世界大会・広島の閉会総会
国連軍縮問題担当上級代表
ドゥアルテさんの発言
6日に行われた原水爆禁止2010年世界大会・広島の閉会総会で、国連のセルジオ・ドゥアルテ軍縮問題担当上級代表が発言しました。
(写真)セルジオ・デケイロス・ドゥアルテ国連軍縮問題担当上級代表 |
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長による広島・長崎両市の訪問は、現在世界で起こりつつある非常に積極的な動きの一例にすぎません。
核兵器廃絶は、1946年1月に国連総会が採択した第一号の決議の目標です。この目標は核兵器そのものと同じぐらい古く、東西・南北の違いを超えて人々を団結させてきました。核兵器よりも強力なのは、共通の大義のもとに結集した世界の人々の連帯です。
核兵器廃絶は非常に複雑な課題です。核兵器がなくなることに危険や不安を感じる人も多くいます。軍縮の約束が破られたらどうするのか。軍縮が普遍 的に実施されなければどうするのか―疑問を呈するのは簡単ですが、軍縮にともなう危険を懸念しても、軍縮に失敗した場合の危険は忘れています。
軍縮が進まない一方で、どれほどひどいことが起きているでしょうか。社会・経済ニーズを満たす予算を犠牲にした軍事費の増加、先制攻撃の脅迫、ミ サイル防衛の追求、不拡散とテロ対策だけで世界的な核の脅威に十分対応できるという主張、いまや9カ国に広がった伝染性の「核抑止論」―。
私たちの目標は、単に核兵器使用の危険を減らすとか、核兵器を入手する国を増やさないというだけではいけません。二重基準をなくし、普遍的な核兵器廃絶を追求せねばなりません。それこそが万人に真の平和と安全を保障する持続可能な道です。
核兵器はどこにあっても危険だと私も思います。私たちは、核兵器を入手しようとする国のよしあしではなく、核兵器の本質を理由に、その拡散に反対せねばなりません。
伝染性の「核抑止論」を克服し、共通の安全保障の強固な土台を築くことで、核兵器のない世界を達成せねばなりません。
被爆体験を世界中の学校教育に取り入れましょう。被爆者は核戦争の人道的影響を世界に教える最良の教師です。
潘事務総長が2008年の「5項目提案」で示したように、核兵器廃絶条約の交渉開始を核保有国に働きかけねばなりません。合意された期限内に達成する意志を宣言させましょう。
平和市長会議は2020年を期限に提案しています。原爆投下から75年後です。2020年が時期尚早なら、いったい核兵器廃絶が達成されるのはいつになるのでしょうか。
期限が合意されれば、各国がそれぞれ達成計画を立てるのに役立ちます。計画作りそのものを長期的目標にしてはいけません。核軍縮を単に「究極的目標」とすると、核不拡散の約束さえも究極目標とされてしまいます。
こうした窮地に陥らないですますこともできます。潘事務総長の「5項目提案」にそった具体的進展の達成に着手すればいいのです。この提案は軍縮分 野に「法の支配」を広げる必要性を強調しています。軍縮で各国のやっていることの情報を人々が入手できるようにせねばなりません。
核不拡散とテロ対策は確かに重要な目標ですが、核軍縮を大きく前進させることこそ、その最大の貢献になると私は考えています。核兵器の存在の問題を解決できれば、その他の問題の解決も期待できるようになります。
毎年8月6日、世界の目が広島に注がれるとき、世界の人々の心はつねにみなさんとともにあります。私はみなさんとともに、核兵器のない世界を目指 して歩めることを誇りに思います。これは正しい大義であり、過去の被害者や将来の世代に対する私たちの共通の責任でもあります。いまこそ前進の時です。