台風13号(サンサン)が、仙台沖を通過
中。テレビでは、海にできる波の花や白
波の様子を映し出している。時速20㌔と
いう遅い速度で北上しているので、なか
なか台風一過とはならない。この地方で
は少しの雨、風もそれほど強風とはなっ
ていない。
台風の白浪右往左往して 山口 誓子
夏目漱石に『二百十日』という小説があ
る。友人と阿蘇を旅し、台風のなかで山
中で道に迷って往生する話が出て来る。
「時計はもう五時に近い。山のなかば
はたださえ薄暗くなる時分だ。ひゅ
うひゅうと絶間なく吹き卸す風は、
吹くたびに、黒い夜を遠い国から持
ってくる。刻々と逼る暮色のなかに
嵐は卍に吹きさむ。噴火口から噴き
出す幾万斛の煙は卍のなかに万遍な
く捲き込まれて、嵐の世界を尽くし
て、どす黒く漲り渡る。」
二人は、道に迷って途方に暮れるが、強
がりの冗談を言いながら山中を右往左往
する。そして、その日が二百十日である
ことを思い出す。
行けど萩行けど薄の原広し 漱石
この遭難寸前の難儀を詠んだものであ
る。この旅に同行した友人は同僚の山
川信次郎教授である。