「スペンサー ダイアナの決意」
1991年のイギリス。夫チャールズ皇太子との破綻した結婚生活に悩むダイアナ妃は、重い気鬱を抱えたままロイヤルファミリーがクリスマス休暇を過ごす離宮サンドリンガム・ハウスにやって来るが…
ダイアナさんが亡くなってから、もう25年も経つんですね。彼女の衝撃的な事故死のニュースを聞いた日のことは、よく覚えています。それよりさらに前の、彼女とチャールズ皇太子とのロイヤルウェディングも、日本に来日した時のダイアナフィーバーも、鮮明に記憶してます。美しく咲いて無惨に散ったバラのような女性でした。あまりにも人々に愛されるのも、人気者になるのも悲劇だな~と、何だかみんなに寄ってたかってグチャグチャにされてしまったような彼女の最期に、今も胸が痛みます。今やエリザベス女王も亡くなり、チャール皇太子が王になるなど、隔世の念を禁じ得ません。
ダイアナさんの華麗なる人生と悲劇は、まさに映画のヒロインにはぴったり。イギリス王室や貴族ものの映画やドラマが大好きなので、この作品もずっと気になってました。やっと観ることができたのですが、ちょっと思ってたような内容と違ってたのが驚き、かつ面白かったです。ロイヤルファミリーと最後に過ごすことになるクリスマス休暇の間、彼女がどう苦悩し葛藤したかを描いているのですが。ダイアナさんの懊悩、惑乱や錯乱ぶりがかなりニューロティックで、精神病院に入院レベルなんですよ。奇行や妄想、過食と嘔吐、徘徊に幻覚・幻聴、自傷行為など、そのメンヘラぶりはほとんどホラー。周囲のロイヤルファミリーやお仕えする人々が、それを目の当たりにしながらも冷たい目でスルーしてるのも、これが上流社会の冷酷さなのねと戦慄。愛と悲しみのプリンセス物語ではなく、追い詰められて精神を病んでいく女のサイコロジカルドラマでした。
社会や環境に馴染めない、どうしても適応できない。欺瞞と偽善に満ちた冷ややかな人間関係。自由のない窮屈な暮らし。常に監視、品定めの目線にさらされている息苦しさやプレッシャー。自分を押し殺して迎合、服従。王室と平民という違いはあれど、心が病んでしまうほどの不安や絶望は理解できます。ダイアナが勝ち気で感受性と自立心が強い女性だったのも、返って不幸だった。ダイアナが気の弱い鈍感な、何でもハイハイと従うほうが楽と思える受け身な女だったら、彼女にとっても王室にとっても幸せだった(都合がよかった)だろうし。劇中のダイアナを見ながら、適応障害やマスコミ報道に苦しまれた雅子さまのことを思い出しました。当時の雅子さまや皇室の方々のことを映画にするとか日本では絶対ありえないので、ヘレン・ミレンの「クィーン」とかドラマの「ザ・クラウン」とかが許されるイギリスって、いろんな意味でスゴいと感嘆。それはそうと。籠の鳥生活と言いつつダイアナ、割と自由に動き回ってたような。迷子になったのと突然フラっとカフェに入ってきて、客の一般人たちを驚かせたり。息子二人とケンタッキーでテイクアウトとか。雅子さまがもし同じことやったら、映画のイギリス人みたいなリアクションは日本人にはできないのでは。
イギリス王室・貴族もの映画&ドラマファンにはおなじみ、お楽しみの優雅で美しい上流階級の暮らしぶりにも感嘆。アメリカや韓国の金にあかせた成金とは、やっぱ全然ちがうんですよね~。壮麗なサンドリンガム・ハウスの高雅かつ重厚な内装や雰囲気、上品かつ贅沢な食事、優雅かつ厳格なマナー、一日に何度も着替える衣装、ほんと憧れる~けど、一瞬も気が抜けない休まらない。ダイアナじゃなくても疲労困憊します。それにしても。国民の税金で優雅に贅沢に暮らししている!と、厳しい目で見られることもある英国の王室や日本の皇室。国民が誇れる、大切に敬愛できる高貴な存在なら、国の力にも財産にもなれるので税金も惜しくはないのですが、こんな連中に我々の血税が!と顰蹙や嫌悪感を抱かせるようになっては、その存在意義を疑わざるを得なくなります。特権や何不自由ない生活は、国民の願う神さまのような清く正しい生活や行い、というパフォーマンスのギャラのようなもの、と思うのは不敬でしょうか。
アカデミー賞主演女優賞ノミネートも納得の、クリステン・スチュワート渾身の熱演が鮮烈です。
ダイアナ妃には似てないけど、そっくりさんモノマネ演技ではなく、クリステンの個性と魅力で創造したダイアナって感じでした。「セバーグ」でも精神ブッコワレてましたが、今回はイタさもヤバさも増してました。でも哀れな弱い女ではなく、壊されそうになっても屈しない戦う強い女。オンナオンナしてない媚びないシャープな演技や美しさで、キレイカワイイではなくカッコいい女優として独自のポジションを固めてるクリステン、ほんといい女優になりましたね。王室の保守的で古めかしいファッションも、クリステンが着るとモダンでスタイリッシュに。スタイル抜群で、特に足がきれいで長い!ロイヤルな装いやイギリス英語でプリンセスに化けてたけど、たまに吐く下品で口汚い台詞がアメリカンで笑えた。
ダイアナの息子たち、ウィリアム王子とヘンリー王子役の男の子たちが可愛かった!本物に何となく似つつも、本物よりかなり可愛い。特にウィリアム王子役の子。品があって優しそうで賢そうなイケメン。将来が楽しみな子です。ベテラン侍従役のティモシー・スポール、侍女役のサリー・ホーキンスも印象的な好演。サンドリンガム・ハウスがあるノーフォークの風景も、神秘的なまでに清澄で美しかったです。イギリスにますます行きたくなりました。
1991年のイギリス。夫チャールズ皇太子との破綻した結婚生活に悩むダイアナ妃は、重い気鬱を抱えたままロイヤルファミリーがクリスマス休暇を過ごす離宮サンドリンガム・ハウスにやって来るが…
ダイアナさんが亡くなってから、もう25年も経つんですね。彼女の衝撃的な事故死のニュースを聞いた日のことは、よく覚えています。それよりさらに前の、彼女とチャールズ皇太子とのロイヤルウェディングも、日本に来日した時のダイアナフィーバーも、鮮明に記憶してます。美しく咲いて無惨に散ったバラのような女性でした。あまりにも人々に愛されるのも、人気者になるのも悲劇だな~と、何だかみんなに寄ってたかってグチャグチャにされてしまったような彼女の最期に、今も胸が痛みます。今やエリザベス女王も亡くなり、チャール皇太子が王になるなど、隔世の念を禁じ得ません。
ダイアナさんの華麗なる人生と悲劇は、まさに映画のヒロインにはぴったり。イギリス王室や貴族ものの映画やドラマが大好きなので、この作品もずっと気になってました。やっと観ることができたのですが、ちょっと思ってたような内容と違ってたのが驚き、かつ面白かったです。ロイヤルファミリーと最後に過ごすことになるクリスマス休暇の間、彼女がどう苦悩し葛藤したかを描いているのですが。ダイアナさんの懊悩、惑乱や錯乱ぶりがかなりニューロティックで、精神病院に入院レベルなんですよ。奇行や妄想、過食と嘔吐、徘徊に幻覚・幻聴、自傷行為など、そのメンヘラぶりはほとんどホラー。周囲のロイヤルファミリーやお仕えする人々が、それを目の当たりにしながらも冷たい目でスルーしてるのも、これが上流社会の冷酷さなのねと戦慄。愛と悲しみのプリンセス物語ではなく、追い詰められて精神を病んでいく女のサイコロジカルドラマでした。
社会や環境に馴染めない、どうしても適応できない。欺瞞と偽善に満ちた冷ややかな人間関係。自由のない窮屈な暮らし。常に監視、品定めの目線にさらされている息苦しさやプレッシャー。自分を押し殺して迎合、服従。王室と平民という違いはあれど、心が病んでしまうほどの不安や絶望は理解できます。ダイアナが勝ち気で感受性と自立心が強い女性だったのも、返って不幸だった。ダイアナが気の弱い鈍感な、何でもハイハイと従うほうが楽と思える受け身な女だったら、彼女にとっても王室にとっても幸せだった(都合がよかった)だろうし。劇中のダイアナを見ながら、適応障害やマスコミ報道に苦しまれた雅子さまのことを思い出しました。当時の雅子さまや皇室の方々のことを映画にするとか日本では絶対ありえないので、ヘレン・ミレンの「クィーン」とかドラマの「ザ・クラウン」とかが許されるイギリスって、いろんな意味でスゴいと感嘆。それはそうと。籠の鳥生活と言いつつダイアナ、割と自由に動き回ってたような。迷子になったのと突然フラっとカフェに入ってきて、客の一般人たちを驚かせたり。息子二人とケンタッキーでテイクアウトとか。雅子さまがもし同じことやったら、映画のイギリス人みたいなリアクションは日本人にはできないのでは。
イギリス王室・貴族もの映画&ドラマファンにはおなじみ、お楽しみの優雅で美しい上流階級の暮らしぶりにも感嘆。アメリカや韓国の金にあかせた成金とは、やっぱ全然ちがうんですよね~。壮麗なサンドリンガム・ハウスの高雅かつ重厚な内装や雰囲気、上品かつ贅沢な食事、優雅かつ厳格なマナー、一日に何度も着替える衣装、ほんと憧れる~けど、一瞬も気が抜けない休まらない。ダイアナじゃなくても疲労困憊します。それにしても。国民の税金で優雅に贅沢に暮らししている!と、厳しい目で見られることもある英国の王室や日本の皇室。国民が誇れる、大切に敬愛できる高貴な存在なら、国の力にも財産にもなれるので税金も惜しくはないのですが、こんな連中に我々の血税が!と顰蹙や嫌悪感を抱かせるようになっては、その存在意義を疑わざるを得なくなります。特権や何不自由ない生活は、国民の願う神さまのような清く正しい生活や行い、というパフォーマンスのギャラのようなもの、と思うのは不敬でしょうか。
アカデミー賞主演女優賞ノミネートも納得の、クリステン・スチュワート渾身の熱演が鮮烈です。
ダイアナ妃には似てないけど、そっくりさんモノマネ演技ではなく、クリステンの個性と魅力で創造したダイアナって感じでした。「セバーグ」でも精神ブッコワレてましたが、今回はイタさもヤバさも増してました。でも哀れな弱い女ではなく、壊されそうになっても屈しない戦う強い女。オンナオンナしてない媚びないシャープな演技や美しさで、キレイカワイイではなくカッコいい女優として独自のポジションを固めてるクリステン、ほんといい女優になりましたね。王室の保守的で古めかしいファッションも、クリステンが着るとモダンでスタイリッシュに。スタイル抜群で、特に足がきれいで長い!ロイヤルな装いやイギリス英語でプリンセスに化けてたけど、たまに吐く下品で口汚い台詞がアメリカンで笑えた。
ダイアナの息子たち、ウィリアム王子とヘンリー王子役の男の子たちが可愛かった!本物に何となく似つつも、本物よりかなり可愛い。特にウィリアム王子役の子。品があって優しそうで賢そうなイケメン。将来が楽しみな子です。ベテラン侍従役のティモシー・スポール、侍女役のサリー・ホーキンスも印象的な好演。サンドリンガム・ハウスがあるノーフォークの風景も、神秘的なまでに清澄で美しかったです。イギリスにますます行きたくなりました。