雨のため土曜会の山行は2週続けて中止になった。知人に誘われて、飯田郷土史研究会の竜山登山に参加した。きのうまでのぐずついた気候は一転、朝方は雲ひとつない青空に恵まれた。飯田公民館を車で6時に出発。登山口を5分ほど登ると、たちまち西蔵王の放牧場に出る。数少ない牛たちが、登山の一行を不思議そうに眺めていた。瀧山は蔵王温泉を火口とする外輪山で、温泉側から見れば急な火口壁をなし、その爆発のすざましさが見てとれる。登山道となる放牧場のあたりにも爆発で飛ばされた大きな岩が散見される。牧場内には、オオヤマザクラの大木が散在し、花の季節には山形市民の目を楽しませる。
登山道は深い緑と、ツツジやイワカガミなどの春の花が咲き、初夏の山の景色を堪能。気温はこの季節にしては低く、暑さによる疲れもなく快適な山行となった。ほとんどの参加者が、飯田地区の人たちで、山の麓に住み、毎年開かれる登山に数多く参加している人たちで、和気あいあい、うらやましいほど、山登りを楽しんでいる人たちであった。参加人員25名、山道には長い行列ができた。
山寺を開いた慈覚大師が、それよりも前に天皇の命を受けて、この地を聖地と定めたと伝えられている。ある年、干ばつで悩む村を大師が訪れ、羽龍沼の辺で、雨乞いの祈祷をした。すると羽を持つ龍が沼から天空へ飛び上がり、雨を降らせて山奥へと姿を消した。このことから、沼は羽龍沼と呼ばれ、龍山はサンズイをつけた瀧山と呼ばれるようなったという伝説がある。
頂上に祀られているのは、瀧山大権現である。薬師如来が神となって衆生を救うため現れものである。飯田地区の人々は信仰心が篤く、神社にお賽銭をあげ、帽子をとって、柏手を打って拝礼する。予定より1時間も早く、10時には頂上に着く。ここで早めの弁当。長くとどまるには寒いくらいの気温と風で、スキー場のコースを使って温泉へ向かう。
この日の一番の楽しみは、温泉とビールが付く懇親会である。「かわらや」で温泉を使い、冷えた身体を温める。少し酒が入り、一人ずつの自己紹介が始まると、会場は一気に盛り上がる。1年ぶりの再会をよろこぶ人、このイベントを開いている幹事スタッフへの感謝、過去の登山の様子やいきさつ、かわらやの女将のおもてなしなど、初めて参加する私は、人の輪がこれほどの楽しい時間を生むのかと、驚きを禁じ得ない。