オリンピックで日本選手が出る試合しか見ない国粋主義者の自分に笑ったりしていますが、よく考えてみると、日本選手については予備知識があるのに対して外国選手に関してはほとんど予備知識がないからかなあと思いました。表彰式で掲揚される日の丸や流される君が代には何の感傷も感じなかったりします。
さて、三羽省吾さんの最新刊「タチコギ」を読みました。原稿用紙774枚という大作です。
祖母の葬式のために久しぶりに故郷に帰る柿崎信郎は小4の息子の智郎がネットの掲示板でイジメに会い、掲示板に書いた子たちを名指しで「ハラ サイテ ナイゾウ ヒキダシテヤル」と書き込んで以来、学校を休んでいることで悩んでいます。そして自分自身の小4の時を思い出します。故郷は鉱山の町で、運営サイドの従業員の住む山の手と、現場の鉱夫たちが住む山向こうがはっきり分かれていました。そして会社がアメリカ人に吸収合併され、信郎、通称ノブのクラスに社長の息子で日本語がしゃべれないが生意気なケビンが入ってきます。社長は息子が孤立するのを心配しユニフォームや道具を無料で提供して野球チームを作り、それが面白くない鉱夫の息子ノブとその仲間は、ガキ大将のウネリンを中心にして、山の手の代表格ダゼ夫に試合を申し込みますが、ダゼ夫はユニフォームやヘルメットを買えだの、入会金や手数料、保険料、親のサインが必要な野球連盟に加盟しろだの言って、試合をしようとしません。そして結局広場にある球形の回転する遊具の回しっこで勝負し、ケビンを失禁させ、ケガをさせてしまいます。そんな中、男の独身寮に、寮母の母と住んでいるガボちゃんは、ガボちゃんに暴力を振るう独身寮の若い男たちと母が寝ていることを恨み、母と男たちもろとも殺すため、独身寮に放火し、補導されてしまいます。そしてノブも、会社が従業員の削減をしないことと引き替えに退職した父と家族とともに、故郷を離れることになります。葬式の後、そうした話を息子にした信郎は、妻が息子に薦めている転校について自分で決めるべきだと言いますが、息子は当時の父親の写真を見て、当時信郎が好きだった女の子と母親が全然違うタイプだと言い、お父さんが話をしている間にそんなことを考えていたのかと信郎が言うと、久しぶりに息子に表情が現われ微笑みます。そして信郎は、自分が考えていたほどあの頃は暗いものではなかったと思い返すのでした。
最初は重い立ち上がりでどうなることかと思いましたが、試合を申し込むあたりから段々明るい少年小説になってきて、昭和の暗い小説と明るい少年小説がせめぎあい、最後には明るい少年小説に軍配が上がるといった感じです。ガボちゃんは、母親と独身寮の男たちのことを恨み、その腹いせに残虐な動物殺しをしたり、ユニフォームの金ができない時は橋の下に住む浮浪者を殺して所持金を奪おうとしたりして、ノブをハラハラさせますが、久しぶりに帰った故郷で、当時の先生から、その後国立大学を卒業し、一流の商社に就職して、世界各地からハガキを寄越していることを知ります。このようにして、最後には全てがメデタシメデタシで終わるので、途中の暗いエピソードなどは忘れて、読後感は最高に素晴らしいものでした。
他の三羽さんの小説とともに、オススメです!
なお、詳しいあらすじは、「Favorite Novels」の「三羽省吾」のコーナーにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
さて、三羽省吾さんの最新刊「タチコギ」を読みました。原稿用紙774枚という大作です。
祖母の葬式のために久しぶりに故郷に帰る柿崎信郎は小4の息子の智郎がネットの掲示板でイジメに会い、掲示板に書いた子たちを名指しで「ハラ サイテ ナイゾウ ヒキダシテヤル」と書き込んで以来、学校を休んでいることで悩んでいます。そして自分自身の小4の時を思い出します。故郷は鉱山の町で、運営サイドの従業員の住む山の手と、現場の鉱夫たちが住む山向こうがはっきり分かれていました。そして会社がアメリカ人に吸収合併され、信郎、通称ノブのクラスに社長の息子で日本語がしゃべれないが生意気なケビンが入ってきます。社長は息子が孤立するのを心配しユニフォームや道具を無料で提供して野球チームを作り、それが面白くない鉱夫の息子ノブとその仲間は、ガキ大将のウネリンを中心にして、山の手の代表格ダゼ夫に試合を申し込みますが、ダゼ夫はユニフォームやヘルメットを買えだの、入会金や手数料、保険料、親のサインが必要な野球連盟に加盟しろだの言って、試合をしようとしません。そして結局広場にある球形の回転する遊具の回しっこで勝負し、ケビンを失禁させ、ケガをさせてしまいます。そんな中、男の独身寮に、寮母の母と住んでいるガボちゃんは、ガボちゃんに暴力を振るう独身寮の若い男たちと母が寝ていることを恨み、母と男たちもろとも殺すため、独身寮に放火し、補導されてしまいます。そしてノブも、会社が従業員の削減をしないことと引き替えに退職した父と家族とともに、故郷を離れることになります。葬式の後、そうした話を息子にした信郎は、妻が息子に薦めている転校について自分で決めるべきだと言いますが、息子は当時の父親の写真を見て、当時信郎が好きだった女の子と母親が全然違うタイプだと言い、お父さんが話をしている間にそんなことを考えていたのかと信郎が言うと、久しぶりに息子に表情が現われ微笑みます。そして信郎は、自分が考えていたほどあの頃は暗いものではなかったと思い返すのでした。
最初は重い立ち上がりでどうなることかと思いましたが、試合を申し込むあたりから段々明るい少年小説になってきて、昭和の暗い小説と明るい少年小説がせめぎあい、最後には明るい少年小説に軍配が上がるといった感じです。ガボちゃんは、母親と独身寮の男たちのことを恨み、その腹いせに残虐な動物殺しをしたり、ユニフォームの金ができない時は橋の下に住む浮浪者を殺して所持金を奪おうとしたりして、ノブをハラハラさせますが、久しぶりに帰った故郷で、当時の先生から、その後国立大学を卒業し、一流の商社に就職して、世界各地からハガキを寄越していることを知ります。このようにして、最後には全てがメデタシメデタシで終わるので、途中の暗いエピソードなどは忘れて、読後感は最高に素晴らしいものでした。
他の三羽さんの小説とともに、オススメです!
なお、詳しいあらすじは、「Favorite Novels」の「三羽省吾」のコーナーにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。