札幌で徳川美術館展を観るなんて、なかなか乙なもの。北海道近代美術館。一昨年はここで大原美術館展を観た。これもまた、乙なものだった。
さて、名古屋の徳川美術館には、2012年にはじめて訪れた。そのときは、”尾張の徳川家の雛まつり展”で国宝・源氏物語絵巻は映像展示だけだったし、”初音の調度”は、ごく一部の展示だった。そして、2013年1月に、えど博で大々的に”尾張徳川家の至宝展”が開催された。今回のは、ほぼこれに準じる豪華な展覧会といってよい。
まず、お目当ての国宝・源氏物語絵巻は期間限定展示で、ぼくらが札幌を発つ日が初日。もちろんこの日、8月5日に合わせた。皆、思いは一緒で、館内は大変な賑わいだった。絵巻だからといって、絵巻物が拡げられているというわけではない。保存が目的で昭和7年から十年もかけて、それぞれの場面ごとに額面装に仕立てられた。当初は80図以上あったが、現存するのは20図・詞ほど。そのうち尾張徳川家は、15場面(絵15面・詞28面)を所蔵している。残りは五島美術館。
それらの内、今回の展示は、”東屋(一)”の場面。匂宮は、浮舟を中君の異母妹とは知らずに言い寄る。あやうく逃れた浮舟の心を慰めようと、中君は絵物語をなどを浮舟に与え、右近に詞書を読ませる。じっと絵に見入る浮舟。両国のときは”柏木三”だったので、別のものが観られて良かった(笑)。
つづいて、家光の長女、千代姫が三歳のとき、尾張徳川家にお嫁入りしたときに持参した婚礼道具、”初音の調度”。両国のときは”貝桶”だったが、今回は金銀蒔絵のお化粧道具”旅眉作箱”。
以上二つが、いずれも国宝で、めったにみられない徳川家の至宝。
でも、国宝はこれだけではない。徳川美術館には国宝8口、重文19口など計500口もの刀剣を所蔵している。札幌にも随分いいものがきていた。ずらりと名前を挙げてみる。
国宝・太刀 銘 来孫太郎作(花押) 正応五年壬辰八月十三日 徳川家康・義直(尾張家初代)所持(銘の 来孫太郎 は作者の 京鍛冶 ・来国俊のこと。この名で銘をしるした作品は他に例がなく、年紀まであり、きわめて貴重な存在であるとのこと。
国宝・太刀 銘 国宗 徳川光友(尾張家2代)・宗勝(尾張家8代)所持
重文・刀 金象嵌銘 正宗磨上 本阿弥(花押) 名物 池田正宗 徳川家光(3代将軍)下賜・徳川義直(尾張家初代)拝領(伊達正宗、秀忠から伝来したもの)
刀 銘 村正 徳川家康所持 (妖刀伝説がある名刀。刀文がいかにも妖しく乱れている。)
重美・刀 朱銘 兼氏(花押徳川綱誠(尾張家3代)・慶勝(尾張家14代)所持
等々。両国でも観たものが多い。さすが徳川家、名刀が多い。午後から正宗の墓に参ろうぞ。近くなんでやんす。
章立ては次のようになっている。
第1章 尚武 (刀剣類など)
第2章 清雅
第3章 教養
特別出品(至宝、源氏物語絵巻、初音の調度)
第二章では、茶器のいいものいっぱい。香合や香木も。伽羅の蘭奢待も。打掛もここ。
第三章では、斎宮女御集など和歌集や屏風絵など。
重要美術品「厳島・松島図屏風」(右隻)土佐光起筆 江戸時代/17世紀
同時開催の近美コレクション展も良かったですよ。夏季名品展。
いきなりクリンガーの手袋シリーズ。今年は鎌倉ではじめてみて、上野の西美の”平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品”でみて、札幌まで追いかけてくるのだから(汗)。たしかにこのエッチングは印象に残るわい。とくに手袋を拾おうとする場面。ユトリロのモンルージュの通り。そして、片岡球子の初夏、山口蓬春の向日葵も。三岸節子の摩周湖。エミールガレの作品も。
札幌でみた、徳川美術館展とコレクション展!三岸好太郎美術館と共に、思い出に残る展覧会となりました。さて、次は何処に出掛けるか
山口蓬春の向日葵。ゴッホかゴーギャンか(笑)。
これも観たかったが、時間切れ!
札幌に行ったら、この子にもよろしく!