まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

女人禁制の道場

2007-04-13 | 日本映画
 目覚まし時計より早く、私の眠りを破くものに近頃、私はプチノイローゼ気味です。
 突然始まり、延々と続く大騒音。そう、共○党議員の街頭演説です。
 あうう、い、いま何時なんだよ~と、枕元の時計を取って見ると、朝7時になったばかり。ひどい...何かのイヤガラセですか!?私のように平日休みだったり、深夜勤務で眠りについたばかり住民は、いっぱいいるはず。どんな立派なことを口角泡で訴えても、時と場合によっては、とても国民のことを考えているとは思えない、独善的暴挙と化すこともある、なんてエラい先生には、及びもつかないのでしょうか。朝っぱらから塗炭の苦しみを味わわせてくれる政治家を、どうやって信じればいいの...
 
 お松の独り邦画男前映画祭③
 「剣」
 三島由紀夫の短編を、市川雷蔵主演で映像化した作品。
 大学の剣道部。主将の国分は、ひたすら剣の道を邁進する、ストイックで高潔な青年。そんな彼を、神のように崇拝する後輩たち。そして、屈折した反発を抱く同輩の賀川。国分を、自分のような卑俗な人間に堕としたいと熱望する賀川は、国分に想いを寄せる娘に、彼を誘惑するようけしかけるが...
 あいや~!全国のYAOI諸君、これ必見よぉ~!まさに、おとこ祭り映画!“ドキ!男だらけの剣道合宿!”な~んて副題、つけたいほど。
 もう、キャラも展開も設定も台詞も、三島ワールド炸裂。同性愛の話ではないのに、何もかもにコッテリ濃密な男色ムードが漂っていて、むせ返りそうになります。
 映画のほとんどが、血の汗流せ涙を拭くな~♪な、まるで苦行のような剣道の稽古シーン。苦しさを通り越し、激しい快楽をぶつけ合っているかのような、汗まみれの若い男たちの姿が、何だかエロティック。竹刀をビシバシ突き合わせるのって、変な想像を逞しくさせるよなあ。
 稽古場だけでなく、風呂場で部員たちが全裸で、取っ組み合いの喧嘩をするシーンとかも、狙ってるとしか思えない。男同士、すっぽんぽんで組んずほぐれつ状態だなんて、見方によってはセックスしてるようにも...さらに、ふんどし!やパンツ一丁になって、わらわらと海で大ハシャギとか。YAOIよりも、そっち系の殿方に美味しい映画かも?
 肉体的な同性愛はないけど、精神的には完全に、男同士の耽美な愛憎劇です。
 大学の剣道部という、狭い小さい世界で繰り広げられ、せめぎ合う、青年たちの葛藤や苦悩、崇敬、嫉妬...女以上にドロドロしてるけど、そこには女が匿ってるような狡猾さとか冷酷さがないので、見ていて姑息でイヤらしいなあ、とか醜いなあ、とは思えない。よほど真剣で純真でないと、ここまで誰かを崇めたり、嫉んだりできないよなあ、と眩しくさえ思える。
 とはいえ、主人公も剣道部員たちも、フツーじゃない、ていうか、かなり異常です。
 部活というより、まるで軍事訓練のような(しごき、なんてもんじゃない)超スパルタ稽古。清々しいというより、怖いです。それに苦しげに、でも嬉々として励む部員たちが、自分を痛めつけて喜んでるようにも見えて...
 国分主将を崇拝する後輩(劇団ひとり似)の言動が、怖笑。
 主将みたいに髭が濃くなりたい!と、生えてもないのに毎朝髭剃ったり。国分の微笑を真似ようととしたり。極めつけは、賀川たちが禁じられた海水浴に行っても、主将の言いつけを守って独りだけ残ってたのに、自分だけ良い子な態度をとり、そのせいで主将に卑劣な奴と思われるくらいなら、死んだほうがマシだ!と、わざわざ海に行ったフリをしたり。もう国分教の信者って感じです。もし教祖・国分が彼に、賀川をポアしろと命令したら、迷わず実行しそうなヤバさです。
 いちばん興味深いキャラは、やはり賀川くん。屈折してます。国分を悪く言ったり、陥れようとしたりするんだけど、それらは全部、国分が好きで好きでしょうがないから!ってのが明白で、笑えます。憧憬と表裏一体の憎悪。単なるライバル心や敵意を超えています。女から、国分を誘惑した経緯を、熱心に聞き出そうとする賀川くん、もちろん興奮してるのは、女ではなく国分の濡姿を脳裏に妄想してるからに違いないって感じが、隠微なんです。
 賀川役の川津祐介が、いい味!ぶっとび怪作「卍」でも、ちょっと似たような精神倒錯男役だったっけ。プチ変態な男前の役ってのが、彼のオハコだったのでしょうか。
 女との房事後の枕話シーン、片手を上げてる川津祐介の腋毛が、ずっとアップで映ってる!腋毛が、あんなに長く撮られてるシーン観たの、初めてかも。E男の腋毛に萌える私も、変態でしょうか...
 後輩の、国分みたいになりたい!賀川の、国分を俺みたいにしてやる!度の過ぎた同化への熱望と煩悶は、ほとんど狂おしい恋の病なのです。
 男たちを狂わせる?運命の男、国分主将。ナンダカンダで、彼が最強に狂ってるんです。
 強く正しく生きる、さもなければ死!がモットーな国分。その、あまりにもストイックで高潔な言動&思考が、かなり狂信的で怖い。快楽を求めることや、将来の幸せを考えることさえ、彼にとっては醜く汚いこと。汚れなければ世の中生きていけないぞ、と諭す父親に彼が言う『汚濁は失敗です!』という台詞が、強烈です。
 国分の烈しい求道は、確かに清冽で美しいけど、そんな風に生きられない周囲の人間を、醜い卑しい俗人と見なすのは、かなり独善的で傲慢でもある。そんな時、あいつは何も言わず微笑するんだ!と、憎しみを募らせる賀川。その微笑を、美しいと讃える後輩たち。ああ~三島由紀夫ならではって感じの、お耽美描写!
 国分くんは、間違った時代に生まれてしまった侍なんだよなあ。昭和に、武士道は通じません...それゆえに、あんな最期を迎えてしまった国分。そこに、三島由紀夫の最期が重なります。国分とか、「奔馬」の勲は、三島が理想とする青年像だったのでしょう。
 国分役の市川雷蔵が、すっげE男だった~
      
 まさに、漢(おとこ)って感じ。硬派って感じ。今の人気男優って、ワイルドって言われても、どっか人工的な甘ったるさがあるけど、雷蔵は精悍さが研ぎ澄まされてる。かといって、暑苦しいギラギラ感などなく、どこか冷厳としてる。まさに、武士&軍人が持つ凛・爽・清・雄!すごい美男!ってわけではないけど(たまに、内藤剛志に見える瞬間も...)、猛々しさも憂愁も、男らしくて素敵です。そして、美しい声にもウットリ。
 
         
 
 
コメント (2)
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