北朝鮮情勢:米韓、世論沈静化に躍起 過度の刺激懸念
毎日新聞 2013年04月09日
【ワシントン白戸圭一、ソウル澤田克己】
北朝鮮の挑発的言動で朝鮮半島情勢の緊張が高まる中、米韓両国 が抑制的な姿勢を見せ始めた。韓国政府は特に、「戦争の危機」に言及する米メディアの報道に「北朝鮮を刺激する」(国防省当局者)との懸念を強めている。 過剰な圧力が北朝鮮を刺激し、かえって緊張を高めたと指摘されていることが背景にあるようだ。
米国のカーニー大統領報道官は8日の記者会見で、中国やロシアが北朝鮮に挑発の自制を促していることに ついて「中露の努力を歓迎する」と述べ、両国の努力による緊張緩和への期待感を示した。政権高官は記者会見などで、弾道ミサイル発射をちらつかせる北朝鮮 の行動について「長年のお決まりのパターン」との言い回しを多用し、強い言葉での非難を控えている。
ロイター通信によると、米国防総省は9日に予定していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)ミニットマン3の発射実験を延期した。北朝鮮の挑発的言動への対抗措置だという誤解を与え、北朝鮮を過度に刺激する恐れがあると判断したという。
米国は当初、韓国で実施中の米韓合同軍事演習に戦略爆撃機B52やステルス戦闘機F22などを参加さ せ、公開する対応を取った。朝鮮戦争休戦協定の「全面白紙化」などと主張する北朝鮮の暴発を抑止する効果を狙ったものだが、北朝鮮はさらに挑発の度合いを 高めて対抗している。
このため4月に入ってから、圧力強化への懐疑論が出てきた。これに加え、北朝鮮の動向に対する不安感が米社会で急激に高まってきたことが、オバマ政権が緊張緩和へ向けた軌道修正を図っているように見える背景にあるようだ。
米国の主要メディアは3月下旬以降、北朝鮮について前例がないほど集中的に報道。米CNNテレビは連 日、「戦争の危機」を示唆し、キャスターが「次に発射されるミサイルは米国民を危険にさらす可能性がある」と発言した。CNNは今月8日には、北朝鮮を米 国にとっての差し迫った脅威と見なす米国民がこの1カ月で13ポイント増え、過去最高の41%に達したという世論調査結果を伝えた。
韓国政府も、ソウルで北朝鮮情勢を取材する外国メディアに過熱報道をしないようにと働きかけを強めている。韓国政府高官は9日、北朝鮮がミサイル発射や核実験をする可能性があるとの見方を示しつつ、「全面戦争に発展する可能性はない。むしろ米国メディアの方が心配だ」と指摘した。