北の挑発で食卓まで変わる?…ワタリガニ競売量7割減少 韓国中央日報日本語
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12日の仁川・甕津水産卸売場。ワタリガニ、アカエイが見える。低水温と北朝鮮の挑発の影響で、春のワタリガニ漁獲量は例年に比べ40%ほど減っている。昨年のこの時期、ここでは一日のワタリガニ競売量が12トンだったが、この日は3分の1の約4トンだった。 |
経済は“心理”だ。連日の北朝鮮の敵対的言動はワタリガニ漁船を港に釘付けにし、そうでなくとも不況に苦しむ企業や家計など経済主導者をさらに委縮さ せている。恐怖の心理は国外がはるかに大きくて深い。海外企業関係者が戦争を懸念して入国を延期し、韓国に来る観客数も減った。経済全般に広がる不安感と 不確実性を除去するために政府がより積極的に対応すべきだという声も高まっている。こうした中、心理かく乱を目的とする北朝鮮に経済まで「過敏反応」する 必要はないという指摘も出ている。
◇“操業に支障”延坪島の漁獲量が急減
12日午前7時、仁川蘇莱浦口にある甕津水産卸売場は静かだった。船10隻が一度に入れる入り江にワタリガニ漁船は3、4隻しかな かった。午前8時になって始まったワタリガニの競売は7分で終わった。普段は20分以上続く。昨年のこの時期には一日のワタリガニの競売量が約12トン (約300ボックス)だったが、この日は3分の1の4トンしかなかったからだ。イルヘ冷凍のチョン・ヘヨン常務は「北朝鮮の挑発のため今年のワタリガニ漁 が影響を受けている」とため息をついた。
通常、春のワタリガニ漁は4-6月の3カ月間。しかし今年は3月から始まった北朝鮮の挑発のため、ワタリガニ漁を開始できず、危機を 迎えた。例年なら5月末-6月初めごろ北朝鮮が北方限界線(NLL)を口実に西海(ソヘ、黄海)で挑発を始めるが、今年は2カ月も早かった。さらに3日に は延坪島で漁船を盗んだ脱北者(28)がNLLを越えて北へ渡ったため、延坪島ワタリガニ漁は事実上“統制状態”となった。
チョン常務は「今年は低水温のため、そうでなくてもワタリガニが少ないのに、今月に入ってワタリガニ漁船の操業日数も4、5日にしか ならない」と話した。このように操業が大きく減り、延坪島ワタリガニ漁船は1週間に2回しか仁川に入っていない。冬に西海で見られた低水温現象のため、こ の春のワタリガニ漁獲量はさらに減る見込みだ。
産地価格が上がり、小売りの大型マートも苦労している。ロッテマートのイ・ヨンホ水産チーム課長は「10年間ほどワタリガニを取引し ているが、競売価格が1キロ4万ウォンを超えたことはほとんどない」とし「価格が高ければ消費者が購入しないので、どうすれば品質が良い商品を低価格で確 保できるか悩んでいる」と語った。
◇韓・ブラジル経協委のソウル開催が取り消し
問題はワタリガニだけでない。全国経済人連合会(以下、全経連)が25日にグランドハイヤットホテルで開催する予定だった「第5回 韓・ブラジル経済協力委員会」も、行事を目の前にして取り消しになった。今回の行事では、ブラジルの主要州代表と現地企業関係者30人が訪韓し、鉄鋼・エ ネルギー・自動車など両国間の戦略産業協力について集中的に議論する予定だった。
全経連の関係者は「ブラジル現地メディアが韓半島戦争勃発の可能性を繰り返し報道し、韓国訪問に危険を感じたようだ」とし「駐韓ブラジル大使館などいくつかの経路で安心させようとしたが、限界があった」と説明した。
◇韓国行き国際線、ホテル予約率も低下
観光・航空業界も北朝鮮リスクの影響を受けている。円安のため日本人観光客が例年より減っている中、他国の海外旅行客も予約を取り消 す例が増えている。外国人の入国は先月28日の3万7000人から6日には2万4000人へと36%も減った。大韓航空は今月、韓国行き国際線の予約率が 前年同期比6ポイント減の72%だった。大韓航空の関係者は「円安まで重なった日本発の予約率(67%)が14ポイント落ちたのはやむを得ないとしても、 着実に増えてきた中国発までも6ポイント落ちた」と話した。
外国人の入国が減り、ホテル業界も予約率も10-30%減っている。船便も同じだ。1日、中国人観光客500人が乗船する予定だった 中国青島-仁川港のカーフェリー号は運航は取り消した。ロッテ観光の関係者は「北朝鮮のミサイル発射で安全を心配する声が高まり、例年より中国人観光客が 10-15%ほど減った」と説明した。
流通業界も非常事態となった。中国政府が11日から地方政府を通じて旅行会社に緊急通知文を送り、韓国旅行業務を慎重に扱うよう指示 したからだ。ロッテ免税店は中国人相手の売上高が全体の30%(4月基準)に達する。同社の関係者は「8日まで中国ショッピング客に対する売り上げが前年 比で150%増えていたが、中国人観光客の訪韓が減ったことで影響が予想される」と述べた。
◇靴下・下着生活用品の生産も打撃
開城(ケソン)工業団地が暫定閉鎖され、ストッキング・靴下や下着類など生活用品も北朝鮮リスクに露出した。ロッテマートのPB商品 のストッキングは、開城工業団地の稼働中断で供給量が半分に落ちた。流通会社はベトナム・インドネシアなどに生産地を移しているが、航空便など物流費のた めにコストが5%ほど上がった。
専門家は北朝鮮リスクが長期化すれば、海外投資の誘致にも影響が生じるとみている。実際、“異常信号”が感知されている。
KOTRA(大韓貿易投資振興公社)が海外12カ国の投資機関14カ所を対象に対北朝鮮問題の影響を尋ねた結果、「影響はない」とい う回答が9人(64.2%)だった。KOTRAの関係者は「先月末の調査では、ほとんど『影響はない』と回答していた。韓国に対する投資の魅力が冷めるよ うな感じだ」と説明した。
◇過敏対応より落ち着いた対処を
貿易協会は南北教育チームを中心に状況分析を行い、開城工業団地入居企業協会を通じて北朝鮮の状況変化をモニターしている。韓国経済 研究院のキム・チャンベ博士は「今回のように北朝鮮リスクが長引くのは、この10年間では珍しい。過敏対応するよりも落ち着いて対処し、内需と経済心理を 回復させる処方が必要だ」と指摘した。