


昨年のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞したドイツ映画。
ベルリンの壁が崩壊する5年前の東ドイツ。国家保安省のヴィースラー大尉は、作家ドライマンと彼の恋人で舞台女優のクリスタが反体制的であるという証拠を掴むよう命じられる。二人の生活を盗聴するヴィースラーは、いつしか彼らの自由な思想や愛に心動かされ...
つい最近まで東欧では、こんな非道で陰険なことが堂々とまかり通ってたんですねえ。常に見張られ、生活も考え方も掌握され管理され抑圧されてしまうのが当たり前な国。反体制!と疑がわしい人々への、シュタージ(国家保安省)の尋問や圧力、盗聴や盗撮、そして横暴なガサ入れが、ドイツ映画らしい硬質な雰囲気の中、リアルに冷ややかに描かれていて怖い。イデオロギーだけでなく、あいつ気にくわねー!とか、あの女とヤリてえ!とか、出世のため♪とか、権力を持つ俗悪政治家や欲の深い役人の汚い恣意が絡んだ企みによって、自由を奪われ人生を弄ばれ才能を踏みにじられるなんて、ほんと信じられないです。あってはならないことですよねえ。
冷たいロボットみたいだったのに、いつしかドライマンとクリスタを守り庇うようになる、ヴィースラー大尉の孤独と変化が切ないです。ラスト近く、西側へ渡った暴露記事を書いた証拠となるタイプライターをめぐるドライマン、シュタージ、そしてヴィースラーの攻防は、サスペンスちっくでハラハラ。人間にとって最も大切なものは、自由と愛だということに気づいたヴィースラーが、命を賭けて守ろうとしたその二つのうち一つは、悲しく無残な形で失われてしまうけど、もう一つは救うことができたと分かるラストは、しみじみとした感動を与えてくれます。
ドイツをはじめ、かつてはガチガチの共産主義だった国では、スパイだったあいつのせいでヒドい目に遭った!なんて、わだかまりや恨みが残ってそうですね。それよりも怖いのは、今もまだシュタージみたいな存在が許されてる国があるってことですよねえ。
ミーハーとしては、なじみのあるスターが出てないのがちょっと寂しい。ドライマンがトーマス・クレッチマンとかダニエル・ブリュールだったら、さらに高得点だったかも。