原発事故収束していない元国会事故調委員が批判
規制委新基準“新たな安全神話” 衆院特参考人質疑
衆院原子力問題調査特別委員会は8日、東京電力福島原発事故調査委員会の黒川清元委員長らの参考人質疑を行いました。参考人からは「事故は収束していない」など政府や電力会社に
厳しい意見が相次ぎました。
![]() (写真)東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の元委員らに質問する笠井亮議員(手前左)=8日、衆院原子力問題調査特別委 |
国会事故調は昨年7月に報告書を提出して解散しましたが、国会として調査について説明を直接聞くのは初めて。元委員10人のうち9人が出席しました。
黒川氏は「事故はまだ明らかに収束していない。放射性廃棄物の問題、水もあるし、“ネズミ1匹”の問題もある。実地調査も実現していない」と指 摘。地震学者の石橋克彦元委員は、原子力規制委員会が策定中の新規制基準に関して「日本の原発の深層防護というのは大変不十分だ。世界最高水準の原子力安 全対策とはいえない」と指摘しました。
崎山比早子元委員(元放射線医学総合研究所主任研究官)は事故から2年の子どもをめぐる現状について、電気事業連合会など事業者が放射線のリスク を低く見積もるよう専門家に働きかけていたことを告発。「周辺の県の線量が高い地域も福島と同じように国の責任で健康管理を行う必要がある」と求めまし た。
規制当局が事業者の「虜(とりこ)」となっていると報告書で述べた体質は「変わっていない」(野村修也元委員)との指摘もありました。
また、東電の虚偽説明で調査を断念した科学ジャーナリストの田中三彦元委員は「事故原因とプロセスをすべて明らかにしなければ、新基準に反映されないのではないか」と述べ、国会主導での早期の現地調査を求めました。
質疑に立った日本共産党の笠井亮議員は、新規制基準さえ守れば「原発は安全」として原発再稼働を狙う動きについて「新たな『安全神話』に陥るので はないか」と指摘。田中元委員は「そうだと思う」と発言し、「崖っぷちの安全論」「3・11で何を学んだのか」と批判しました。
石橋元委員は、笠井氏が世界一の地震大国の日本が世界有数の「原発大国」だと指摘すると、「非常に怖いことだ」と答えました。
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東北電 電気料金値上げ申請
再稼働を前提に原発維持費など計上
四国電 使用済み燃料再処理費も
家庭向け電気料金の平均11・41%の値上げを申請している東北電力が、申請原価のなかに、現在、稼働していない原発維持費など383億円を計上していたことが分かりました。今後、公聴会などで批判の声があがるとみられます。
![]() (写真)大幅な値上げ申請をしている東北電力本店=仙台市青葉区 |
これは、電気料金値上げを審査する経済産業省の「電気料金審査専門委員会」(委員長=安念潤司中央大学法科大学院教授)に3日、東北電力が提出した資料で分かったもの。
提出資料によると、東北電力は、電力を購入してきた東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)と福島第2原発(福島県)や日本原子力発電(日本原電)の東 海第2原発(茨城県東海村)について、「新安全基準にもとづく安全性確認のための審査等を踏まえ、原価算定期間中の受電発電量を策定した」として、年平均 23億キロワット時を「購入」することにしています。
現在停止中の原発の再稼働を前提にするもの。これによって、東北電力が、東電、日本原電に支払う購入電力料(原発を維持管理する費用)は、人件費22億円、修繕費56億円、委託費25億円、減価償却費80億円など計383億円にものぼっています。
東北電力は、停止中の東通原発(青森県)の再稼働を見込んでおり、使用済み燃料再処理費用として42億円も料金値上げの申請原価に含めていることも分かりました。
一方、平均10・94%の値上げを申請している四国電力が3日、電気料金審査専門委員会に提出した資料によると、62億6700万円の使用済み燃料再処理費用を申請原価に含めていました。同電力は、伊方原発3号機(愛媛県)の再稼働をもくろんでいます。
3日の専門委員会では、消費者団体から購入電力料や、石炭や液化天然ガス(LNG)の調達などとともに、電力会社の企業内議員への給与支払いなどについて質問が出されました。
今後、専門委員会は、購入電力料や高すぎる役員報酬などの人件費などについて検証することになります。しかし、2日に経産省が値上げを認可した関 西電力の場合、専門委員会は発電していない日本原電に払う購入電力料466億円の原価算入を認めており、国民的監視が必要です。