常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

イカリ草

2021年04月29日 | 
野山にイカリソウが咲いている。昨日の天気予報で、今年はどの花も1~2週間早く咲くと言っていた。この花も早めの開花である。薄い黄色の花はどこか気品を感じさせる色だ。ただ、角のよう突き出す花弁は船の錨を下げたような形をしている。この長い花弁の中の蜜を吸うには、長い嘴を持つ蝶がやってきてその頭に着く花粉が花柱の頭について受粉する。自然の造形は、深い神秘に満ちている。

中国ではこの花を淫羊藋と呼び、強精に効き目のある植物として日本でも長く信じられてきた。52歳で若い妻を娶った小林一茶も、柏原の自宅に近い野山でイカリソウや黄精などを苦労して採取して、煎じて飲んだらしい。ところが戦後のなってイカリソウの成分を研究した人がいて、どう調べても強精に効果を出す成分が含まれていないことが実証された。植物学の牧野富太郎も「今日では淫羊藋説を信じる馬鹿者はいなくなった」と記している。

痩せ蛙負けるな一茶これにあり 一茶

一茶は沼の縁で、一匹の雌蛙をめぐって、数十の雄蛙が集まってきて闘いを始めるのを目撃している。やかましく鳴きながら、雄蛙が挑みあう。みると、痩せた蛙が隙を見つけて雌にしがみつくと、たちまち別の雄にひきづり降ろされる。思わず一茶が詠んだ句だ。一茶の生い立ちは、この痩せ蛙にも似て、決して強者の側にいることはできなかった。52歳にして初めて妻を娶ったことは特別の感慨があったに違いない。

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