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ソウル大学のイ・グン碩座教授(経済学)は、現在の世界経済の混沌の根底には米中の経済力対決があり、ここからあらゆる問題が派生していると指摘する。

2022-07-01 | 中国をしらなければ世界はわからない

「韓国の所得、日本抜く『歴史的事件』…

英国抜いたアイルランドは祭りも」(1)

登録:2022-06-30 03:08 修正:2022-07-01 07:51

 

[インタビュー]イ・グン|ソウル大学碩座教授 
 
韓国、2年前のPPP所得で日本抜く「経済史的事件」 
中国の伝統製造業は韓国を追撃中、デジタルはすでに抜く 
米中の経済規模は20~30年間ほぼ同じ、G2時代は長い見通し
 
 
ソウル大学経済学科のイ・グン碩座教授(元国民経済諮問会議副議長)が23日午前、ソウル大学の研究室で本紙のインタビューに応じている=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

 世界経済に地殻変動が起きている。中国が世界最大の経済大国である米国の座を虎視眈々と狙っている。このような中国の浮上に脅威を感じた米国は、同盟国や友好国を中心としたグローバルサプライチェーンの再編に乗り出している。その過程で大国の保護貿易主義が猛威を振るい、貿易で生きている韓国のような国は「クジラの喧嘩で海老の背が弾ける」状況に直面している。

 ソウル大学のイ・グン碩座教授(経済学)は、現在の世界経済の混沌の根底には米中の経済力対決があり、ここからあらゆる問題が派生していると指摘する。同氏は、米中の経済規模は2030年代中盤には横並びとなり、20~30年間は抜きつ抜かれつすると推定する。そして両国が協力ではなく今のように対立的状況を続ければ「世界経済にとって、それは災いとなるだろう」とし、すでにそのような兆しは現れつつあると警告する。韓国のような中堅国が力を合わせ、多国間主義と規範にもとづく国際秩序を作るべきだとの声を積極的にあげていくべきだと同氏は提案する。

 イ碩座教授は、後発国が先発国に追いつく、いわゆる「経済追撃論」研究の世界的な権威だ。同氏は、何が国の経済的な興亡盛衰を決定付けるのか、その鍵を解く研究作業に邁進してきた。同氏は、技術サイクルが短い産業であればあるほど追撃が容易であり、暗黙的ノウハウが必要な産業であればあるほど追撃が難しいということを、国、産業、企業の特許資料を用いた実証分析で明らかにした。このような功績により、非西欧圏の大学教授としては初めて、2014年に国際シュンペーター学会の授与するシュンペーター賞を受賞している。ソウル大学は卓越した学問的業績で国際的名声のある教授を碩座教授に選定しているが、同氏は2021年に選ばれている。2021年3月から今年3月までは国民経済諮問会議の副議長を務めた。本紙は23日、ソウル大学の研究室でイ碩座教授にインタビューし、主要国同士の経済追撃の現状と、韓国がどのように活路を模索すべきかを聞いた。

-韓日、韓中、米中は、企業や産業の競争力、ひいては国の経済力をめぐって追いつ追われつの様相を呈しています。このような現象について長く研究なさっていらっしゃいました。まず、経済追撃論を分かりやすく説明してください。

 経済追撃の追撃という言葉は、先発者と後発者との格差を縮めることを意味します。3つの「つい」と言いますが、追撃、追い越し、墜落の3つを指します。追撃は格差を縮める過程であり、抜けば追い越し、逆に格差が広がれば墜落です。

-追撃に必要な核となるものは何ですか。

 私は「追撃するだけでは追撃できない」と言っています。追撃の逆説です。ここで後発者による先発者の追撃は模倣を意味しますが、模倣だけでは先進国を越えることはできないということです。最初は先進国から学びますが、後には先進国と違うことをして革新を起こさなければ、追撃を越える追い越しはできないということです。産業は、その基盤となる技術の特性によって区分すると、サイクルの短い短周期とサイクルの長い長周期の技術産業に分けられます。情報技術(IT)産業のようなものは変化が速い。技術が速く変わるので、先発者の持っている技術がすぐに古いものになってしまいます。後発者が新たな技術によって急速に追いつくことができるということです。韓国はITによって急速に追撃したのです。ですが先進国の本当の強みは、サイクルの長いバイオだとか素部装(素材・部品・装備)のような産業をしっかり握っているということです。

-韓国は、短周期産業は追いついていますが、長周期産業はどの段階まで来ていますか。

 今、追っているところです。バイオはすでに仲間入りしており、コロナのおかげで追撃が加速しています。この分野は参入障壁が高くて韓国のものが使えない産業だったのですが、急を要するから韓国製の診断キットを持っていって使ったのです。(2に続く)

パク・ヒョン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
 

「韓国の所得、日本抜く『歴史的事件』…

英国抜いたアイルランドは祭りも」(2)

登録:2022-06-30 03:07 修正:2022-07-01 07:51
 
 
ソウル大学経済学科のイ・グン碩座教授(元国民経済諮問会議副議長)が23日午前、ソウル大学の研究室で本紙のインタビューに応じている=ユン・ウンシク先任記者//ハンギョレ新聞社

(1の続き)

-韓国は2017年に1人当たりの国民所得が3万ドルを超えましたが、米国に比べればまだかなり低い。追撃はどの程度進んでいるのでしょうか。

 物価水準を考慮した購買力平価(PPP)を用いて1人当たりの国民所得を比較してみれば分かります。この基準によると、韓国は2018~19年ごろに米国の70%を超えました。英国、フランス、イタリアと似た水準です。韓国は西欧列強になったのです。ドイツは米国の90%で、韓国の先を行っています。日本については韓国が2020年ごろに追い越しました。韓国が72%ほどで、日本は最近70%以下に落ちました。歴史的な大事件です。植民地にされた国が植民地支配を行った国を超えた3つ目の例です。19世紀には米国が英国を、そして数年前にはアイルランドが英国を超えました。アイルランドは英国を超えたとして祭りもしています。日本もこのことに非常に気を使っています。

-しかし日本は、依然として源泉となる技術力や素部装産業の競争力が韓国よりはるかに高い。

 素部装産業はサイクルの長い産業なので追撃が難しく、追撃には長い時間がかかります。サイクルの短い産業は速い追撃が可能で、サイクルが長ければ長いほど追撃が遅れるという追撃の法則が当てはまっているのです。日本の強みは蓄積された知識、熟練、職人気質ですが、これはアナログ技術なのです。アナログ技術が支配し続けていたら、韓国は日本を越えられなかったはずです。デジタル革命というのは、ひとつのチップを入れれば同じ性能が出せるのです。日本の蓄積された熟練が急に必要なくなる瞬間が来たのです。デジタル革命がなかったら、サムスンはソニーを越えられなかったはずです。デジタル革命による破壊的革新が追撃と追い越しを加速したのです。日本は自らの強みであるアナログ技術に執着し、デジタルへの乗り換えが10年遅れました。韓国は先にデジタルに行ってしまったのです。このような機会を後発国が先取りして活用すれば、その時から追い越しが始まるのです。

-その時期が2000年代初めごろですね。

 データ技術が本格化したのは2000年代からだから、その時から韓国は日本を越えるための足場を確保し、1人当たりの所得は20年後に超えました。米国に出願した特許数で見ると、すでに1990年代末にはサムスンがソニーを上回っており、売上高や企業価値は2005~6年ごろに超えています。まず技術力で追い越し、次に市場での追撃が発生します。そして企業レベルの追撃がまず起こり、国家レベルでは後に起こります。

-韓国は今や中国に追い上げられる立場になりましたが、中国はどのくらい追い上げてきていますか。

 韓日間で起きたように、サイクルの短い携帯電話やディスプレイのようなものは、中国は韓国とほぼ対等になりました。自動車だとか素部装は時間がかかるでしょう。ですが自動車は、中国はガソリンエンジン車をすっ飛ばして電気自動車で追い越しつつあります。ガソリン車はどうせ負けているのだから諦めて、電気自動車へと飛躍してしまったのです。これも後発者の重要な戦略です。電気自動車が出現していなければ、中国はずっとガソリン車で追いかけてくるしかなかったでしょう。また中国のアリババ、テンセント、バイドゥのようなデジタルプラットフォーム企業が韓国を追い越しつつあります。伝統製造業では韓国をまだ追撃している一方、新興のデジタル産業では韓国を追い越して米国とやり合っている状況というわけです。

-中国が経済力で米国をいつ追い越すかは世界的に見ても大きな関心事です。どのように展望されますか。

 1人当たりの国民所得と経済規模の2つの指標で見ることができます。1人当たりの所得(PPPによる)は、中国は米国の30%に達しています。この指標が40%になると高所得国、先進国だそうです。韓国は1990年代半ばに40%に達し、経済協力開発機構(OECD)に加盟しました。中国は、私の試算では、これまでの発展のすう勢を単純に延長すれば、2030年代半ばに40%台に達すると見られます。経済規模(名目GDPによる)は、過去5年のすう勢を延長すれば、2030年代半ばごろに米国と同水準になります。ですが、中国が急速に追い越すというよりは、米国と経済規模が似たような状態で20~30年は行くと思います。そして2050年ごろには再び米国の経済規模が中国より大きくなると思います。なぜなら、中国は高齢化が激しい一方、米国は移民の流入で人口構成が相対的に若いからです。私は、世界経済は今後かなりの期間にわたってG2時代となると思います。ですが、このように両国が対立を続ければ、それは世界経済にとって災いです。今すでに世界経済が不況、恐慌のようになっているのは、まさに米中が対立を続けているから、そこからあらゆる問題が起きているのだと思います。韓国のような通商で生きる国にとっては、とてもよろしくない環境です。(3に続く)

パク・ヒョン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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