気ままに

大船での気ままな生活日誌

歌枕展 あなたの知らない心の風景  

2022-08-16 09:24:51 | Weblog

おはようございます。

六本木のサントリー美術館で”歌枕/あなたの知らない心の風景”展が開かれている。(6.29~8.28)

もう一ヶ月も前に行ったのだが、今頃、感想文を書こうとしている。歌枕とは、古来、多くの歌人によって和歌に詠まれた名所のこと。”あなたの知らない心の風景”という副題がついている。ぼくの知っている歌枕の風景といえば、吉野の桜と龍田の紅葉くらい(汗)。西行や芭蕉の紀行文、浮世絵に現れる歌枕などを通じ、多少知っているが、具体的にどんな風景かと問われれば、すぐには頭に浮かばない。

さて、本展はつぎのような章立てになっている。なかなか難しく、展覧会を楽しむというより、ぼくには、お勉強という感じでしたね(笑)。

第一章:歌枕の世界
第二章:歌枕の成立
第三章:描かれた歌枕
第四章:旅と歌枕
第五章:暮らしに息づく歌枕

ここも、会場内撮影禁止ということで、かつ、分厚い図録は買わない主義なのでろくな説明が出来ないが、公式サイトの解説やちらしの写真等を参考にしながら、勉強しながら記録しておこうと思う。

第一章:歌枕の世界

日本美術では、桜と紅葉を描く作品は、古くからの名所である「吉野」と「龍田」を描いたものとして説明される。同様に薄の生い茂る原野に月が沈む光景は「武蔵野」、川にかかる橋と柳・水車の組み合わせは「宇治」など。長らく日本の名所は写実的ではなく、和歌の詩的なイメージによって表わされてきた。そのイメージの源泉となっていたものこそが「歌枕」である。本章では、歌枕の世界を大画面の屛風絵によって体感しようというものである。

根津美術館の吉野龍田図(屏風)を楽しみにしていたが、それは後期展示だった。その代わり、吉野図屛風(室町、サントリー美)、春秋花鳥図屛風(土佐光起、江戸時代、17世紀、サントリー美)、柳橋水車図屛風(桃山時代、京博)などが展示されていた。

春秋花鳥図屛風(土佐光起、江戸時代、17世紀)

第二章:歌枕の成立

歌枕は実在の景勝地というよりも、歌人の間で共有された心の風景という側面が強く、和歌の中にだけ存在した想像上の名所とも言えるもの。そこで歌枕の重要な典拠とされたのが『古今和歌集』などの勅撰集。勅撰集は天皇の命で編纂される公的な和歌集であることから、その中で詠まれた土地が歌枕として特に重視されていく。本章では、まさに歌枕が成立していく過程にあった平安時代の古筆を通して歌枕の歴史を概観する。

主な展示品:関戸本古今集切よしのがは( 伝藤原行成)、重文・寸松庵色紙ちはやふる( 伝紀貫之)、今城切(藤原教長)、以上平安時代。歌仙絵左京大夫顕輔(鎌倉時代)。能因歌枕の写し本(元禄9年)(平安期の歌学書、《能因歌枕》《五代集歌枕》《八雲御抄》などに歌枕の地名が列挙された)

重要文化財 寸松庵色紙「ちはやふる」 伝 紀貫之 一幅 平安時代 11世紀
京都国立博物館

「寸松庵色紙」は、伝小野道風筆の「継色紙」と伝藤原行成筆の「升色紙」とともに、三色紙とよばれる古筆の名品で、紀貫之(872~945?)を伝称筆者とする。大徳寺龍光院の子院である寸松庵に住した茶人・佐久間真勝(あるいは直勝とも、1570~1642)が愛蔵したことから、その名がある。 この1幅は、草花文様が鮮やかに残る唐紙に、『古今和歌集』巻第5・294番歌、在原業平(825~80)の有名な「ちはやふる…」1首を散らし書にする。(文化遺産オンラインより)

ちはやふる かみよもきかず たつたかわ からくれないに みづくくるとは (在原業平)

第三章:描かれた歌枕

和歌を詠むための地名であった歌枕は、早くから美術と深く関わりながら展開していく。日本における名所絵の歴史が、歌枕を描いた平安時代のやまと絵に始まるとされている。平安時代初期、屛風絵に対して和歌を詠む「屛風歌」が流行し、名所を描いた屛風にも和歌が詠まれるようになる。屛風歌の流行は11世紀には終わるが、風景ではなく、その土地を象徴する景物で表わされる歌枕と絵画の関係は、その後も何らかの形で意識され続けた。本章ではそうした名所絵の伝統に根ざして描かれた歌枕を中心に。

主な展示品:鏡山図(伝姉小路長隆画 伝 藤原家隆賛 一幅 鎌倉時代 13~14世紀 根津美術館)、 石山寺縁起絵巻( 模本)(谷文晁、江戸時代 19世紀)、伊勢物語色紙貼交屛風(土佐派、室町~桃山、16世紀)、天橋立・須磨・明石図(狩野養信、江戸時代19世紀)、萩の玉川図(北斎、江戸時代18,9世紀)、大和名所図画帖より和歌の浦 狩野栄信・狩野養信 一帖 (江戸時代 19世紀)など。

《鏡山図》 伝 姉小路長隆画 伝 藤原家隆賛 一幅 鎌倉時代 13~14世紀 根津美術館

《大和名所図画帖より和歌の浦》 狩野栄信・狩野養信  一帖 江戸時代 19世紀 京都国立博物館

以上で3章までの前編紹介の終了となりますが、ちょっと絵がさびしいので、おわりに、現在、後期展示されている根津美術館の吉野龍田図(屏風、江戸時代 17世紀)を特別展示いたしまする(笑)。この屏風は今年5月に、根津美術館庭園のカキツバタが咲き誇る頃に国宝・燕子花屏風と共に同館で見ている。

ついでながら、ぼくの歌枕紀行(吉野の桜)平成時代、2008

(つづく)

それでは、みなさん、猛暑の中、今日も一日、お元気で!

コメント (6)
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