的改革が必要なことが理解出来るはずだが。
(602万=5)→ 440万 →(448万=4)→ 417万 →(362万=3)→ 336万
(共産党の田村智子委員長)
★れいわ新選組は、前回19年に228万票、21年衆院選は221万票、22年参院選は232万だった。今までは200万票台前半を越えられなかったが、24年衆院選で380万票(7.0%)を得た。特に沖縄県で12.1%の得票があり、自立公につぐ第4党になったのが注目される。沖縄4区で立候補した山川仁(元豊見城市長)が比例で当選して、今後沖縄政界にどんな影響を与えるか注目される。一時「沖縄1区」にも擁立の動きがあったし、山本太郎代表は「オール沖縄は歴史的役割を終えた」と発言した。ただ「れいわ新選組」はまだ地方議員が少なく、地域の基盤が共産党、公明党などに及ばない。しかし、徹底したポピュリズム路線でしばらくは拡大するのではないか。
★社民党は、93万票で比例区票はゼロだった。まあ全国で集計する参院選比例区なら1議席に届くが、ブロックごとの衆院選比例区では、もう社民党が当選することはないだろう。
(154万=1)→ 94万 →(105万=1)→ 101万 →(126万=1)→ 93万
★「参政党」は22年参院選で、177万票、3.3%で1議席を獲得した。24年衆院選は187万票を得て3議席を獲得。一時は日本保守党の方に勢いがあるのかと思ったが、実際は参政党の方が多かった。地方議員などもいて、基盤的には大きいのである。極右的、陰謀論的世界観はいずれきちんと論じる必要を感じている。
★今回初参加の「日本保守党」は、1,145,622票を獲得して、政党要件をクリアーした。僕は東京ブロックで1議席取るのかと思ったが、獲得議席ゼロの参政党に及ばなかった。(比例で獲得したのは、東海と近畿。)しかし、社民党より多いのである。この党がどうなるのかは、要注目。今のところ、参政党と日本保守党が競合する可能性もあり、どこまで本格政党になるのかは、2025年参院選を見る必要がある。
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