今回の”春のぶらり東京”のテーマは枝垂れ桜見物であったが、その間、美術展も野間、三菱、都美、三越と四つほど観ている。まず、はじめは、椿山荘のすぐ隣りにある講談社野間記念館。椿山荘に訪れたときには、必ず、寄ってしまう美術館。そして、その心地よさに、必ず、酔ってしまう美術館。今回もそうだった。
横山大観と近代日本画の巨匠たちというタイトルで大観、栖鳳、玉堂ら近代日本画の巨匠たちの作品が所狭しと並んでいる。何度も観た作品が多いが、いつみても、まるで春風に吹かれてみいるたいな気分。
大観の六曲一双の屏風絵、”千与四郎”が入り口のところで待っている。これだけで、まず、大きく深呼吸してしまう。全面に描かれた緑の木立から清浄な空気が流れてくるみたい。若き日の千利休が紹鴎に庭掃除を命ぜられたが、塵一つない庭は風情がないと、木々を揺すり、葉っぱを落とした。これに紹鴎は感心し、彼を弟子にしたという。その伝説が画題だ。
そして、この部屋には、さらに大観の絵が二つあるほか、玉堂、観山、栖鳳、映丘、木村武山、小茂田青樹とビッグネームが並ぶ。それだけでありがたく思ってしまうが、それぞれ、いい絵ばかり。ちらしに載っている絵しか紹介できないのが残念。
大観 春雨
竹内栖鳳 古城枩翠 皇居のお濠の石垣、そして垂れ下る黒っぽい緑の松の大木。小舟は藻刈船。
川合玉堂 渓村秋晴 これぞ玉堂の風景画といったところ
松岡映丘 池田の宿 太平記 巻二“俊基朝臣再び関東下向の事”に取材している。日野俊基は、後醍醐天皇につかえ倒幕計画に参加するが、元弘の乱の時、捕らえられ、鎌倉に護送される途中の池田の宿。ここは、梶原景時が平重衡を鎌倉に護送中に泊ったところでもある。そこを朝立ちする場面である。悲しげな風情が、背景にまで及んでいる。この翌年、(ぼくもよく行く)、源氏山・葛原岡で処刑された。日野俊基の墓もここにある。
さらに大観”葵”、下村観山”竹林賢人”、木村武山”光明皇后”、小茂田青樹”四季花鳥”、”荒木十畝”秋江水禽図”など
二室の土田麦僊の襖4枚分の大きさの”春”が圧倒的だ。左に白木蓮、右に椿、そして中央には白い梨の花。草花の咲きみだれる中、母子が遊んでいる。ここからも、やさしい春風が吹いてくる。
そして、この部屋には、上村松園の惜春之図と十二か月図 、山川秀雄、深水らの作品などが楽しませてくれる。
三室には速水御舟の梅花馥郁 紅梅のうねるような枝が印象的
ここには、さらに清方の五月雨、安田靫彦の春雨、観山の寿老、古径の平重盛など。そして、野間コレクションご自慢のいろいろな画家による”十二か月図”。
すばらしい展覧会でした。
玄関前の枝垂れ桜が見頃を迎えていた。