朝、澄みきった青空が目に飛び込んできた。
滅多に見られないほどの、きれいな青空だ。
朝のニュースを聞くと、日中は気温が上が
り、37℃にもなるという。熱中症で搬送さ
れる人の数がウナギ上り、死者の数も大雨
の被害と変わりないほどである。きれいな
はずの青空の向こうに、ふと恐怖を感じる。
妻の友人が、昼飯を食べに山形駅に来るか
ら、そこへ出て来い、との電話が入る。老
人が出歩けるような気候であることを、考
えない行動に、思わずダメを出した。
10時を過ぎて、雲が出てきた。青空の中の
雲のには趣がある。晩唐の詩人、杜牧も雲
を詩に詠んでいる。
尽日雲を看て首回らさず
無心都て道う才無きに似たり
憐れむべし光彩一片の玉
万里晴天何れの処より来る
「一片の玉」は、青空にぽっかり浮かんだ
雲を指している。杜牧は、雲を詠みながら
世間と相いれない孤独な心象を雲に見てい
る。人は同じ景色を見ても、様々な思いを
心中に抱く。同じような雲を見た夏目漱石
は、大患の病床で、白雲に癒されている。