朝日新聞の特集記事「2008年 感動と発見の一冊」で推薦されていた、池上永一さんの'08年作品「テンペスト(上)若夏の巻」を読みました。
江戸時代末期の琉球。滅びたとされる王家の血を引く孫家では男子が生まれず、親戚から嗣勇が養子にもらわれ、官僚になるための試験・科試の勉強をさせられますが、あまりの辛さに逃げてしまいます。嗣勇の妹として育った長女の真鶴は幼い頃から学問に優れ、兄を許してもらうために清帰りの宦官・孫寧温として自らが科試を受けることにし、現在の王に帝王学を授け今は引退している麻先生の直弟子として勉学に励みます。科試の日、寧温が宣教師から蘭学を学ぶためにもらっていた本が発見されますが、父は寧温が王家を復興することを願い罪をかぶって斬首されます。寧温は最年少で朝薫とともに科試に受かり、答案を見た王によっていきなり重職につきます。そして清の使いを歓迎する式典で、天才の女形として宮廷に仕えることになった兄と再会します。寧温はさっそく宦官であることを利用し、男子禁制の場にも出入りして裏金の調査をするように王から言われ、様々な妨害にもかかわらず財政の立て直しを行いますが、そんな折、薩摩藩の雅博に一目惚れします。英国船座礁の問題も解決しますが、宮廷の神儀の最高権力者である聞得大君に初潮の匂いを嗅がれてしまい孫家の娘であることをつきとめられ、兄も人質にとられ、聞得大君のいいなりになり、悲観して崖から身投げしますが、海中で龍によって助けられ、それによって大義を思い出した寧温はキリシタンの疑いをかけることによって聞得大君を宮廷から追放することに成功します。すると今度はアヘンの密輸問題が発覚し、腐敗した官僚たちによって一時は王の別邸の草取りにされてしまいますが、王と麻先生の助けもあって腐敗官僚たちを退治しアヘンの一掃を成し遂げます。そして次に列強に対抗するため西洋の技術や考え方を取り入れようと考えますが、清の宦官で異常性欲の持ち主・徐からデカルトの本を与えると言っておびき出され、女性であることを暴かれて脅され、結局職を辞して失踪します。真鶴としてこれからは生きていこうとしますが、そんな折王が死に、徐が幼い王を補佐する職についたと聞き、また寧温として職に復帰しますが、やがて徐に犯され、様々な陰謀の虜となり、最後には徐を道連れに崖から身投げしますが、王家に代々伝わる勾玉の首飾りのおかげで自分は助かります。しかし、徐の遺体から以前に朝薫からもらった簪が発見され、朝薫は泣く泣く寧温を終身の流刑とするのでした。
文体はとても読みやすく、ストーリーもこれでもかこれでもかというほどに波乱万丈の人生を語り、あっと言う間に読んでしまいました。人物描写に関してはやや紋切り型の部分もあったように思いますが、何とか興味をつなぎとめることはできていたのではと思います。またシーンのアクセントとして歌われる琉歌もリズムを生んでいました。それにしても上巻だけで2段組400ページを超える量は半端ではないと思いました。下巻に期待です。
江戸時代末期の琉球。滅びたとされる王家の血を引く孫家では男子が生まれず、親戚から嗣勇が養子にもらわれ、官僚になるための試験・科試の勉強をさせられますが、あまりの辛さに逃げてしまいます。嗣勇の妹として育った長女の真鶴は幼い頃から学問に優れ、兄を許してもらうために清帰りの宦官・孫寧温として自らが科試を受けることにし、現在の王に帝王学を授け今は引退している麻先生の直弟子として勉学に励みます。科試の日、寧温が宣教師から蘭学を学ぶためにもらっていた本が発見されますが、父は寧温が王家を復興することを願い罪をかぶって斬首されます。寧温は最年少で朝薫とともに科試に受かり、答案を見た王によっていきなり重職につきます。そして清の使いを歓迎する式典で、天才の女形として宮廷に仕えることになった兄と再会します。寧温はさっそく宦官であることを利用し、男子禁制の場にも出入りして裏金の調査をするように王から言われ、様々な妨害にもかかわらず財政の立て直しを行いますが、そんな折、薩摩藩の雅博に一目惚れします。英国船座礁の問題も解決しますが、宮廷の神儀の最高権力者である聞得大君に初潮の匂いを嗅がれてしまい孫家の娘であることをつきとめられ、兄も人質にとられ、聞得大君のいいなりになり、悲観して崖から身投げしますが、海中で龍によって助けられ、それによって大義を思い出した寧温はキリシタンの疑いをかけることによって聞得大君を宮廷から追放することに成功します。すると今度はアヘンの密輸問題が発覚し、腐敗した官僚たちによって一時は王の別邸の草取りにされてしまいますが、王と麻先生の助けもあって腐敗官僚たちを退治しアヘンの一掃を成し遂げます。そして次に列強に対抗するため西洋の技術や考え方を取り入れようと考えますが、清の宦官で異常性欲の持ち主・徐からデカルトの本を与えると言っておびき出され、女性であることを暴かれて脅され、結局職を辞して失踪します。真鶴としてこれからは生きていこうとしますが、そんな折王が死に、徐が幼い王を補佐する職についたと聞き、また寧温として職に復帰しますが、やがて徐に犯され、様々な陰謀の虜となり、最後には徐を道連れに崖から身投げしますが、王家に代々伝わる勾玉の首飾りのおかげで自分は助かります。しかし、徐の遺体から以前に朝薫からもらった簪が発見され、朝薫は泣く泣く寧温を終身の流刑とするのでした。
文体はとても読みやすく、ストーリーもこれでもかこれでもかというほどに波乱万丈の人生を語り、あっと言う間に読んでしまいました。人物描写に関してはやや紋切り型の部分もあったように思いますが、何とか興味をつなぎとめることはできていたのではと思います。またシーンのアクセントとして歌われる琉歌もリズムを生んでいました。それにしても上巻だけで2段組400ページを超える量は半端ではないと思いました。下巻に期待です。