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奥田英朗『ヴァラエティ』その6

2018-07-12 05:40:00 | ノンジャンル
 WOWOWシネマで、マーティン・スコセッシ監督の’16年作品『沈黙━━サイレンス━━』を録画で見ようとしましたが、2時間30分を越える長尺であることと、「PG12」であることから、見るのを断念しました。残酷で救いのない映画に思えたからですが、実際はどうだったのでしょう?

 さて、また昨日の続きです。
「日曜日、家族を連れて会社に行った。妻と子供たちにパパの会社を見せたかったのだ。子供たちは大はしゃぎで走り回る。『あら、いいところ』久美子も顔をほころばせている。
 壁に飾った創立メンバーの記念写真を見せた。妻がじっと見やり、くすりと笑った。壁の前でいつまでも眺めている。みんなの表情を見て、少しは安心したようだ。
 今夜からぐっすり眠ってくれそうな気がした。」

 以上が第一話の「おれは社長だ!」のあらすじ(というか引用)でした。
 第二話の「毎度おおきに」は「おれは社長だ」の続編、第三話「ドライブ・イン・サマー」はおっとりした妻が運転する車が大渋滞に巻き込まれ、そこに若いヒッチハイカーとバスツアーに乗り遅れたおばあさん、そして冷房がなく、汗だくで運転していて、夫婦の車に追突する老夫婦とその孫の子供たち、ラストでは人違えで警官に追われ、包丁を持って車に強引に乗り込む男といった人々が騒動を起こすユーモアあふれる作品、ショートショートの「クロアチアVS日本」は、ワールドカップで日本と引き分けるクロアチア戦を見ているクロアチア人のおじさんの独白を作品化したもの、第四話「住み込み可」は、夫の暴力とサラ金の借金から逃れるために、偽名で熱海の食べ物屋で働く主人公が、一人住まいのはずなのに、必ず1食分多くコンビニで弁当を買っていく同僚の行動に好奇心を持ち始めたところ、最後はオーム真理教の信者のように、その同僚が仲間の男を部屋に匿っていたことがばれるという話、第五話「セブンティーン」は、初体験を実行しようとしている高校生の娘に対し、どのように接していいか悩む母親の話、第六話「夏のアルバム」は、補助輪なく自転車に乗れなくて悩んでいる男の子が、親戚のおばさんの死を体験し、そのおばさんの子供、つまり主人公の従姉から、自転車の乗り方を指南してもらい、補助輪なしで自転車に乗れるようになりますが、自転車の乗り方を教えた従姉が、その乗り方を死んだ母親から習ったと言い、泣き崩れ、それにつられて主人公も泣いてしまうという話でした。
 初出は「おれは社長だ!」が『小説現代』2007年12月号、「毎度おおきに」が『小説現代』2008年12月号、「ドライブ・イン・サマー」が『男たちの長い旅』(アンソロジー/2006年/徳間文庫)所収、「クロアチアVS日本」が『読売新聞』2006年8月12日の夕刊、「住み込み可」が『野生時代』2012年3月号、「セブンティーン」が『聖なる夜に君は』(アンソロジー/2009年/角川文庫)所収、「夏のアルバム」が『あの日、君と Boys』(アンソロジー/2012年/集英社文庫)所収、奥田さんとイッセー尾形さんの対談「『笑いの達人』楽屋ばなし」が『オール讀物』2006年8月号、奥田さんと山田太一さんの対談「総ての人が〈人生の主役〉になれるわけではない」が『文芸ポスト』Vol.26 となっていて、様々な出版社に提供をお願いし、講談社が作った本でした。
 字数の関係で、あらすじは「おれは社長だ!」だけにとどめましたが、それで「これは面白そうだぞ」と思った方は、公立図書館ならば置いてあると思うので、そちらに予約を入れていただいて、読んでいただきたいと思います。また、そんなの待てない、すぐに入手したい方は新品だと1296円、Kindle版だと1080円、アマゾンの中古でいいと言う方は7月12日現在送料込みで332円+送料で買えます。
 短編集としては、おそらく奥田英朗さんの代表作の1つになること、請け合いでしょう。読書が好きな方には必読の書です。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。また、この2人について何らかの情報を知っている方も、以下のメールで情報をお送りください。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)