大相撲・九重親方「追い越してほしい」
名古屋場所4日目。九重親方(左、元千代の富士)が持つ歴代最多勝記録1045勝を達成し、祝福される魁皇。「体調を考えても、よく頑張ったと思う。ここまできたら追い越してほしい」と親方=13日、愛知県体育館
大相撲:魁皇1046勝 大記録にも喜び顔に出さず mainiti jp

旭天鵬を寄り切りで降し、通算1046勝で史上最多記録を更新した魁皇=愛知県体育館で2011年7月14日、兵藤公治撮影
新たな勲章をファンがたたえる中、魁皇自身は「そんなこと言っている場合じゃない」と喜びを顔に出さなかった。カド番は過去13回。「大関」という地位を考えれば、大記録も手放しで喜べない
ことを、本人は承知していた。
ある親方は「長くやっているだけ。千代の富士とは違う。魁皇は大関で止まっちゃいけなかった。横綱になれたはず」と指摘する。優勝5回は元横綱の旭富士や隆の里より多い。だが、度重なる
けがに悩まされたこともあり、魁皇には強さともろさが同居していた。
そもそも大相撲の番付で「横綱」が示されたのは明治以降。それまでは「大関」が最高位だった。本来は常に優勝に絡むことが宿命づけられているが、 現行制度では、2場所続けて負け越さな
ければ維持できる地位なのだ。今場所も初日から3連敗。横綱であれば、進退をめぐり、周囲が騒いでいたはずだ。
大関在位は千代大海と並ぶ歴代最多の65場所に達した。だが、2けた勝利は過去4年間で1度のみで、09年は全6場所で8勝7敗。問題は制度にあるが、「大関」の地位を軽くした感は否め
ない。
一方、満身創痍(そうい)でも、ただ一人の日本人大関として気力を奮い立たせ、不祥事に揺れる相撲界を支えてきたのも事実。今場所も館内一の声援 を集めていたが、魁皇も千秋楽で39歳
となる。いつまでも魁皇人気に甘えることはできず、下からの台頭が待たれる。【飯山太郎】