山田宏一さんが「山田宏一の日本映画誌」の中で絶賛していた、佐々木昭一郎監督の'76年作品「紅い花」をNHK放送博物館で見ました。つげ義春さんの複数のマンガを原作とした単発のテレビドラマです。
つげ(草野大悟)のマンガを見る編集者(藤原鎌足)は、つげの描く最近の女性がどんどん若くなっていると言います。運河の水面をゆるゆると前進移動するカメラにかぶさる、東京大空襲を語るナレーション。タイトルが終わると、前進移動は逆光の線路上となっていて、それがまたオーバーラップして戦時中の都電の終着駅に。戦時中の僕と妹、路地、そこの隣人たち、金太郎飴を売る母、行商に出かける母。紅い花の流れる川に妹と行きたいと母に言うと、母は危ないと言い、妹の悲鳴が聞こえ、川は火に覆われます。僕が描く少女の絵にキクチサヨコ(中尾幸世)がオーバーラップします。彼女の噂を狐の面をする少年たちがすると、マサジは彼女は山の下から来た狼少女なのだと言います。水汲みをするキクチサヨコにいたずらするマサジ。彼女と一緒に住む寝たきりの老人(嵐寛寿郎)に役人が訪ねて来て、脱走兵がこの辺にいると言います。その役人を釣りの穴場にマサジが連れて行くと、役人はマサジが本物の軍帽を被っていることに気付きます。ドラム缶風呂に入るキクチサヨコを覗くマサジ。老人はサヨコに一緒に住んでいたミヨコ(中尾の二役)が脱走兵に犯され死んだので、老人が男を殺したことを告白し、死んでしまいます。遺体を手押し車に乗せて山道を運ぶ、狐の面をつけた男たちとサヨコ。川を流れるたくさんの紅い花と初潮で腹が痛くて川にしゃがみ込むサヨコ、それを見るマサジ。二人は人間らしい生活ができるという森の奥へと進んでいきます。銃声。落ちた鴨を拾うサヨコと出会う道に迷った青年。村人たちが銃を持って脱走兵を追ってきます。サヨコは暗い目をして自分の家に青年を上げかくまってやると言いますが、枕元には眠ると首を締めにくるという蛇がいます。青年は寝つけず、サヨコの首に手を伸ばし、やがて彼女を抱きます。翌朝、サヨコによく夜ばいをかけに来ていた男が青年を泊めたことでサヨコを責めますが、青年は既に家を出ていました。そして紅い花に見とれていた青年を射殺した村びとたちはすぐに人違いだとわかります。時間は飛んで戦時中の日本へ。古本屋の店番をしているサヨコは毎日来て発禁本の「ハックルベリーフィン」を5ページずつ読む学生を見つめます。翌日、学生はその本にはさんであった札を拾い、あわてて店を出て行きます。次の日その金で学生が本を買おうとすると、別の客(清水絋治)が2倍の金を払って買っていきます。学生がその客を追って行くと、客は自分のためた金なのでこれで本を買ってくださいと書いてあるサヨコの手紙が本にはさまっていたと言って、学生に本を譲ります。学生は本を持って帰りますが、客の密告により刑事が先回りしていて学生を逮捕します。道に散らばる本を見つめるサヨコ。店に帰ると誰もいず、本棚も空になっています。燃える本。真っ赤な口紅をつけるサヨコ。また二人を森に帰してあげようというナレーションとともに、キクチサヨコとマサジがじゃんけんをしながら森の奥に移動していきます。それを見つめるつげ。妹を書き続けると言うつげは、東京大空襲で妹とはぐれた時の様子を語り、番組は終わります。
佐々木監督が白羽の矢を立てたという中尾幸世さんはさすがに存在感があり、当時19才ぐらいだったと思いますが、思春期のあやうさを見事に体現していたと思います。つげさんの作品の映像化としても成功しているのではないでしょうか。30年以上前の作品ですが、全く古びていません。オススメです。
つげ(草野大悟)のマンガを見る編集者(藤原鎌足)は、つげの描く最近の女性がどんどん若くなっていると言います。運河の水面をゆるゆると前進移動するカメラにかぶさる、東京大空襲を語るナレーション。タイトルが終わると、前進移動は逆光の線路上となっていて、それがまたオーバーラップして戦時中の都電の終着駅に。戦時中の僕と妹、路地、そこの隣人たち、金太郎飴を売る母、行商に出かける母。紅い花の流れる川に妹と行きたいと母に言うと、母は危ないと言い、妹の悲鳴が聞こえ、川は火に覆われます。僕が描く少女の絵にキクチサヨコ(中尾幸世)がオーバーラップします。彼女の噂を狐の面をする少年たちがすると、マサジは彼女は山の下から来た狼少女なのだと言います。水汲みをするキクチサヨコにいたずらするマサジ。彼女と一緒に住む寝たきりの老人(嵐寛寿郎)に役人が訪ねて来て、脱走兵がこの辺にいると言います。その役人を釣りの穴場にマサジが連れて行くと、役人はマサジが本物の軍帽を被っていることに気付きます。ドラム缶風呂に入るキクチサヨコを覗くマサジ。老人はサヨコに一緒に住んでいたミヨコ(中尾の二役)が脱走兵に犯され死んだので、老人が男を殺したことを告白し、死んでしまいます。遺体を手押し車に乗せて山道を運ぶ、狐の面をつけた男たちとサヨコ。川を流れるたくさんの紅い花と初潮で腹が痛くて川にしゃがみ込むサヨコ、それを見るマサジ。二人は人間らしい生活ができるという森の奥へと進んでいきます。銃声。落ちた鴨を拾うサヨコと出会う道に迷った青年。村人たちが銃を持って脱走兵を追ってきます。サヨコは暗い目をして自分の家に青年を上げかくまってやると言いますが、枕元には眠ると首を締めにくるという蛇がいます。青年は寝つけず、サヨコの首に手を伸ばし、やがて彼女を抱きます。翌朝、サヨコによく夜ばいをかけに来ていた男が青年を泊めたことでサヨコを責めますが、青年は既に家を出ていました。そして紅い花に見とれていた青年を射殺した村びとたちはすぐに人違いだとわかります。時間は飛んで戦時中の日本へ。古本屋の店番をしているサヨコは毎日来て発禁本の「ハックルベリーフィン」を5ページずつ読む学生を見つめます。翌日、学生はその本にはさんであった札を拾い、あわてて店を出て行きます。次の日その金で学生が本を買おうとすると、別の客(清水絋治)が2倍の金を払って買っていきます。学生がその客を追って行くと、客は自分のためた金なのでこれで本を買ってくださいと書いてあるサヨコの手紙が本にはさまっていたと言って、学生に本を譲ります。学生は本を持って帰りますが、客の密告により刑事が先回りしていて学生を逮捕します。道に散らばる本を見つめるサヨコ。店に帰ると誰もいず、本棚も空になっています。燃える本。真っ赤な口紅をつけるサヨコ。また二人を森に帰してあげようというナレーションとともに、キクチサヨコとマサジがじゃんけんをしながら森の奥に移動していきます。それを見つめるつげ。妹を書き続けると言うつげは、東京大空襲で妹とはぐれた時の様子を語り、番組は終わります。
佐々木監督が白羽の矢を立てたという中尾幸世さんはさすがに存在感があり、当時19才ぐらいだったと思いますが、思春期のあやうさを見事に体現していたと思います。つげさんの作品の映像化としても成功しているのではないでしょうか。30年以上前の作品ですが、全く古びていません。オススメです。