芸工大の裏の畑で、栗の花が咲いていた。花というには、華やかさを欠く。一見毛虫のように見えるが、遠目で木を覆いつくすように咲いている様子を、美しいと思った。雨の日など、花の匂いがたちこめると、息苦しささへ、感じることがある。花の形状と、秋になる実とのあいだには、こうも落差があると思うと面白い。
咲きそびえ雲と渦巻く栗の花 水原秋桜子
同じ路傍にマンサクの実を見つけた。まるで孵化したばかりのひよこがひとところに集まっているみたいだ。この実がマンサクである、と知るには観察が必要だ。この実から、春先のあの小さな黄色の花を想像することはできない。春の花のさきがけとして咲いているのをカメラに収めているから、この実がマンサクであることが分かる。植物はみな、春から夏へ花を咲かせ、結実していく。実にはっきりとした周期を描いて、自らの子孫を増やすことに余念がない。