【art】「コレクター福富太郎の眼 昭和のキャバレー王が愛した絵画」鑑賞@東京ステーションギャラリー
見たいと思っていた企画展。緊急事態宣言による休館を経て再開したものの、夜間開館はなし💦 閉幕も近かったので、半ば諦めていたのだけど、仕事の目途が付いたので、お昼休みにチケット取って早上がりして行ってきた!
ちなみにチケットはローソンチケットでの事前予約のみなのだけど、電子チケットがなく店舗へ発券に行かないといけないのが不便かも😅
福富太郎という人は知らなかった。チラシの説明によりますと、1964年の東京オリンピック景気を背景に、全国に44店舗のキャバレーを展開し、キャバレー王と呼ばれた実業家なのだそう。福富太郎について詳しくはWikipediaで!
福富太郎こと、中村勇志智が13歳だった時、米軍による空襲で父親の鏑木清方コレクションが家と共に焼失してしまい。大変悲しい思いをしたそうで、後に鏑木清方を中心に有名無名に関わらず、自分が欲しいと思うものを収集したのだそう。
今回の企画展は生前の福富と親交のあった山下裕二先生が監修。なるほど! だから「あやしい絵展」に鏑木清方の「妖魚」や、北野恒富の「道行」などが展示されたりしていたのね! とはいえ、山下裕二先生どれだけ監修しているの 😲 自分が行っただけでも「あやしい絵展」(記事はコチラ)「小村雪岱スタイル」(記事はコチラ)がそうだし、行けなかった「渡辺省亭展」もそうだったと思う。
さて、いつものように感想Tweetしていおいたので、それに追記する形で感想記事として残しておく😌
#福富太郎の眼 早上がりして見てきた✨素晴らしかった!コレクションのきっかけとなった鏑木清方作品が特に素晴らしく、清方本人も作品との再会を喜んだのだとか😊「薄雪」の切なさ!だからこそ滲み出る色香。素晴らしい!! pic.twitter.com/QE965gj9uY
— maru 𓆸 (@maru_a_gogo) June 23, 2021
鏑木清方「薄雪」
前述したとおり、福富が絵画収集をするきっかけとなったのが鏑木清方(Wikipedia)。鏑木清方とは親交があり、作品を購入すると確認のため清方本人に見せていたそうで、清方も懐かしがって喜んでいたのだそう。
この「薄雪」は近松門左衛門「恋飛脚大和往来」(Wikipedia)を描いた作品。遊女梅川と恋仲になった忠兵衛は、彼女を身請けしようと奉公先のお金を盗んでしまっており、2人が手に手を取って逃げるというシーンだそう。近松だしてっきり心中してしまうのだと思って見ていたこともあり、梅川の切ない表情が美しく、こんな状況なのに色香がにじみ出て素晴らしい。また忠兵衛の表情も切なくて色っぽい。チラリと見える手の指や足の指に力が入っていることが分かるのも、2人の追いつめられた感じが伝わって来る。
清方作品の特徴は、とても清々しいのに、どこか色香がにじみ出ていることだと思う。今作は、そういう意味ではもう少し色っぽい題材ではあるのだけど、2人はこの後心中するのだと思ってしまうくらい、張り詰めた空気があり、そしてそれが色っぽい。
でも、「恋飛脚大和往来」のあらすじを軽く読んだ感じでは、2人は心中してしまうわけではなかった😅
#福富太郎の眼 コロナ禍で休館からの終了で見れなかった「渡辺省亭展」🥲作品が数点あって嬉しかった!「幕府時代仕女図」の艶やかさ!以前見た川村清雄の「蚊龍天に昇る」の迫力と勝海舟に100円で売りつけた話が面白い🤣
— maru 𓆸 (@maru_a_gogo) June 23, 2021
渡辺省亭「幕府時代仕女図」
緊急事態宣言の延長により再開できないまま会期終了となってしまった「渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画」(現在、岡崎美術館で開催中!) 見たいと思っていたので悲しかった😢
そんな渡辺省亭(Wikipedia)の作品を3点見ることが出来た! 1918年に亡くなった際に鏑木清方が追悼文を出したということだけど、確かに清方の流れをくむ清々しくも色香の漂う美人画。他2点は「塩冶 高貞妻」(Wikipedia)で、これは歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」から題材を得たんだったかな? その元になった「太平記」ではなかったような?🤔
これも素敵だったのだけど、構図含めてとても好きだったのが「幕府時代仕女図」 手前の女性の着物の裾の広がっている感じや、彼女の方に腰をかがめている女性の傘の傾け方、そして2人の表情など、清々しい美しさ。後ろ姿の女性のうなじの感じにそこはかとなく漂う色香。日本人女性の美しさを描いていて、とても素敵。
川村清雄の「蚊龍天に昇る」
川村清雄(Wikipedia)は以前、江戸東京博物館で開催された企画展を見ている(記事はコチラ)その際に、勝海舟(Wikipedia)がとても気に入って、衣食住の面倒をみていたことは知っていた。けど、この「蚊龍天に昇る」を勝に買い取らせてやると冗談ともつかぬことを女中さん達に語り、まんまと買い取らせたというエピソードは知らなかった。そして、とても好き😚
しかし、この絵の迫力がスゴイ! 蚊龍(Wikipedia)というのは、中国の想像上の生き物で、水中に潜んでおり、雲雨に乗って天上に昇って龍になるそうで、これは龍になったところなのね!😳
画像だとあまり伝わらないのだけど、この空の色が独特で、グレーがかった青の深みが凄く、さらに龍の顔を照らしているかのようなオレンジがアクセントとなっている。龍の表情は穏やかなのだけど、ゴーッという音が聞こえてくるような迫力。これは勝海舟も買い取ってしまうわ!
しかし、買わせて見せると言っちゃう川村清雄も豪快だけど、おそらくその辺りも承知の上で買い取る勝海舟もカッコイイな😍
#福富太郎の眼 どうしても欲しくて探し続けていたという満谷国四郎「軍人の妻」 妻の左目に僅かに浮かぶ涙でうちに秘めた悲しみや憤り、そして夫への愛を表現するのスゴイ!これは日本人なら買い戻したいと思うわ😭
— maru 𓆸 (@maru_a_gogo) June 23, 2021
満谷国四郎「軍人の妻」
満谷国四郎(Wikipedia)という画家のことは全く知らなかった。しかしこの作品素晴らしかった! 福富は今作をどうしても欲しいと思っていたそうで、30~40年くらいの間アメリカの大学に旧蔵されており、おそらく大切にはされていなかったことを不憫に思ったとのこと。
モデルとなった人物がいたのかは書かれていなかったと思うけれど、日露戦争で戦死した軍人の妻を描いているとのこと。軍の関係者が遺品を届けに来たところで、取り乱すことなく静かに受け取る妻の左目にはうっすらと涙が描かれている。この涙だけで、妻の様々な思いが伝わって来る。
悲しみ、憤り、そして夫への愛。第二次世界大戦中に空襲で家を焼かれ、コレクションを決意した福富だけに、この作品が粗末に扱われていることを見過ごすことはできなかったのだと思う。その気持ちはとても良く分かる。
#福富太郎の眼 ポスターにもなってる北野恒富「道行」にも、吉田博「朝霧」にも再会出来たし、ホント行ってよかった! 現在、夜間営業がなく18時までなので平日はキビシイけど、東京ステーションギャラリーは大きくないので、1時間くらいでじっくり見れるので大丈夫!
— maru 𓆸 (@maru_a_gogo) June 23, 2021
北野恒富「道行」
今展のポスターやチラシにもなっている北野恒富(Wikipedia)の「道行」は、先日「あやしい絵展」で見たばかりだけど、これはやっぱり素晴らしい! 道行というのはもともとは旅をするという意味のようだけれど、この作品の2人の行く先はおそらく心中。
心中を題材とした作品は、あまり買い手がつかなかったそうだけれど、福富は好んで購入しており、心中モノは福富へという暗黙の了解が出来てしまったため、足元を見られないよう駆け引きをしていたようだけれど、今作は言い値で即決してしまうほど気に入ったのだそう。
イヤ「あやしい絵展」の感想にも書いたけれど、2人の行く先には悲劇しか想像できないのに、何故かそれが幸せに感じてしまう。男性の悲壮な決意を感じさせる背中、その背中に寄り添う女性は男に全てをゆだねていて、その切ない表情がとても色っぽい。圧倒的な2人の世界。これはスゴイ!
吉田博「朝霧」
今年話題の企画展の1つだった「没後70周年 吉田博展」(記事はコチラ) この企画展で自分が一番好きだったのが今作。吉田博(Wikipedia)は版画家なのだけど、これは初期の肉筆画。朝霧を描くのにこの色使いというのも惹かれた理由。ついつい明るくというか、パステルっぽい色を使いがちな気がするけれど、このボワッとした感じがすごく好き。地味な作品なのだけど、とても惹かれる。
吉田博も北野恒富も渡辺省亭も今年初めて知ったし、今展でも満谷国四郎を知った。今後も機会があれば見てみたい画家たち。まんまと山下先生の術中にはまっている気がするけれど、それがとても楽しい😍
見たのが閉幕ギリギリで、記事書くのも遅くなってしまったので、会期終了してしまった💦💦 これはホントに素晴らしいコレクションだった! よくぞ集めてくださいました!!
とても見やすい配置で、そんなに混んでいなかぅたこともあり、じっくり見ることが出来てとても良かった。素晴らしい企画展だった。
🎨コレクター福富太郎の眼 昭和のキャバレー王が愛した絵画:2021年4月24日ー6月27日 @東京ステーションギャラリー
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