[土曜版] 親切な記者たち
今年4月、京畿道平沢市玄徳面黄山里から見た西海線鉄道安仲駅の工事現場。道路を挟んだ3筆地(総面積2万6201平方メートル)の畑は、ある農業法人が一部を買い取り、2016年から全国各地に分割して売却した=パク・スンファ「ハンギョレ21」記者//ハンギョレ新聞社
「地価が高騰しています。高すぎて田舎の人は手が出ません」
京畿道平沢市玄徳面黄山里(ピョンテクシ・ヒョンドクミョン・ファンサンリ)で会ったある農業従事者は、こう言いました。黄山里はカフェやコンビニ一つない静かな農村です。にもかかわらず、これまで都市を離れたことのない私にとって、「見慣れない風景なのに、不思議とどこか親しみのある」場所に感じられたのです。この村の第一印象は、例えるなら「できたばかりのアパート周辺に不動産屋ばかり並んでいる、がらんとした商店街みたい」というものでした。近くに店といえるほどものは一軒も見当たらない静かな村に、不動産屋だけが10軒以上ありました。
こんにちは。ハンギョレが発行する時事週刊誌「ハンギョレ21」のピョン・ジミンです。3日付のハンギョレ1面(「ハンギョレ21」第1361号)に掲載された「『投機畑』となった京畿道の農地、平沢は外部からの購入が84%」の記事を取材するため、平沢市の西海線安仲(アンジュン)駅の工事現場と周辺村に行ってきました。京畿道の農地が、農業よりも投機目的で取引されている現実を確認するためでした。
ここ3年10カ月間の京畿道の農地取引16万4145件のうち、農地が属する市郡と購入した人が居住する市郡が一致しないケースは、10万5639件(64.4%)に達していました。京畿道内でも外部の人による購入の割合は平沢市(ピョンテクシ)が84.2%で最も高く、平沢市内でも黄山里は97%で最上位グループでした。実際、ここでは不動産屋が村の進入路に店を構え、外部の人を迎えていました。そして都市でよく見かける現象を目撃することができました。
黄山里の土地の平均価格は最近20年間でおよそ7倍以上も上昇しました。外国人の投資を誘致するための特別経済区域の一つである黄海経済自由区域の造成などで、平沢市に吹き荒れた開発ブームが広く影響を及ぼしましたが、この過程で特に黄山里近くの西海線安仲駅の開発が大きな影響を及ぼしました。
黄山里村の住民の話を取材しているうちに、「ジェントリフィケーション」という言葉が思い浮かびました。立ち遅れた地域の発展が進む過程で、追い出されるかのように、地元の住民が慣れ親しんだ地を離れざるを得なくなる現象です。企画不動産をはじめとする投機が数年間続き、黄山1里の農地面積の67.6%はすでに外部の人の所有になっています。様々な理由で黄山里の住民の多くが小作農になりました。農業をしようとしても、黄山里の土地には手が出ません。高すぎて採算が取れないからです。
似たような“オーバーラップ”がもう一つありました。外部の人から土地を借りて農業を営む地元住民の境遇が、都市の非正規労働者のように見えました。ここ3年10カ月間で外部の人が農地を購入した割合が96.5%の玄徳面道垈里(トデリ)で聞いた話です。「小作人が農業直払金をもらうために賃貸借契約書を書いてくれと言うと、地主が『もう農業をやらなくていい』と言って他の人に渡してしまうんだよ。直払金を受け取る小作人は50%にも満たないと思う」。土地の所有者が譲渡所得税の減免を受けるために自ら農業を営んでいるかのように虚偽の申告をするケースが多く、実際の農業従事者たちは農業を営む見返りに政府から受け取るべき「公益直払金」がもらえないというのです。勤労契約書なしに働いて労働法の保護を受けられない数多くのフリーランス労働者の話が思い浮かぶのは、偶然でしょうか。
平沢市安仲邑三井里(サムジョンリ)に住むイ・ヨンスさん(65)は「農村が都市化している」と表現しました。いい意味ではないでしょう。イさんがそう言ったのは、企画不動産会社がバスで都市の人々を連れてきて、村の田畑を買っていく姿を見たからだそうです。農村の田畑が都会のマンションやアパートのように取引されているという話でしょう。住まないのに住宅を何軒も保有する行為と、農業を営む気もないのに農地を購入する行為は、本質的には同じだという意味も込められているのでしょう。
京畿道の農地問題を取材しようと思ったのは、韓国土地住宅公社(LH)職員の第3期新都市投機疑惑のためでした。この事件を目の当たりにし、「LHの職員さえ処罰すれば公正さが回復するのか」という疑問を抱くようになりました。憲法や法律にも、農地は農業を営む人しか所有できないと書いてありますが、現実はそれとはかけ離れています。高位公職者の聴聞会で「農地法違反」が問題視されるのは見慣れた風景です。ここ3年10カ月の間、ソウル市民が平沢市民より平沢の農地を2倍多く購入しました。ソウル市民より平沢市民の農業従事者の割合が49倍も高いというのに。公職者は摘発されれば世間から非難されますが、平沢の農地を購入した“ソウルの農業従事者たち”は、そのような心配など微塵もないでしょう。農村の高齢化とあいまって、農地は本来の目的を失い、次第に「投機性不動産」へと変わりつつあります。それでも村を守りながら農業を営む高齢者たちがいなくなったら、農地には値札だけが残るでしょう。10年、20年後、都市の人たちのショッピングモールになった農村は、どんな姿でしょうか。
/ハンギョレ新聞社
ピョン・ジミン「ハンギョレ21」記者 (お問い合わせ