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フレデリック・ワイズマン監督『動物園』

2006-11-09 17:39:08 | ノンジャンル
 蓮實重彦氏が絶賛するドキュメンタリスト、フレデリック・ワイズマン監督の'93年の作品「動物園」をWOWOWで見ました。2時間30分の長篇です。
 始めのうちは、動物園で何気なく見かける風景(動物、それをみる客)などのシーンが続くのですが、泳いでるトラ(初めて見ました)のシーンの後に始まる、サイの出産シーンから雰囲気ががらりと変わります。死産で産まれた子の救命活動が無駄に終ると、スタッフたちは嬉々としてその子の解剖(というより解体)に取り組み始めます。地面にゴロンと置いた死体の回りに、羊膜を広げて記念写真を取ると、スタッフは腹を割り、内臓を種別に取り出し、アスファルトの地面の上に広げて行きます。時々上がる笑い声。そしてサイの子の生首。残った体の部分はゴミのように焼却されます。その間、ナレーションは一切ありません。この辺になってくると、段々動物が可哀想になってきます。ゾウのショウ、別の池に移動するために捕らえられるワニ、身体検査を受けさせられるため麻酔で眠らされたゴリラ、それが虐待ではなく動物の健康維持のための行為だと説明するテレビのレポーター、蛇の餌になるために撲殺されるウサギ、オオカミの虚勢手術、ブタに怪我をさせた野犬狩りと死体の焼却。これらのことを、スタッフは楽し気に行います。
 その一方では、客は無邪気に動物と戯れ、餌をやったりして、あるいは動物をわざと怒らせて楽しんだりしています。
 ここまで見てくると、動物園での動物は生き物としてではなく、モノとして扱われていることが分かってきます。すべての動物園がそうだとは、もちろん言いません。しかし、少なくともこの映画で描かれている動物園の動物はあくまでも研究対象であり、愛情の対象としては扱われていません。
 そういえば、以前「人間動物園」という話を聞きました。人間がオリに入れられていて、それを動物が見て回るというものです。この話を聞いた時、動物園にいる動物たちの気持ちが少し分かるような気がしました。この映画も、ただ事実を伝えているだけなのですが、そんな気持ちになる映画です。