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清水宏監督『有りがたうさん』

2009-07-10 13:33:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、清水宏監督の'36年作品「有りがたうさん」を見ました。
 山道を行くバスに道を空けてくれる人たちに「ありがとう」と言う運転手(上原謙)。「だから彼を有りがたうさんと云う」の字幕。バスは東京へ働きに出る娘と彼女を駅まで送る母を乗せて漁村を出発します。失業者が村に帰るのとすれ違うと、流れ者の女(桑野通子)は自分は帰る家が分からなくなったと言います。寝ている老人を起こして停留所で降ろしてやる運転手。山道の途中では地元の男から子供への言づてを預かり、村の娘たちからはレコードを買ってきてくれと頼まれます。バスを追いかけてバンパーに乗る子供たち。娘を働きに出して気がふれ娘を求めて山道をさまよう男に出会うと、バスに乗る娘は泣き出し、母ももらい泣きし、それをバックミラーで見ていた運転手は危うくバスを崖から落としそうになります。山中で出会った踊子と運転手は車を停めて雑談し、やがて母が他の客にお菓子を配り出すと、女も酒を振る舞おうとしますが、誰も受けとろうとしないのでむくれたため、男性客は遠慮をやめてもらい出します。山中で降りた客は金山に手を出したため娘を二人犠牲にしたと語る運転手。天城トンネルの前で一休みし、乗客たちは谷に石を投げ、運転手は娘に母へ手紙を書くように言います。工事で来ていた韓国人の娘が別れを言いにバスを追ってきて、運転手に父の墓の世話を託します。次々に降りて行く客に別れの挨拶をする女。終点が近づくと、自分の車を買うための金を娘に用立ててやれば娘は東京に出ていかなくても済むと女は運転手に盛んに語ります。「翌日天城街道は日本晴れ」の字幕。村に戻るバスの中で娘は女に礼の手紙を書きたいと運転手に言い、バスは漁村に戻っていくのでした。
 非常に不思議な映画でした。全編オールロケ、移動撮影が多く、人物の台詞は異様にゆっくりで抑揚に乏しく、バスを追い掛ける子供はスローモーションのようで、そこにどういう意図が隠されているのか、最後まで分かりませんでした。プライドが高く娘をチラチラ盗み見たりするスケベな中年男性の客を中心として、多彩な乗客が乗り降りし、クラクションを鳴らしてバスに無理矢理道を譲らせますが、2度に渡りトラブルでまたバスに抜かれるオープンカーなど、いろんな挿話が添えられています。伊豆の昔の山道の様子が見られるのも興味深いものでした。ロードムービーが好きな方にはオススメです。