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黒田夏子『abさんご』

2014-03-13 11:34:00 | ノンジャンル
 マキノ雅弘監督の'65年作品『日本侠客伝・浪花篇』をスカパーの東映チャンネルで見ました。大阪の石炭を扱う沖仲仕の元請で良心的な仕事をしている半田運送(内田朝雄、子頭が村田英雄)を、労働運動をしている息子が継ぐ物語と、半田運送の仕事を妨害する、沖仲仕の扱いが荒い新興の元請・新沢(大友柳太郎)とその部下(天津敏)が半田運送と争う中、新沢の仕事をしていて死んだ弟の知らせを受けて東京からやって来た高倉健が、やがて半田運送に入り、彼に惚れた入江若葉と婚約し、沖仲仕(長門裕之)新沢関係の者に見受けされることになった女郎(八千草薫)と半田運送の沖仲仕(長門裕之)が駆け落ちして、長門裕之が新沢に殺され、新沢の部下で刑務所に入っていた鶴田浩二が刑務所に入っている間に、女郎に身を落とした恋人(南田洋子)を新沢の情婦にされ、南田洋子が長門裕之の駆落ちを助けたことで新沢に殺され、自分の仕事の邪魔をする村田英雄も新沢が殺すことで、最後に、鶴田浩二と高倉健が大友柳太郎の部屋を訪れ、大友と天津敏を殺すというもので、このシリーズとしては、ラストに大立ち回りがない珍しい作品でした。田中春男が沖仲仕の大家役で出ていたのと、藤山寛美が屋台のおやじ役で最後にワンシーンだけ出演していたことも書いておきたいと思います。
 また、本多猪四郎監督の'65年作品『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン(海外版)』もスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。ナチスが開発した不死の心臓がヒロシマの放射能を浴びて猛烈な速度で発育する“フランケンシュタイン”となり、それが最後には人類の味方となって地底怪獣のバラゴンをやっつけ、その後出現した巨大ダコとともに海中に消えるという話で、主演が高島忠夫と水野久美というのはともかく、学者の役で志村喬と中村伸郎、警察関係者として田崎潤、藤田進、そしてウルトラQでお馴染みの佐原健二も出演していて、結構楽しめました。円谷英二の特撮は、秋田の油田の破壊シーンが特に優れていたと思います。

 さて、朝日新聞の特集記事の中で藤沢周さんが推薦していた、黒田夏子さんの'13年作品『abさんご』を読みました。
 冒頭の部分を引用させていただくと、「〈受像者〉 aというがっこうとbというがっこうのどちらにいくのかと,会うおとなたちのくちぐちにきいた百にちほどがあったが,きかれた小児はちょうどその町を離れていくところだったから,aにもbにもついにむえんだった.その、まよわれることのなかった道の枝を,半せいきしてゆめの中で示されなおした者は,見あげたことのなかったてんじょう,ふんだことのなかったゆか,出あわなかった小児たちのかおのないかおを見さだめようとして,すこしあせり,それからとてもくつろいだ.
そこからぜんぶをやりなおせるとかんじることのこのうえない軽さのうちへ,どちらでもないべつの町の初等教育からたどりはじめた長い日月のはてにたゆたい目ざめた者に,みゃくらくなくあふれよせる野性の小禽たちのよびかわしがある.」
 私にとっては意味不明でした。原文も横書きで、句読点はわざと“,”と“.”を使っています。しかし蓮實重彦先生は第二十四回早稲田文学新人賞の唯一の選考委員として、この作品を受賞作としたのでした。著者は75歳での受賞だったのだそうです。この本には著者が25歳から35歳の間に書いた三作品『毬』と『タミエ』と『虹』も収録されていて、『毬』は第六十三回読売短編小説賞を受賞し、1963年に夕刊に全文が掲載されたとのことでした。つまり黒田さんは50年の年月をはさんで2回しか世間に文章を発表していない希有な作家だった訳です。それにしても、『abさんご』の面白さを理解できないのが残念でした。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/