まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

駒ケ岳と噴火湾

2009年09月22日 | 旅行記A・北海道

Dscn359120日、朝6時。函館線の鹿部回り長万部行きの1両の気動車は、10人あまりの乗客を乗せて函館駅を出発した。その中には私の姿もあった。

前夜、「明日の行程をどうしようか」というのを考えていた。この日の宿泊地は室蘭線の東室蘭駅前のルートインホテル。鈍行列車を乗り継いで東室蘭に手ごろな時間に着くには朝の函館の街を散歩した後で10時44分発の森行きで発てばよいということで計画していたが、前夜の夜景の風情で楽しんだことだし、少し前倒しで函館の朝市をのぞいてから8時14分発の長万部行きに乗ろうと決めていた。

Dscn3592ところが朝起きてみて「朝市も別にいいかな」という気になった。函館はこれまでにも訪れた街だし、逆に今回の未乗車区間の室蘭線のエリアは初めてのところだから少しでも早く近づこうということにした。朝食はコンビニでパンとサラダを買い求めてホテルの部屋で済ませ、朝6時発の列車の客となったのである。函館線のこの区間に日中乗車するのも学生の時以来だ。

函館の市街地を抜けると周囲は広々とした田畑になり、少しずつ勾配を上げる。この日も朝から秋晴れで、遠くに函館の市街と、津軽海峡の様子も見ることができる。函館山から見る函館の夜景はあまりにも有名だが、遠くなるが逆方向からの函館の夜景というのはどんな姿何だろうかと想像する。

七飯からは線路が二手に分かれる。途中駅のない通称「藤城線」という区間を15分ほどかけて上る。気動車のエンジン音が高く響くところ。そして長いトンネルに入る。

Dscn3595そのトンネルを抜けると、ハッとしたかのように左側の窓に湖の光景が広がる。大沼・小沼のうちの小沼である。そして、その向こうにくっきりと見えるのは駒ヶ岳。鉄道での旅の面白さを感じさせる車窓である。車内は観光客らしき姿も多かったが、一斉にそちらの窓のほうに視線をやる。

Dscn3603大沼で列車行き違いのため10分ほど停車。跨線橋に上がると駅の向こうにそびえる駒ケ岳の姿がくっきり見える。この構図は特急で通過しただけでは見ることができない。

一度駅舎のほうに出ると、一人の青年から「北斗星って何時くらいに通過しますか?」と尋ねられる。ホームや景色の写真を撮っている私をその筋の客と認めてのことだろう。正確な時間はわからないが前後の停車駅から推測するに7時すぎくらいだろうか。駒ケ岳とブルートレインの組み合わせ。ちょっと見てみたい気もしたがこのまま列車で先に進むことにする。

Dscn3606線路はここでまた二手に分かれる。大沼公園を直線で走る「駒ケ岳回り」と、海沿いの鹿部経由の「砂原回り」。「駒ケ岳回り」は勾配が急ということと、戦時中の輸送力増強のために、距離は長くなるが勾配が緩やかで済む「砂原回り」が後から建設された。駒ケ岳の西側を通るか、東側を通るかの違いもある。私の乗っている列車は後者の「砂原回り」。左側に駒ケ岳の稜線、右側やや遠くに噴火湾の水平線も見えるという、なかなかスケールの大きな車窓となる。朝の光線がまぶしい。

Dscn36137時34分、噴火湾に面した森駅に到着。8時05分まで長時間停車する。「いかめし」で有名な駅だが、さすがにこの早朝では売っていないだろう。先ほどの「北斗星」は大沼公園回りですでに行ってしまった後。

Dscn3623さて私はここで長万部行きを下車し、先に発車する特急「スーパー北斗1号」に乗り換える。プランニングの中で、少しでも長く鈍行で旅したいということと、運転本数の少ない区間を効率よくカバーすることを両立するために、一度乗車したことのある森~長万部間を特急でつなぐことで、初乗車の室蘭線は1本早い鈍行(その次は4時間後までない)に乗ることができるという寸法だ。

その特急、連休中のこととて自由席はもちろん満席。デッキにも大勢の立ち客がおり、私もなんとかドアの窓に近いほうに立つことができた。長万部まで35分の乗車だが、これが「振り子式」の車両で、カーブの多い区間でも減速を抑えて高速で走り抜けることができる構造のもの。メカのことはよくわからないが時折「カシャーン、カシャーン」という音が聞こえるのは「振り子」が何か作用しているのだろうか。

Dscn3622それにしても高速でカーブを走り抜けるのだから、立っていると揺れのせいで身体を持っていかれそうだ。スピード「感」ということになれば新幹線以上のように感じる。思わず「スピード違反や!」と叫びそうだ。車窓の合間に噴火湾も見ることができるが、さっそうと駆け抜けていく。

Dscn36328時15分、長万部着。列車が到着してホームに下りると逆に何だかほっとしたものを感じた。「おしゃまんべ」の駅名標を見て、関西にはないその語感に、「遠いところに来てしまったなあ」と思う。次に乗車するのは9時05分発の東室蘭行き。それまで時間があるので一度改札口を出る。学生の頃に長万部駅を通った時は冬の風が吹いており、待合室でストーブが焚かれていたのを覚えているが、この日は秋のさわやかな風が吹く。少し時間があるので駅前通りを歩く。5分もすれば国道5号線に出る。その向こうは砂浜が広がる。噴火湾だ。

Dscn3629海岸線の向こうには駒ケ岳のシルエットが見える。かなりの距離を走ってきたように思うが、案外近いものなのか、それだけ空気が澄んでいたということか。

Dscn3633これからは「海線」沿いに室蘭まで向かうことになる。さてここからが初乗車区間である。・・・ということで、これで景気づけて・・・・。(続く)

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夜の函館散歩

2009年09月22日 | 旅行記A・北海道

Dscn351019日、15時過ぎに函館駅に到着。雲もほとんどない、カラリとした空気が旅人を出迎えてくれる。気温も20度くらいと少し冷えるかなという感じがする。関西はまだ夏日が続いている中、長袖姿で出てきて正解だった。陸路を9時間かけて(自宅を出た時間からすればもう1時間追加になるが)はるばる来たのだなと実感する。

駅前のホテルにチェックインし、しばらく休憩して17時になったので駅前の飲食店街へ。函館に来るたびに入る店を変えているのだが、いずれの店も素材できちんと勝負しており、港町らしい海の幸を楽しむことができる。まあ難を挙げるとすれば「値段は結構する」というもの。普通、現地に来れば安く食べられるものというイメージがあるが、そのへんは「観光地価格」とでもいうのか。

Dscn3518今回入ったのは松風町の「いか太郎」。「時価」の活イカ料理と、「サッポロクラシック」を出してくれるところがポイントになった。

というわけで、その「時価」はというと、1,880円。これは価格として妥当なのかどうか。それでもまあ、函館の活イカというものは初体験なので、ここは行っておくことにする(イカはカロリー的にも優等生だし)。

Dscn3516早速こちらを注文。ゲソの部分をつつくとまだ反応がある。スーパーなどで刺身や寿司ネタで売られているイカと比べて身は透明。歯ごたえとのどごしを味わう。

Dscn3514この他にイカのルイベ、ホッケ焼などの味を楽しみ、気持ち的に落ち着いたものを感じる。凝った料理というよりは、素材の味を十分に楽しむことができた(食事療法的には今日はお休みといっていいかな)。

食後は運動療法ということで、港のあたりを散策する。函館といえば函館山からの夜景が有名であるが、その夜景を作り出す港町の建物を観て回るのも面白い。

Dscn3526まずは駅にほど近い摩周丸へ。「JNR」のマークが誇らしげにかかげられている。現在の若い人にはこのロゴも「何コレ?」というところなのだろうが・・・。青函連絡船が廃止されて20年以上が経過するが、港町のモニュメントとして、歴史の生き証人としていつまでも残してほしいものだ。

Dscn3537続いては金森倉庫群。周囲はウォーターフロントということで大勢の観光客、カップルで賑わっているところ。食事はすでに済ませているのでここは外からの建物を眺める。淡いランプの灯りがレンガに反射してムードを盛り上げてくれる。

Dscn3531倉庫群の夜というのも妙なもので、この建物が現役で使われていた当時は、倉庫群など夜は真っ暗で殺風景なところであっただろう(それは、現在の倉庫群を見ればわかるところ)。それが夜の賑わいを見せるところになるのだから、時代が変われば建物の役割も変わり、街の風景も変わるところだ。

そしていよいよ函館山へ。時間も19時を回り、大勢の観光客がロープウェイ乗り場に列をなしている。ロープウェイといっても100人以上が一度に乗れる大型のものだが、乗車までそれを2本ほどやり過ごすほどの賑わい。

Dscn3548今年は函館が開港して150年という。開港150年といえば横浜もそうで、記念の博覧会をやっているが客が不入りと聞く。記念イベントは結構だが、横浜レベルになれば特別なことをやらなくても十分魅力のある街と思う。高い入場料を取る博覧会をやらずとも、オープンな形で観光客を受け入れればよいのではないだろうか。

そんなことを思いながらロープウェーを上り、展望台へ。秋の澄んだ空気の中、眼下に広がる光景には余計な説明はいらないでしょう。

Dscn3560Dscn3564函館山にはこれまで数回訪れているが、その中でももっともよいコンディションでの見物となった。

Dscn3570風に吹かれ、観光客にもまれながらの見物を終え、再び街中へ。ライトアップされた教会群や坂道をしばし散策。

Dscn3579でもまあ、カップルなど多い中、男一人で散策するというのも、坂道を吹き抜ける秋風が余計に身にしみるような・・・・。

Dscn3587ロシアの大学の日本校の建物を見る。こういうキリル文字を見ると条件反射的にカメラに収めてしまう。具体的にどこがどうというのはなかなか上手く表現できないのだが、函館まで来るとこういう「大陸」の存在というのが東京や大阪などと違って見えてくる感じがする。いろいろな街を訪問させていただく中での感じ方というのかな。

Dscn3589しばらく街歩きを楽しみ、最後は市営の谷地頭温泉入浴で締めることにする。実はこの日宿泊のホテルのプランに「谷地頭温泉入浴券つき」というのがあって、回数券を手にしての温泉行きである。ちょうど谷地頭行きの路面電車が出た後だったので、十字街からさらに歩くことに。20分ほど歩いてさらに歩数を稼ぐ。

43~44度とちょいと熱めだが、北国の湯としてはこのくらいがちょうどよいところなのだろう。鉄分を含み、ちょいと茶褐色をしているのがいかにも温泉らしい。さっぱりすることができた。

Dscn3546ホテルに戻り、明日の旅程を再度検討。最初は函館散策の午前の部を楽しみ、昼過ぎの列車で移動する計画だったのだが、朝市の食事だけ楽しんで少し早い列車で移動しようか・・・とか。明日からが「乗りつぶし」の行程となる・・・・。(続く)

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