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【cinema】『ハンティング・パーティー』(試写会)

2008-04-21 01:29:03 | cinema
『ハンティング・パーティー』(試写会)@よみうりホール

実はこのブログ映画情報サイト、シネトレ公認ブログになっているのです。といっても映画の感想を書くだけなのですが(笑) というわけで活動第1弾として『ハンティング・パーティー』試写会に行ってきた。ちなみに掲載画像はシネトレからご提供いただきました。

「人気戦場レポーター、サイモンは内戦中のサラエボからの生放送中キレてしまいクビになり表舞台から姿を消す。彼とチームを組んでいたダックは局を代表するキャスターの専属カメラマンとして、コネ入社の新人プロデューサー、ベンと共にボスニアにやって来る。そこでサイモンと再会し、彼の持ち込んだ特ダネを追うことになるが・・・」という話。これはなかなかおもしろかった。冒頭の戦闘シーンでのサイモンとダックのコミカルなやり取りなど、コミカルさと重いテーマのさじ加減がいい。ボスニアで起きたことを思えば重くてやり切れないけれど、3人のチームのコミカルなやり取りがそれを救っている。

サイモンは一見いいかげんで自分勝手で、ムチャなことをするのがかっこいいと思っている鼻持ちならない人物に見える、大部分はあっているけど(笑) でも、それだけではない。彼が持ち込んだネタは国連やCIAが捜査するも未だ発見されていないフォックスの潜伏先。彼には500万ドルの懸賞金がかけられていた。彼を生け捕りにしたいとムチャを言うサイモンには、ある理由があった。ダックはサイモンのブチギレ事件で逆に株をあげて出世し、今では仕事にもお金にも女性にも不自由しない生活。常に冷静で暴走しがちなサイモンを上手くコントロールする彼が、再び行動を共にすることにしたのは単に特ダネが欲しかっただけではない。ハーバード卒で頭でっかちな副社長の息子ベン。父親に認められたい彼は足手まといになるだけかと思いきや、意外に役に立ったりする。

この3人のキャラクターや関係ってありがちだし、こういうタイプの映画ではよく見てきた気がする。ハリウッド映画はこういう王道なキャラを組み合わせてコミカルな感じに描くのが上手い。ただ大半はコミカルな感じだけで終わってしまいがちだけど、そうはなっていない。伝えたいメッセージはちゃんと伝わった。3人が核心に迫っていくと、いろいろ個性的な人物が出てきたり、危険な目にあったりするけど、緊迫感の中にもコミカルさがあっていい。『ランボー』のパロディとか(笑) サイモンの辛い過去も、ボスニアの重い過去や現状も重くなり過ぎずに見れた。

旧ユーゴスラビアの内戦で起きたことについてはNHKの特番を見たので、ある程度の知識はあった。でも、フォックスのモデルとなったラドヴァン・カラジッチという人物は知らなかった。映画の中で「この国をこんなにした極悪人」と言われるけれど、あの戦争から10年経った今でも、建物に残る生々しい銃弾の跡・・・。イスラム教徒が去り、いわゆる「民族浄化」がなされた街・・・。目に見えるそうした傷より深刻なのは人々の心に残された傷。サイモンが最初に対峙した時の得意げなフォックスの顔を見た時、激しい怒りを感じた。「民族浄化」という名の下に幼い子供達まで無残に殺害された。女性達は何時間も何度もレイプされ続けて殺された。「民族浄化」って一体何? お前はそんなに高潔だとでも言うのか! でも、フォックスがしたかったのは「民族浄化」ではない。権力を掌握したかっただけだ。なおさら罪深い。だけど、「浄化」された人々や第三者から見れば極悪人で許せない人間だけど、同胞の人々からみれば偉大な指導者なのだ・・・。この辺りもきちんと描いている。

役者達はよかったと思う。サイモンはあまり好きなタイプではないけど、リチャード・ギアはイヤなヤツになりがちな彼を上手く演じていたと思うし、ちょっとキザな感じと合っている。ベン役のジェシー・アイゼンバーグも良かった。’80年代か?というような風貌もいい(笑) そしてテレンス・ハワードの佇まいがいい。恋人のことでは取り乱すのに、どんな危険な状況でも落ちついていて、でも生き生きして見える。知的な感じもいい。

ボスニアで起きたことは、これまでもどこかで起きてきたし、今もどこかで起きている。日本でも起きたし、他の国にもした。こんな悲劇は2度と起きてほしくないし、早くなくして欲しい。でも、フォックスいやカラジッチのような人間がいるかぎりなくならないし、彼を本当は捕まえようとしていない国連やCIAなどの「事情」があるかぎり終わらない。私達の考える単純な正義は行われていない。伝えられていることが全てでないのは、最近話題のあの国だけではないのだ。

冒頭「この映画ではありえない所が真実である」とクレジットされるけど、これは実話を基にしたフィクション。映画ではある程度スカッとする部分はあるけど現実は違う。ラストおそらくボスニア語(?)と思われる言葉で”I fought the law”が流れる。「法と闘ったけど結局法が勝った」という事でしょうか・・・。

笑えるところもニヤリとするシーンも"I fought the law”を含めてたくさんある。重いテーマだけど社会派サスペンスとして楽しめた。エンドロール中に「真実」部分の種明かしがある。なかなか楽しいので、普段はエンドロールを見ない人も残って見る価値あるかも。


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5/10(土)よりシャンテ シネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
『ハンティング・パーティー』Official site
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コメント (2)
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