のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

四、命のおわりに(2)

2016-08-22 | 童話 スケール号の冒険(第4話)

 

 

 

「よし、みんな、探査レーザーから目を離すな、何か変わったものがあったらすぐに報告するんだ。」艦長が元気一杯に命令した。

 「アイアイサー!」

 「アイアイサーでヤす!」

 スケール号は順調に飛び続けた。

 「艦長!斜め前方に何か巨大なものを発見!」ぴょんたが叫び声で報告した。

 「何か分かるか。」

 「多分、星だと思いますが、形がおかしいです。」

 「よし、スケール号、通常航行に戻れ。」

 艦長がスケール号に命令した。通常航行と言うのは、つまり普通の速さで飛ぶということだ。艦長もだいぶ操縦に慣れて来たので、つい専門的な言葉が出るようになって来たのだ。

 「ゴロニャーン」

 今まで光速で飛んでいたスケール号が通常航行に戻った。すると同時に、前方に集まっていた星たちが、全天に散らばって広がった。その前のほうにぴょんたが言った奇妙な星が見えている。

 それは星というより、雲の固まりのように見える。赤銅色の不定形な雲の広がりの中央により明るい球体の輝きがかすかに見えている。

 その中心の天体から、赤銅色のガスが全天をおおわんばかりに押し広がっているのだ。ガスの広がりは引き伸ばされるように横にたわみながら、今にもつぶれていきそうなゆらめきを見せている。

 「不気味でヤす。」

 「何か、ゾーッとしますね。」

 「これは星雲だが・・・、艦長、気を付けろ、この星は死にかかっているんだ。」博士が興奮した声で言った。 

  赤銅色のガスを撒き散らすことで、星がどんどん膨張しているのだった。おそらく元の星の何十倍も膨れ上がっているはずだと、博士は説明した。

  「それにしてもすさまじい光景ですね。」ぴょんたが耳をくるくる巻にして言った。

  それは確かにすさまじい光景だった。赤銅色のガスはもやもやと宇宙を征服するように広がって来て、スケール号をも飲み込むような勢いになって来た。

  「艦長、これ以上は危険だ。この星から離れるんだ!」博士が叫んだ。 スケール号は方向を転換して、ガスから逃げるような形になった。そのとたんに猛烈な爆発が起こった。

 一瞬、全天が目を開けていられないような明るさになり、スケール号は背中を思い切り突き飛ばされるような衝撃を受けて宇宙空間に弾き飛ばされた。

 スケール号の操縦室に激しい振動が伝わって来て、思わずみんなは手近にあるものにしがみついて自分の身を守った。が、眠ったままのぐうすかはそのまますっ飛んで行って、壁にぶち当たった。

  スケール号はぐらぐら揺れて、赤銅色のガスと共に宇宙のかなたに飛ばされて行く。

  「ぐうすか、大丈夫か。」艦長がぐうすかに駆け寄ったのはこれで二度目だ。しかし、ぐうすかは返事をしないし、いびきもかいていなかった。そこでぴょんたが駆け寄った。

  「ぴょんた!ぐうすかは寝ているのか、気を失っているのか、どっちだ。」艦長がたずねた。

 「頭に傷があります。」そう言ってぴょんたは救急箱をを取り出し、手際よくぐうすかの傷の手当をした。

 「ぐうすかの奴、眠ったまま気絶したようです。でもたいしたことはありません。すぐに気が付くでしょう。」

 そのうちにスケール号の揺れはおさまって来た。爆発によって、一瞬に大量のガスを吹き飛ばしたが、宇宙に広がるにつれてガスは希薄になって行き、スケール号も自由に動けるようになって来たのだ。振り返ると、もともと星があった位置のその中心に、青白く輝く小さな星が見えた。不思議なことに、その小さな星からは二本の鋭い光の帯が、正反対の方向に一直線に伸びていた。その光線は天を二分するようにどこまでも伸びており、宇宙を切り裂く刃物のように見えた。

 「星の一生が終わったのだよ。」博士が静かに言った。

 「これが星の最後なのですか。」

 「軽いガスは膨張して、爆発の勢いで吹き飛ばされた。その後に残ったのは星の重い部分だ。その重みのために、自分の体を支え切れずにどんどん小さくなってあんな大きさになってしまったんだ。あの小さな星をパルサーと呼んでいるんだ。」

  「あの刀のような光は何なのですか。」艦長が聞いた。

 「一種のレザー光線のようなものだ。あの光には触れない方がいい。スケール号がすっぱり切られてしまうかもしれない。」

 「まるで、ライトセイバーのようですね。」

 「そうだな。しかしこれは自然の営みなのだ。人間が造ったものとは違う。」

 「不思議ですね。」

 「宇宙の神秘って、こういう事をいうのでヤすね。」

  「ほんとに宇宙って不思議だスな。いったいどうなっているのだスか、さっぱり分からないだスが、頭がヅキヅキするほど不思議だス。」

  ぐうすかが頭を包帯だらけにして起きて来た。その姿を見て、みんなはどっと笑った。

  しかしその時、パルサー星の明るい輝きの後ろに、黒い影が潜んでいるのに気づく者はなかった。

 

(つづく)

 

 

 

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4 コメント

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楽しい (からく)
2016-07-15 12:56:58
いつも楽しく読ませていただいています。
目の前で映画をみているように、イメージが広がります。
これは、童話というよりは、一種のSFですね。
感心しきりです。
次回も楽しみにしております。
返信する
∞何か思い出しそうな光景☆ (トンチンカン真鹿子)
2016-07-15 14:37:42
のしてんてん様!驚天動地びっくり仰天です☆


超新星大爆発しましたね。

パルサー超高速度で回転をしている中性子星!

超重力超密度、角砂糖1個分が、

数億トンだそうですけれど、

このまま崩壊現象が起こりますと、

ますます超重力超密度となり、

ブラックホールとなるのでしょうね。

黒い影とは、ブラックホールのうぶ声でしょうか

みなさまどうぞご注意くださいますよう、

ぐうすかさん!大丈夫ですか☆

みなさまのご無事を、神速(心速)でお祈り申し上げます☆



けれども、ブラックホールも破壊されたものが

出口のホワイトホールまでに再生され

ホワイトホールの出口から誕生するのだとか、

ブラックホールはやがて、隣接宇宙とのトンネル通路となるのだとか、

いろいろ、この聖なる宇宙にとりましては、

重大な使命、任務を担っておられる可能性ありますね。




因みに、わたくしの場合、

わたくしには、中性脂肪星が、みっちり高密度で密着中、

なんとか、この中性脂肪星を、中性希望星に変えなければと

励んでいるところです。

夏は軽やかに爽やかに、過ごしたいです♪


それにいたしましても、今回のお話の光景は、

何か思い出しそうで☆込み上げて来るものがありますけれど、

思い出そうとしても思い出せません。

もどかしいです。なんでしょう ^ ネ ^ ; ;




  
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からくさんこんにちは (のしてんてん)
2016-07-15 14:38:51
ありがとうございます。

五次元を童話で書きなさいという恩師の言葉で始めたもので、最初は桃太郎のような昔話を意識していたいですが、いつの間にかこんなことになっていました・・・・・。

ま、とにかく楽しんでいただけたら、亡き恩師に顔向け出来るかもしれません。

ありがとうございます。
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一瞬幻惑、突然ワクワク (のしてんてん)
2016-07-15 14:51:54
こんにちは真鹿子さん。

からくさんへお返事書いてUPしたら、私の記事が真鹿子さんに返信しているではありませんか。

うろたえました。ようやく理由がわかりました。ようこそお越しいただきました。

私の悩みも中性子肪、お腹の周りが土星の輪になりそうで、ドクターストップもかかっております。

喉仏まで出てきているのに出てこない。それ出す方法知ってます?

逆立ちするんですって。(嘘です)^わ^
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