まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

リンリー警部① 禁忌が巣食う家

2008-04-28 | 欧米のドラマ
 イギリスのTVドラマシリーズ「リンリー警部 捜査ファイル」の第1作「裁きのあと」を観ました。
 伯爵の称号を持つトマス・リンリー警部は、別れた恋人が自分の親友と結婚して意気消沈中。そんな中、農村で牧場主の老人が首を切り落とされるという陰惨な殺人事件が発生。上司のイヤガラセで、鼻つまみ者である叩き上げの女刑事バーバラ・ヘイバースと組まされたリンリーは、彼女とともに捜査に乗り出すが...
 エリザベス・ジョージの原作「大いなる救い」は、ほんとドロドロした人間関係が怖くて面白いミステリーなので、そのドラマ化は楽しみ半分、あのおぞましい話をTVで映像化できるの?!やっぱアブない部分は無難に脚色されてるんだろうなあ、という薄い期待を抱きつつ観ました。
 首なし惨殺死体。重要参考人である被害者の次女は過食症の醜い娘で、ショックから口がきけなくなってしまっている。被害者の妻と長女は、数年前から行方不明。事件の前に村の祠で発見された、新生児の死体。やがてリンリーとヘイバースがつきとめる、忌まわしい秘密と恐ろしい真実!
 扇情的で猟奇的な事件や舞台設定、事件背後の複雑に歪んだ人間関係は、ちょっと横溝正史っぽいです。いかにも日本的な、湿り気のあるおどろおどろしさや暗さはなく、冷めて乾いた感じなのは、イギリスというお国柄でしょうか。
 家族という閉鎖的な世界で起こる悲劇は、他者には気づかれにくいので、食い止めることも助けることもできないのが、本当に恐ろしい。被害者みたいな鬼父って、実際にもいるんだろうなあ、とゾっとします。こんな男の娘に生まれてくるなんて、前世がよっぽど悪かったのでしょうか。何かの罰としか思えない。
 原作では事件の重大な遠因となっている性的虐待が、ドラマではやはり省略されていました。悲劇の色が薄まったみたいで、ちょっと肩透かし。
 秘密と悲劇で陰鬱なムード漂う村ですが、イギリスの田舎ってホント美しいですよね。古びた荒廃した建物さえ、情緒があって。
 リンリーとヘイバースのコンビが、なかなかユニークです。
 貴族&高学歴、上品で知的なところを、高慢とか気取ってるとか、常に悪いほうにとられて敵視されるリンリーが可哀想。すごく優しくて思いやりのある男性なのに。イギリスの階級社会の厳然さが、なにげなく描かれています。面白いのは、差別偏見を受けるのが貴族のリンリー、という点。何かというと、貴族さまは我々庶民とは違いますからね!と、同業者や事件関係者が示すネチネチ・チクチクした厭味や反感に悩まされるリンリー警部。逆差別?
 リンリーを演じるナサニエル・パーカーは、原作を読んで私がイメージしてたよりは、ちょっと濃い感じですが、優しそうで上品なところは、リンリーのキャラに合ってるかも。
 有能で勝気な女刑事ヘイバースは、典型的な労働者階級出身。偏見とコンプレックスから、リンリーに心を開けずにいた彼女が、彼と衝突を繰り返しながら、しだいに信頼と尊敬を抱き始め、かけがえのない相棒となっていく過程も、うまく描かれています。ヘンにロマンスな方向にならないところが、二人の良いところ。
 ヘイバース役のシャロン・スモールは、ミシェル・ファイファーを地味にした感じ?美人じゃないけど、ほんとに頭が良さそうで気が強そう。
 次回の「寄宿舎殺人事件」も楽しみ!これの原作「名門校 殺人のルール」も、めちゃくちゃドロドロしてます!YAOI色濃厚だし♪日本のバカみたいな2時間ドラマや、ありえね~!な非現実的な刑事ドラマに飽き足らない方々には、ほんとオススメ!
 
 
 
コメント
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