尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

教員の長時間労働是正方針をどう考えるか

2018年12月13日 22時46分06秒 |  〃 (教育行政)
 中央教育審議会の特別部会が12月6日に答申の素案を示したとマスコミが一斉に報道した。中教審は文部科学大臣の諮問機関で教育行政上重い存在である。「特別部会」の「素案」であり、今後パブリックコメントなどで広く一般の意見を公募するとされるが、基本的には実施の方向にあると考えていい。内容は「法定勤務時間を超えて働く時間」の上限を「月に45時間」(繁忙期でも100時間、年で360時間)とする。「授業準備」や「部活動指導」を正式の勤務時間に位置付ける。今後「変形労働時間制の導入を可能にするべき」などである。
 (新聞報道)
 「是正方針」ですべて解決するとは考えられないが、「ないよりまし」という考え方もある。一方細かく見て行くと「より悪くなる」という事態も想定できる。罰則がある民間企業でも「違法残業」が絶えない。教員の勤務時間管理には罰則がないということなので、教員の長時間労働がこれで完全解決するとは考えられない。しかし、それ以上に重大なのは、「残業ではない」ものに「残業規制」をすることの意味である。いや、今後は「授業準備」も「部活動指導」も「勤務」にするという。

 そのことの是非を問わずに、とにかく今後は勤務として扱い「勤務時間」に入れるという。それならば、今後は朝の出勤から夕方(または夜)の部活終了、翌日の授業準備完了までが「教員の勤務」となる。「残業を命じる」までもなく、初めから一日の勤務時間が10時間ぐらいになってしまう。もともと決められた勤務時間なんだから、それを「残業」というのはおかしい。それに「部活動」を「勤務」にしてしまうと、教員は全員が「校長に命じられて部活動を指導する」ということになってしまう。これは部活動のあり方を大きく変えることになる。議論なしで進めていい問題ではない。

 「授業準備」には限りがない。納得できるような授業準備するために、どこまで「残業」するべきなのだろうか。それを管理職が「規制」するのだろうか。それなら、校長が授業観察を行って勤務を評定するという制度はどうなるのか。それをそのままにして、とりあえず「残業上限」があるから帰れということか。「残業規制」があったって、月の最後の日に生徒が問題を起こしたら遅くまで残って対応するしかないだろう。月に何時間という規制を掛けることで、出退勤の時間管理が厳しくなることだけは間違いない。そのことは職場の雰囲気を悪くするのではないか。

 変形労働時間って言ったって、部活動は運動部・文化部を問わず週に2回程度の休みをもうけるべきだと文科省自体が指針を示している。部活のある日は勤務時間が長くて、休みの日は短いのか。週の中で一日ごとに正規の勤務時間が変わる制度にするのか。それとも部活動時間帯すべてが「勤務時間」となるのか。そうなると育児・介護を抱える教員は部活動を持てないだけでなく、育児軽減、介護軽減の制度を大幅に充実させない限りとても勤められないのではないか。考えれば現場的には「より悪くなる」可能性を秘めているのではないかと思う。

 じゃあ、どうすればいいのか。とりあえず「情報セキュリティ」などと厳しいことばかり言わない方がいい。例えば、定期テストの日は自宅採点を認めて早帰りとする。20世紀には当たり前だったのだから何も問題ない。どんな企業だって自宅で資料を作ってメール送信できるんだから、自宅でできることは自宅でできるようにしないとおかしい。生徒の自宅住所も校外に持ち出せなかったら、遅くまで働いている家庭には連絡も取れない。おかしいことが多くなった。

 明日の試験が出来てなかったら出来るまで残って作るしかない。生徒の問題が起きれば、家庭から親が来られるまで遅くまで残って指導するしかない。部活動も大会直前には毎日のようにやるしかない。その代わり、夏休みは家で全日研修を認める。教員免許更新制をなくすとか、いろんな研修をどんどんなくすとか、そういうことの方がずっと納得できるんじゃないか。もう無理なのかもしれないけど。教員(に限らないが)は自分の身は自分で守るしかない、そういう時代になっている。制度をあれこれいじっても即効性はないと思ってる。
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