まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

刑事一代(後編)

2009-06-23 | 日本のドラマ(単発)
 「刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史」の後編...

ROUND 3 吉展ちゃん誘拐事件
 4歳の村越吉展ちゃんが、忽然と姿を消す。やがて身代金を要求する脅迫電話が。警察は、身代金を犯人に奪われるという失態を犯す。事件発生から2年が経っても、吉展ちゃんの行方と犯人は杳として分からぬまま。そんな捜査本部に、平塚と石崎が加わることに。容疑者の中から、刑務所に服役中の小原保という元時計修理工に平塚は目をつけるが...
 吉展ちゃんの前に現れる、不気味な男の影...事件の始まりから、何か異様な緊張感に満ち満ちていて、一瞬たりとも画面から目が離せません。吉展ちゃん役の幼児が、これまた超可愛いの。こんないたいけな子が...と思うと、何か観るのが辛くなりました。
 このドラマのメインイベントといえる、平塚八兵衛VS小原保の壮絶な闘いの火蓋が切って落とされます。まさに生命を削り合うかのような攻防!
 狭い取調室で繰り広げられる、緊迫した心理戦に圧倒されます。社会の最底辺で生きてきた小原は、怖い刑事の尋問にビビって素直にゲロるタマではありません。その一筋縄ではいかないフテブテしく荒んだ心に、平塚同様視聴者の背筋も凍ります。

 小原保役は萩原聖人。彼の演技が、このドラマのベストパフォーマンスかも。素晴らしいの一言です。もう目つきと雰囲気が、生きながらに腐ってるって感じ。あの暗い荒廃感&破滅感は、容易に出せるもんじゃないと思う。自供シーンは、神がかり的だった。視聴者同様、目の前にした共演者も息を呑んだのでは。自供後の、まさに悪い憑き物が落ちたって感じの彼も印象的でした。
 それにしてもハギー、若い頃から良い俳優だなあと思ってけど、これほどとは!それに彼、あんまし老けてないですよね。今も顔は可愛い。人を食ったノラリクラリ福島弁も、何か可愛かった。ギャンブル狂い、女泣かせ、暴力癖etc.ハギーご自身もヤバい男ですが、秀でた役者はどっか破綻してるもんなんですよね。今後も、犯罪者にならない程度にコワレて、それを芸の肥やしにしてねハギー!今回のような良い仕事をまたしてほしいけど...遊ぶ金を稼ぐために、つまんないドラマや映画にもジャンジャカ出てくれそうなところが、ファンとしては嬉しくも悲しいハギーです。
 小原の老母(名女優の岩崎加根子さん、わずかなシーンだけど胸えぐるインパクト!)が雨の中、保を産んだ私を許してください、と平塚に土下座して号泣するシーンが、悲痛すぎて...もし私が凶悪犯罪を犯したらmy motherも、と想像して胸が苦しくなりました。
 若い刑事役の山本耕史、ハギーには遠く及ばないまでも、抑制の効いた演技に好感。山本くんのオデコ、ピカーッいつ見ても電球みたいで眩しすぎる!
 小原保みたいな役って、演技に自信がある30代の男優なら、誰でも演じてみたい役なのでは?このドラマに出てた若手(池内博之、山本耕史、3億円事件のパートで出てくる長谷川朝晴とか)たち、俺がやりたかった!と思ったのではなかろうか。残念ながら、コータローには絶対×100無理ですが...
 福島の田舎の人々が、ナニゲに秀逸だった。重大な証言をする男の子とか、小原の兄嫁とか。チョイ役だけど、佐々木すみ江が流石の存在感。
 取調室のパートは、舞台化しても面白そうですよね。吉展ちゃん事件に絞った内容で映画化も良さそう?
 
 ↑本物の小原保。凶悪犯には見えないですよねえ。悲しい顔...
 小原保についていろいろ読んでみたのですが...彼のやったことは万死に値するけど...同情はできないけど、今の狂った凶悪犯罪者には感じない、何ともいえない切ない気持ちを抱いてしまうんですよねえ。あの時代のどうしようもない貧困とか、足の障害とか、あれほどの重い暗い宿業を背負わされて、まっすぐに生きられるほうが不思議。だからといって、幼児殺しなど許されるはずもない。何で吉展ちゃんを殺しちゃったの?殺さずにいてくれてたら...吉展ちゃんだけでなく、自分まで殺すことになるぐらいなら、後で捕まって刑務所に入るだけのほうが、どれだけ誰にとっても救いになったことか。
 拘置所で短歌の才能を見出され、すぐれた歌人になった小原保。死刑執行の前に平塚へ遺した、真人間になって生まれ変わります、という言葉も悲しかった。死ぬことによって、新しい自分になる。小原の最期に胸が締め付けられます。
 でも...忘れてはいけないのは、小原ではなく吉展ちゃんこそが最も可哀相な存在、ということです。ご遺族の方々は、このドラマをどう観たことでしょうか。
 それにしても。身代金受け渡しで犯人を取り逃がすなんて、信じがたい警察の失態ですよねえ。平塚が洗い直す前の小原のアリバイ捜査も、めちゃくちゃ杜撰で唖然となった。
 ROUND 4 三億円事件
 白バイ警官を装った男に、現金三億円が奪われる。平塚も捜査に加わるが、事件も時代とともに変化したことを痛感することに...
 平塚最後の事件。時代遅れの老害扱いされ、事件も解決できず、失意と無念のうちに退職するまでが描かれています。でもホント、三億円事件も闇に包まれたままですね。いろんな説はあるけど...せっかく盗んでも使えない大金ってのも、何だか虚しいですねえ。
 捜査陣の中に、長谷川朝晴の姿もあって吃驚!台詞があるかないかな超チョイ役でしたが、可愛かったです♪
 ラストは...
 小原の墓参りに来た平塚は、死後も小原が罰のような孤独を強いられていることを知り、涙を流さずにはいられない。彼岸と此岸、恩讐を越えた絆もまた痛切です。田舎の畦道を、足を引きずりながら歩く小原の姿が、ほんと悲しかった
 退職からわずか数年後に、平塚は永眠。仕事で燃え尽きちゃったんでしょうね...
 知名度よりも実力重視のキャスティングに喝采こーいうドラマ、たまにでもいいので作ってほしいです!謙さんも、おかしなハリウッド映画で変な役もらうより、日本で良い仕事してほしい!
 隅から隅まで素晴らしい俳優の布陣でしたが、個人的に助演賞をあげるとしたら...
 最優秀男優賞・・・萩原聖人 (次点は高橋克実)
 最優秀女優賞・・・余貴美子 (次点は岩崎加根子)
 かな?
 どうでもいいけど、このドラマのキャストってキムタコの「華麗なる一族」とカブり気味?アイブちゃん、原田美枝子、山本耕史、六平直政、平泉成、それにハギーも。同じ豪華キャストなのに、華麗にはちっとも重厚さや胸に迫るものがなかったのはWHY?
 
 ↑おハギ忘れかけてた昔の男への想いが再燃、みたいな♪
 
コメント
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