8月11日は山の日。数年前から始まった国民
の祝日である。山友会が選んだ山は、最も近
い百名山、蔵王山である。
中丸山を経て、蔵王熊野岳へ。天気予報は曇
り後晴れ。一行はガスが立ち込めるなかの登
山開始であったが、小一時間もすれば、日が
さしてくるものと信じて、中丸山の急坂を軽
い足取りで登って行った。この登山口の前に
は仙人沢に架かる吊り橋がある。数年前の夏
休みここへ遊びに来た小学生が橋から落ちて
渓流に転落、助けようとした子供会の会長が
沢に流されて犠牲となった悲しい思い出の場
所でもある。
中丸山の登山道は、登り始めてすぐに
急登になる。沢沿いの道であるので、
ブナやナラの樹々が、霧に霞んでいる。
こんな光景もまた、日常では見られな
い幻想的な景色だ。午前8時に歩き始
めて、1時間、2時間を経過し、中丸山
の山頂に着いても、霧は一向に晴れて
こない。本日の参加者9名、初参加の
Mさん、ケガから復帰したIさんの懐か
しい顔があった畑谷城で案内のボラン
ティアをしているというMさんから様
々な城の知識をお聞きし興味深かった。
木道を登り、矮小化したシャクナゲ
やナナカマドの道を登り切ると突然
荒涼とした石だけの道に出る。
登山道を示すポールと石を並べてよ
うな道だが、所々にヤマハハコの小
さな株と石の陰でそっと花を咲かせ
るコマクサがあった。もう最盛期を
過ぎて、咲き残りのコマクサだが見
つけるとうれしい。歩を進めるごと
に静かに咲くコマクサが迎えてくれ
る。茂吉の歌碑を見、熊野神社の陰
で風の来ない場所を選んで昼食。
ここのボランティアの監視員の人か
ら話を聞く。トレイルランの練習を
する若者たち、お釜見物の家族連れ
など多くの人に出会う。
もう中丸山の登山道をテクテクと登
るのは珍しいらしい。監視員の人は
「この道を来たのは誇っていい財産
ですよ」と話してくれた。
地蔵から刈田へ向かう道を来ると、お
釜の見える地点に着くと、大勢の人が
集まっている。一陣の風がきて立ち籠
めていた霧が払われると、底の方から
エメラルドグリーンのお釜が顔を出す。
何度も見ているお釜だが、霧の中から
顔を出す光景は、新鮮でその美しさが
引き立てられる。前回見たのは何年前
であったか、孫たちを連れて来た時の
印象が頭に浮かぶ。
御田の神からライザスキー場のゲレンデ
へ。下山も結構足の筋肉を使う。スキー
場だけに、その勾配も半端ではない。出
たばかりのススキの穂が風に揺れる。立
秋を過ぎて、高原には秋の気配が漂い始
めた。前回見られなかったアサギマダラ
風に乗ってゆったりと舞っている。
午後3時、車を置いた登山口に着く。ゲレ
ンデに来てようやく日がさしてくる。
今年の山の日、長く記憶に残る一日であ
ったような気がする。帰路天神の湯で汗
を流して、この日の山行は終了。