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相米慎二監督『雪の断章―情熱』その2

2014-03-09 12:18:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 踊り狂う伊織。カネが帰り止めさせます。雄一のフィアンセは有名な出版社に勤めていて、お揃いのカップルだとカネは言います。水差しの水を鉢に捨てて花が枯れたことから、水差しに青酸が入っていたと知る伊織。中原中也の『サーカス』をそらで読む伊織。大介の誕生日に花とバースデイカードをもって彼の部屋を訪れた伊織は、ヒロコの部屋にあったのと同じ水差しがあるのを発見します。川を泳いで鳩を助けた伊織は、小船に助けられます。夜の豪雨の中、ずぶ濡れの伊織と雄一。雄一はカネが「殺人事件の後でまともな神経ではついていけない」と言って辞め、鉢植えの話や婚約者の話も聞いたと言います。「偽善者かもしれない。傷ついただろうな」「傷つきました。でもその程度なら子供の頃から慣れてるし、傷つきやすい代わりに立ち直るのも早い。孤児の知恵です」「一つだけ質問に答えてくれ。犯人を教えてくれ」「雄一さんだから言えない」「手放さないぞ。北大に受かるまで俺の責任だ」「嫌です。北大は受けない。私は雄一さんのお人形じゃありませんから」。雄一は平手で伊織を叩き、「北大は受けるんだ。俺とお前のつながりはもうそこにしかないんだ」と言います。
 大介と彼が住んだことのある函館に来た伊織。大介は言います。「誕生日の花束ありがとう。ヒロコと同じ水差しで驚いたろう。同じ水差しと差し換えて、青酸の後を消した。犯人は俺だと思ってるんだろう」「違うと言ってください」「伊織を俺が拾ってたら、俺の人生も変わってたかも。雄一は都落ちしてやけ酒飲んでたが、伊織を拾って変わった。大地に根を張るようになった。俺も中2で親がいなくなった。遠い親戚に預けられ、肩身の狭い思いもした。昔の町に来て思い出した。伊織、1人じゃないぞ。先にホテルに帰れ。これから先は18歳未満お断りだ」と大介は言って海に向かっていきます。追う伊織は大介の名を呼び、テトラポットで波を被っている大介を見つけます。「死なないで。死んだら私も死ぬ」「生きていけない」「私がいるじゃない」「一緒に生きてくれるのか?」そして必死に伸ばす伊織の手を大介はやっと握ります。
 北大に受かる伊織。屋台で飲む3人。大介は九州へ行くことになり、伊織も北大を捨てて付いていくことにします。キャッチボールをする3人。そこへ刑事がやって来て、水差しのトリックの話をし、伊織の社会的生命まで奪う犯人はどんな気持ちなんだろう?と言います。夜桜の下の3人は「行こか、戻ろか♪」を歌い、伊織はこの歌を母が子守歌として歌ってくれていて、物悲しくなると言い、3人は桜の花びらで乾杯します。
 雄一の家に大介が自殺したという電話が入ります。青酸での自殺で、遺書でヒロコ殺害の犯行を自供していました。遺書を読む伊織と、彼女がこれまでに聞いてきた大介の声。遺書の最後には「チビ、ちゃんと幸せになるんだよ。雄一はいいやつだ。雄一だけ頼って生きてゆけ」と書いてありました。
 雄一の家を出て行く伊織は「この部屋で今までみたいに暮らしていく自信がありませんから」と雄一に言います。「これ、ありがとうございました」と、最初に出会った時にもらい、大切にしまっておいた古いセーターを伊織は返します。「どうして返す?」「分かりません」「素直じゃないな」「じゃどうしたらいいんですか? ずーと持っていればいいんですか? そんなの辛すぎます」「自分の素直な気持ちを言ってごらん」「私は孤児です」「それがどうした?」「あなたが育ててくれたんです」「そうだ。だからどうした?」「だから、あなたを愛してはいけないんだって思ってました」「いけないとかいいとかじゃない。愛してないのか?」雄一はセーターを鋏でジョキジョキ切り始めます。「ああ‥‥」「お前に偽善者と決めつけられてから、俺は言葉をなくしてしまった。愛という言葉の代わりは、こんなことしかできない」伊織は雄一の両腕を掴み、「キスしてください」と言います。窓の外には二人を祝福しているように人形が動き、映画は終わります。

 冒頭の20分近くのワンシーンワンカット(この中で夜、朝、夕方、夜と時間が推移していく)は映画史に残るシーンだと思います。心境を表すショットも多く、“ショット”“演出”どちらも傑出した映画でした。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/