
近所の坂巻川の桜が咲いた。まだ数輪、咲き始めである。去年の記録を調べると一週間ほど遅い開花である。気温が上がり室内の暖房も必要がないほどだから、咲いた桜は満開に向かってまっしぐらだ。去年まで花の咲く場所を目指して、車を走らせたが、だんだん歩いて行ける近所の桜に心を寄せるようになった。
よきものは一つにて足る高々と
老木の桜咲き照れる庭 窪田章一郎

桜の美しさはやはり青空のなか、朝日に照らされいるのが一番だ。時は春、花は桜。蕾だった桜の花が2,3輪、朝の穏やかな風が頬を撫でる、ヒヨドリがうれしそうに高鳴きして花のまわりを飛び回る。朝、至福の時間が過ぎていく。
さまざまな事おもひ出す桜哉 芭蕉

写真を撮りながら歩いていると、知り合いに出会った。「写真?」「ええ」と短い挨拶を交わす。最近、人との会話が短くなってきている。そういえば、別の人からはただ「こんにちは」と言っただけなのに、「車のタイヤを交換しました」と言ってくる。ウクライナでは悲惨な戦争が起きているのに、ここではコロナの流行以外には変わりのない日常だ。桜が咲いた、という些事が一番のニュースになっている。