今まで知ってはいたし、読んだこともあったけど、まったく気になっては
いませんでした。
それが今回、初めて声に出して読み、絵も、ゆっくり眺めてみると、
なんかとってもいい絵本だな~と、素直に思いました。
青のふちどりがなんともきれいだし、雨降りの描写が、にじんだような
輪郭線からも伝わってくるしー。
傘は雨を凌ぐため、傘は雨に濡れる身を守るため、という機能あっての
ものなのに、それを、あえて、ひろげない、使わない、ことで、きちんと畳まれた
傘の美しさを愛でていた「おじさん」。
このこだわりようは、「おばさん」では全然成り立たないし、「おにいさん」では
説得力不足(笑)。やはり、おじさんになるまでに刻まれた時間が、必要不可欠
なんだなーと思ったり。
そんなこだわりのおじさんも、ポンポロロンへの好奇心に負け、
ついに傘を開いてしまうのですが、その見開きに描かれた傘の、堂々と
美しいこと!
とうとう おじさんは、
かさを ひらいてしまいました。
ついに おじさんは かさを ひらきました でも、おじさんの行動は
伝わるけれど、ここの文は、やっぱり「ひらいてしまいました」だよね、と
思い、その後に続く文も、そうそう、「おじさんとかさ」は一体化しているから
おじさんが雨の中へ一歩踏み出したのでも、傘は雨にぬれました、でもなく
「おじさんとかさ」が、雨の降っている、今まで二人にとって未体験だった
場所へ「はいってしまった」んだよね、と思いました。
(もっと言えば‥おじさんとかさは、元居た「場所」にはもう二度と戻れないと
いうことなんです‥)
そういいながら、おじさんとかさは あめのなかに
はいってしまいました。
お話ラスト近く、家へ戻ったおじさんが、傘をつぼめる場面があり、
そこでこう言うのです。
「ぐっしょり ぬれたかさも いいもんだなあ。
だいいち かさらしいじゃないか。」
りっぱなかさは、りっぱに ぬれていました。
おじさんは うっとりしました。
なんかちょっとしみじみしちゃうような、いい場面です。
こどもが読んでも、こどもたちと読んでも、もちろんおもしろいのですが、
作者、佐野洋子さんを思いつつ、ちっちゃなこだわりや、ちっちゃな美意識を
見いだして‥私の、『おじさんとかさ』ブーム、この梅雨のあいだ続きそうです。