理性

昔、多分６歳ぐらいだろうか
母が私になにかを諭していた
禁止事項だ

大きな水たまりの中をわざと歩く
犬小屋の中で犬と一緒に過ごす
夜の庭で遊ぶ
風の強い日にその力を受けてみる
雨の中を傘もささずに歩きたい
たとえば、そんなこと
どれも禁止事項
実際はすべてやったけど・・・

いけないと言われてもやりたい時は
どうすればいいの
悩んだ私は、こう尋ねた

母は、苦笑しながら
それでもしないのが理性だと言った

私の中でその言葉は新鮮で、大人の香りがした

今は、こう思う
禁止事項とは、
他人の有形・無形の財産を傷つけてはならない
自分のそれも
それだけでいい
ただ、自分の行動の結果には責任を持てと

理性を持つのが人間なら
理性を失うのもまた人間
どちらも、それはそれで、素敵なことだ

ある日・・・天気の良い日だった
春浅い日だろうか
７歳の私
学校帰りに友達と
かつては沢山あった空き地の芝生に寝転んだ
青い空、流れる雲
なんて気持ちがいいんだろう・・・

ウールのカーディガンに芝をいっぱいつけて帰った私に
母は、自由を得た代わりの責任の重さを教えてくれた

ウールについた芝は取れにくい・・・
私は、この時、理性の意味をはっきり理解した