常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

時雨

2014年11月06日 | 日記


この季節になると時雨ということばが、なぜか懐かしく響く。本来、時雨は急に雨が少時間降ることで、北風が強く吹く日に起こる。この風が山に当って雨を降らせるが、山を越して残っている水蒸気が風に送られて降らせる雨である。少時間で、降る範囲も限定的である。

神無月降りみ降らずみ定めなき時雨ぞ冬のはじめなりける 詠み人知らず 後撰集

この歌は、時雨を言い当てた名歌として知られる。晴れていても急に降るから、定めなきと言ったが、時雨ははかない人生のシンボルとして考えられてきた。きのうまで親しく話をしていた人が、しばらく顔を合わせず「あれ!」と思っていると、病を得て入院したという類の話は毎日のように聞くような気がする。

陰暦の10月12日は、芭蕉の死んだ命日にあたる。この日を「時雨忌」という。芭蕉の死んだ11月23日は、冬の初めで時雨の降りやすい季節だから、こう呼ばれたのだろうが、蕉門の俳句集『猿蓑』の冒頭の句は

初時雨猿も小蓑をほしげなり 芭蕉

で、時雨の句が置かれている。その巻頭の辞に、芭蕉が伊賀越えをする山中で、猿に小蓑を着せてこの句を詠んだところ、猿は断腸の叫びをあげて啼いたとの故事を伝えている。


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