急に暑くなりましたね。また、戻るらしいですが、体調には気をつけたいですね。
NHKのスポーツ大陸で体操の選手富田洋之さんの特集を、見ました。
http://www.nhk.or.jp/spotai/onair/176/index.html
富田さんは、子どもの頃、美しい体操をしているロシアの選手を見て、その美しさにあこがれ体操を続けておられました。2004年アテネオリンピックで美しい体操で日本の体操に金メダルをもたらした人の一人ですが、2006年のルール改正で美しさは得点の対象からはずされ、わざの難易度に得点の重点が置かれて苦しみます。少々荒くても、難易度の高いわざを入れた方が勝てる。
それは彼が目指した美しい体操をある程度あきらめ、難易度に挑戦しなけば勝てないと言うことを意味していました。
彼は悩みますが、彼は妥協することができなかった。北京には美しい体操をして、他国に引き離されます。
その上、吊り輪で落下し、肩を負傷します。その時点で優勝は消え、誰もが彼は棄権すると思いましたが、最後の種目を、怪我を押して出場、彼の美しい体操を貫いた演技をします。その美しさに世界の人々は得点は出なくても感動し、惜しみない拍手を送りました。それだけでなく、世界に影響を与え、彼が体操を引退した次の五輪では採点方法が、変更になり、美しい体操が戻ってくるそうです。また、多くの選手が彼の見せた美しい体操を目指しているそうです。
茂木健一郎さんの「すべては音楽から生まれる」PHP新書を紹介した時に、書いた言葉を思い出しました。
『「美しい」「嬉しい」「悲しい」「楽しい」・・・一瞬一瞬に生身の体で感動することによって、人は自分の価値基準を生み出し、現実を現実として自分のものにできるのである。それが「生きる」ということである。だからこそ、本当の感動を知っている人は、強い。生きていく上で、迷わない。揺るがない。折れない。くじけない。 音楽は、そんな座標軸になりうる。音楽の最上のものを知っているということは、他のなにものにもかえがたい強い基盤を自分に与えてくれるのだ。』
人からされる評価は時や、社会によって変化していきます。美しいと思った内側から起きた感動の体験は、変らない。そして、それは数値や、文字にすることはとてもむずかしいけれど、人から人に必ず伝わる。ロシアのある選手から、富田さん、そして、世界中の体操を目指す子ども達。
私達が目指している音楽の世界も、同じだなぁと思いました。難しいけれど、テクニックやスピードにおぼれた演奏よりも、美しい音、命そのものの美しさ、そういうものを目指して行きたいと思います。