DVDで、万田邦敏監督の'06年作品「接吻」を見ました。
男(豊川悦司)は施錠されていない家に上がり込み、学校から帰ってきた少女を襲います。残業を押し付けられて帰ってきた京子(小池栄子)の持つ夕刊には「一家三人惨殺」の見出しが踊ります。男は盗んだカードで金を下ろす際、警察に電話して名前を名乗り、防犯カメラにもわざと顔を写します。テレビ番組に自分が犯人だというメールを送り、空地で近づいてきた男の子を金槌で叩こうとする男。男・坂口の自宅に踏み込んだ警察は、テレビで取材を受けている坂口を見て現場に急行し逮捕します。テレビカメラに向かって微笑みかける坂口を見た京子は過去の新聞を見返し、コンビニであらゆる新聞を買い込んで事件の記事をノートにスクラップしていきます。坂口は弁護士の長谷川(仲村トオル)と面会しますが、何も話そうとしません。京子は坂口の人生を調べ上げ、第一回の公判を傍聴し、長谷川に会って坂口に親近感を覚えるので差し入れをしたいと申し出ます。長谷川は京子のことを坂口に話すと、犯人は自分だと言った後一切口をきこうとしなかった坂口は興味を示します。京子の手紙を読んだ坂口は、京子に返事を出します。長谷川にそのことを聞かれた京子は、思っていた通りの人だと答えます。二人は坂口の唯一の肉親である兄に会いに行きますが、その不幸な家庭環境を述べはするものの、兄は弟に死刑になってほしいと言って証人になることを断ります。虐げられ孤独だった人生を語る京子に、長谷川はあなたが一途過ぎて心配だと語りますが、彼女は生まれて初めて打ち込めることを見つけられて幸せだと言い、話は噛み合いません。「声を聞かせてくれたら、受け入れられたと考える」と書いた京子に対し、最終弁論で坂口は一言「ありません」と言い、京子は狂喜します。そして控訴せず死刑が確定してしまえば面会できなくなるので結婚してほしいと言う京子に、坂口は同意します。長谷川は京子のことを記者に話し、京子はマスコミの餌食となりますが、彼女は無気味に笑い、戦闘開始だと言って元気づきます。坂口は京子と面会を重ねるに従って感情を取り戻し、人を殺しても何も感じないことの恐ろしさを長谷川に語り、自分はまた人を殺すだろうから死刑になるべきだと涙を浮かべ、長谷川はその姿を見て控訴する決意をします。控訴のニュースで血の気が引いた京子は、自分への相談がなかったことで坂口を非難しますが、坂口は自分は人を殺しているのだから君とは違う、自分が死んだ後も生きてほしいと言うと、京子は「私を一人にするの」と突き刺さるような目で坂口を見ます。そして拘置所長のはからいで坂口と同じ部屋での面会を許された京子は、自らも死刑になるために坂口を刺した後、長谷川も刺そうとしますが失敗し、その後長谷川にむさぼるようにキスをしているところを拘束されます。連れて行かれる背後で長谷川が「僕が弁護する」と言うのに対して、京子は「ほっといて」と叫び続けるのでした。
京子がちまちまとスクラップを作るところ辺りからブレッソンの雰囲気が濃厚でしたが、面会のシーンでそれは決定的となりました。長谷川と京子の視線が合わない会話はゴダールをも思わせました。それにしても「狂気の愛」そのものの映画です。小池栄子が抜群に素晴らしく、格闘技番組の司会をしていた姿からは考えもつかない、腺病質で強靱なまさに「女」そのものを体現し、この一作で映画史に残る女優となったことは間違いないでしょう。'06年製作ですが、日本公開が'08年というところが少し気になりました。とにかく、文句なしの傑作です。映画好きの方、必見です。
男(豊川悦司)は施錠されていない家に上がり込み、学校から帰ってきた少女を襲います。残業を押し付けられて帰ってきた京子(小池栄子)の持つ夕刊には「一家三人惨殺」の見出しが踊ります。男は盗んだカードで金を下ろす際、警察に電話して名前を名乗り、防犯カメラにもわざと顔を写します。テレビ番組に自分が犯人だというメールを送り、空地で近づいてきた男の子を金槌で叩こうとする男。男・坂口の自宅に踏み込んだ警察は、テレビで取材を受けている坂口を見て現場に急行し逮捕します。テレビカメラに向かって微笑みかける坂口を見た京子は過去の新聞を見返し、コンビニであらゆる新聞を買い込んで事件の記事をノートにスクラップしていきます。坂口は弁護士の長谷川(仲村トオル)と面会しますが、何も話そうとしません。京子は坂口の人生を調べ上げ、第一回の公判を傍聴し、長谷川に会って坂口に親近感を覚えるので差し入れをしたいと申し出ます。長谷川は京子のことを坂口に話すと、犯人は自分だと言った後一切口をきこうとしなかった坂口は興味を示します。京子の手紙を読んだ坂口は、京子に返事を出します。長谷川にそのことを聞かれた京子は、思っていた通りの人だと答えます。二人は坂口の唯一の肉親である兄に会いに行きますが、その不幸な家庭環境を述べはするものの、兄は弟に死刑になってほしいと言って証人になることを断ります。虐げられ孤独だった人生を語る京子に、長谷川はあなたが一途過ぎて心配だと語りますが、彼女は生まれて初めて打ち込めることを見つけられて幸せだと言い、話は噛み合いません。「声を聞かせてくれたら、受け入れられたと考える」と書いた京子に対し、最終弁論で坂口は一言「ありません」と言い、京子は狂喜します。そして控訴せず死刑が確定してしまえば面会できなくなるので結婚してほしいと言う京子に、坂口は同意します。長谷川は京子のことを記者に話し、京子はマスコミの餌食となりますが、彼女は無気味に笑い、戦闘開始だと言って元気づきます。坂口は京子と面会を重ねるに従って感情を取り戻し、人を殺しても何も感じないことの恐ろしさを長谷川に語り、自分はまた人を殺すだろうから死刑になるべきだと涙を浮かべ、長谷川はその姿を見て控訴する決意をします。控訴のニュースで血の気が引いた京子は、自分への相談がなかったことで坂口を非難しますが、坂口は自分は人を殺しているのだから君とは違う、自分が死んだ後も生きてほしいと言うと、京子は「私を一人にするの」と突き刺さるような目で坂口を見ます。そして拘置所長のはからいで坂口と同じ部屋での面会を許された京子は、自らも死刑になるために坂口を刺した後、長谷川も刺そうとしますが失敗し、その後長谷川にむさぼるようにキスをしているところを拘束されます。連れて行かれる背後で長谷川が「僕が弁護する」と言うのに対して、京子は「ほっといて」と叫び続けるのでした。
京子がちまちまとスクラップを作るところ辺りからブレッソンの雰囲気が濃厚でしたが、面会のシーンでそれは決定的となりました。長谷川と京子の視線が合わない会話はゴダールをも思わせました。それにしても「狂気の愛」そのものの映画です。小池栄子が抜群に素晴らしく、格闘技番組の司会をしていた姿からは考えもつかない、腺病質で強靱なまさに「女」そのものを体現し、この一作で映画史に残る女優となったことは間違いないでしょう。'06年製作ですが、日本公開が'08年というところが少し気になりました。とにかく、文句なしの傑作です。映画好きの方、必見です。