12日の敦賀「前泊」から明けて13日。前日の雨雲は東に去り、晴れ間も見えるようになった。やれやれ。
13日は朝から「鉄」的活動を行った後、敦賀の市内を散策。交通・物流の要衝である町の歴史を楽しんだ後に向かったのは、敦賀総合運動公園野球場。今季2試合目となるプロ野球BCリーグの観戦で、この日の組み合わせは福井ミラクルエレファンツ対富山サンダーバーズ。後期シーズンもそろそろ終盤に向かい、石川ミリオンスターズと北陸地区優勝を争い富山に、今年も苦戦続きのシーズンとなっている福井が挑むという図式。
前日は「ルートインホテル敦賀駅前」に宿泊。このホテルはBCリーグのスポンサーであり、試合の前日または当日に宿泊する場合、フロントに申し出ればBCリーグの入場引換券をもらえる企画を行っている。経営状態が特に苦しい福井球団の試合となれば当日券を「現金」で支払うのがもっともプラスになるのだが、そこはまあ、関西からやってきたということで何とかご理解のほどを・・・・。
ここ敦賀でも年間何試合か行われているようだが、若狭地区だけではなく福井市内や鯖江などからも観客が訪れているようだ。同じ県内ということで、高速道路を使えば短時間で来ることもできる。私の周りにもそういうところから来たとおぼしきおっちゃんたちが陣取り、試合中しきりに野次を飛ばす(その中にあって、わざわざ兵庫県から一般道を通って前泊してやってくるヤツって一体・・・?)。
話の様子では年間相当数の試合は訪れているようで、県外の試合にも結構行っているようだ。試合中もなかなか言いえて妙なところもあったので、今日の試合はおっちゃんたちの野次を解説代わりに選手を見ることにしよう。
両翼97m、中堅122mとなかなか立派なつくりをしている。スタンドは中央部分が一人ずつの腰掛、内野の奥のほうがベンチシート、外野は芝生席だが、いずれもゆったりと観戦できる。また、周辺は稲刈りの終わった福井米の水田地帯。涼しげな風・・・というよりちょいと強すぎる風がグラウンドを吹き抜ける。応援団が観客席の上段に旗を立てているがそれが「空に鳴る鳴る翻る勝利の旗」状態になっている。いろんな風情が味わえるのが屋外球場、地方球場めぐりの楽しみである。
福井チームは昨年の藤田平監督(元阪神の名球会バッター)が紀州レンジャーズの監督に転身したのを受け、選手兼任だった天野監督が指揮を執る。昨年はごつい感じの打者や、ジンバブエ出身のパワーヒッターなどを擁していたのだが、天野監督の方針で半数近くの選手を入れ替え、足のある選手、速球の投げられる投手を集めたチームづくりを目指しているが、同じ北陸の石川、富山にはまだまだ及ばないところがあるようだ。
試合開始は16時。やはり夏の球場にはコレ・・・と行きたいところだが、今回はいつもの味とはちょいと異なるバージョンにて味わう。やはりクルマで来ているしな・・・・。この手の飲み物はだいたいこんな味なのだろうが、ちょっと甘味が強いかなという気がする。「ノンアルコールのドライビール」なんてのが出たら面白いと思うのだけど。
試合前の特別なイベントはなく、16時に試合開始。富山からやってきた熱心なファンが、緑の衣装をまとってのラッパ応援を繰り広げる。福井の先発は笹村。上半身の力で軽く投げるようなフォームだが、序盤は打たせて取る投球で富山打線を抑える。
一方の福井打線。初回、先頭の坂元が内野安打(ショートの悪送球だが・・・)で出塁、送りバントの後、3番・中山が右中間へはじき返す。理想的な攻撃で1点先制。件のおっちゃんたちも「今日はなかなかやるやんけー」と上機嫌である。
ところが4回表の富山の攻撃。四球のランナーを一塁に置いて、3番・優士がエンドランを決めて一・二塁間を抜けるチーム初安打。続く4番・恭史が二塁の脇を抜けるヒットで1対1の同点。
さらに5番・町田があわやホームランかというライトへの大きな二塁打を放ち、2点追加。このあたりの集中打はさすがのものだ。一方の福井ファンのおっちゃんたちの機嫌が悪くなり、この辺りから野次の数が多くなる。
福井は直後の4回裏に5番・内田のタイムリーで1点を返すものの、富山の先発・田中に後続を断たれる。一方、これまで好投を続けてきた笹村も集中力が途切れてきたのか、5回表にはヒット1本と四球2つで満塁のピンチを迎えると、ここでキャッチャーも捕れない高さの大暴投をやらかす。これで4対2、続く優士の内野ゴロの間にもう1点追加となり、5対2となる。
5回を終了した時点でナイター照明が点灯される。ちょっと明るさが足りないかなとも思うが、地方球場の規格ではこのようなものだろうか。薄暮の時間帯というのは独特の明るさで、不思議な気持ちに襲われるものだ。
このままズルズルと行くかと思われた試合だが、笹村の後を受けた加藤、岩井という投手が好投を見せ、打線の反撃を待つ福井。8回裏に富山2人目の萩原(先発要員だったのが、終盤に来て大事なリリーフもこなすようになった)から1点を返し、なおも2死2・3塁と一打同点のチャンスを迎える。一塁側からの声援の声もより一層大きくなるが、6番・内田があえなく見逃し三振。「見逃しはねえだろ!」という野次が飛ぶ。やはり今日も福井は勝てないのか。
ところが、「独立リーグの試合は9回に何が起こるかわからない」という、自分なりの勝手なジンクスを持つ者が観戦しているのである。2点差で9回ならまだどうなるかわからない。福井のファンも熱心なところがあり、9回裏は一塁側のほとんどの観客が立ち上がり、「俺たちの~誇り~千葉マリーンズ~」で知られるドラゴンクエストの歌を唄い、手拍子で必死の声援を送る。
だからかどうか。先頭の代打・YASUがヒットで出塁。続く慶家(けいや・地元から大応援団が来ていた)も続いて無死1・2塁。次は俊足で小技も利きそうなタイプの9番・丸木。2点差を考慮してまず送りバントで来るところ。
ところが。ここでまさかのキャッチャーへのファウルフライで1死、続く坂元が四球で満塁のチャンスを作るも、後続が萩原に抑えられて結局無得点。終わってみれば5対3、5安打の富山が9安打の福井との接戦をものにしたということになる。
「バントの差や!」というのがおっちゃんの声。この日の福井は毎回のように先頭打者を塁に出したが、送りバント作戦が3度失敗、併殺が3つというミスで負けたようなものである。少ない安打ながらチャンスをきちんとモノにした富山との差がここではっきりと目にされた。
それでも、この日球場に足を運んだ500人あまりのファンにとっては見ごたえと選手の執念が十分に伝わった試合のようで、両チームの健闘に惜しみない拍手を送っていた。私も「ジンクス」の継続はなかったものの、こういう試合を目の当たりにすることができたのも、わざわざ訪れただけの価値があるというものである。
富山は優勝争い(また「独立リーグ日本一決定シリーズを観たいですな)、そして福井は選手の自信つくりのための残り試合を懸命にプレーしてみたいものだと思った。それがリーグの底上げにもつながることなので、大いに頑張ってほしいものである・・・・。