のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

ジイジと北斗(新スケール号の冒険)15

2022-08-18 | ジイジと北斗(新スケール号の冒険)

 

(8)-2

 

それは光芒に包まれた、のしてんてん博士その人でした。

「よくぞそこまで理解を深めたものじゃの。」

「のしてんてん博士ではありませんか。」

ジイジはびっくりして言いました。

「それはお前のことじゃよ。」

その人影が静かに語りかけました。

「私は艦長です、博士。分かりませんか。今はジイジになってしまいましたが、

あの時の艦長ですよ、博士!」

ジイジは自分が艦長だった頃のことを誰も覚えていないのが残念でなりません。

「そんなことはどうでもよい。それよりやるべきことをやるのじゃ。お前にしかできぬことをな。」

かつて博士が艦長の自分に云ってくれた口調と同じなのがジイジには嬉しいのです。

「やるべきこと・・・」

「ひと族の系図を確かめるのじゃ。」

「ひと族というと?それは何なのですか、博士。」

「もとひと様じゃよ。」

「もとひと様・・・」

「この旅で必ず会えるはずじゃ。」

それだけ言うとのしてんてん博士の姿がゆらりと揺れて、黄金の光芒の中に消えてしまいました。

それと同時に光がメダルの中に吸い込まれるようにうすれて、

オレンジ色の太陽の紋章に戻ったのです。

 「もとひと様」とは何だろう?

「ひと族の系図」??

それがのぞみ赤ちゃんを救うことにつながるのだろうか?

 

赤ちゃんを救うことがスケール号に与えられた今ここにいる使命なのです。

ジイジの頭にいくつもの疑問が湧き上がってきました。

ぶるんぶるんと頭を振って、ジイジは膨らみ過ぎた思いを振り払いました。

後ろで興奮したもこりんの声が聞えたのです。

「博士!金色の星でヤすよ!!」

「光が金色の扇に見えるダす。きれいダすね。」

「あれが王様なのですね。神々しいです。」

「艦長、よくやったね。やっぱり天才だ。すごいぞ。」

ジイジは真っ先に北斗艦長を褒め称えました。

目の前に黄金の星が見えるということは、北斗の意志がスケール号を正しく導いた証しだからです。

「ばぶ―ばぶ―」

北斗は揺りかごの中で握りこぶしをまっすぐに突き上げて笑っています。

生後まだ数カ月の赤ちゃんなのに、北斗はすでに艦長の風貌をしているのです。

艦長のしるしの赤い帽子が似合っているとジイジは思いました。

「確かに太陽ダすね。」

ぐうすかが窓の外を指さしながら言いました。

「あッ、本当だ。太陽の周りをいくつもの星が回っている。

ほら、地球みたいのもあるし、あの赤いのなんか火星だよ。」

「あのモクモクの星は木星みたいでヤすよ。」

「博士、あの光っているのが原子というものダすか。」

「実は原子というのは太陽系と同じなんだ。太陽の周りを地球や火星が回っているね。それを

まとめて太陽系というだろう。それと同じように陽子の周りを電子がまわっているだろう。

あれは地球や火星と同じ天体なのだよ。それをひとまとめに原子と呼んでいるんだ。

太陽というのはあの原子の中心に光っている陽子のことなんだよ。

我々が会いに来たのはあの陽子なのだ。」

 

「びっくりダす博士。天体というのは空に浮かんでいるでっかいものと思っていたダす。

のぞみ赤ちゃんの中にも天体があるのダすか?」

「ぐうすか、考えてごらん。天体というのはみんな空(そら)に浮かんでいるだろう、

スケール号はその空を飛んでここまで来たんだ。太陽が浮かん

でいる空もこの空も、実はつながった一つの空なのだ。

だからほら、太陽や地球も、陽子も電子も、みんな同じ空に浮かんでいる天体なのだよ。」

「この空はのぞみ赤ちゃんの中にある空で、

その空は太陽が浮かんでいるあの空とつながっているんですね。」

ぴょんたが耳を折りながら聞きました。

「そうだよ。だからスケール号が飛んで行けるんだ。分かるかな。」

「みんな一つの空(そら)の中にいるのでヤすね。」

「分かりました!博士。コップを思い浮かべたらいいんでしょう。

1つのコップの中に太陽も原子も同じように入っているんです。

だからみんなコップの水の中に浮かんでいる。そうでしょう博士。」

「そうだぴょんた、君も天才だね。コップの中にあるのは真空と呼ばれる空間なんだけどね。」

褒められてぴょんたは耳をはためかせて空に浮かんでいます。

「やっぱり熱いのでヤすか?あの原子の王様も。」

嬉しそうなぴょんたを横目で見ながらもこりんが尋ねました。

「太陽と言ってもいつも熱いとは限らないんだよ。もこりん。

スケール号の観測では、火が燃えているのではないようなのだ。」

「金色の光は温かそうなんでヤすがね。」

「太陽の紋章の光かも知れないね。」

「早く行きましょう。会いたくなってきましたよ。」

ぴょんたが張り切って言いました。

「そうだね、みんな持ち場に戻ろう。」

「了解!」

「艦長、金色の原子に接近しよう。陽子から一番遠くを回っている電子の傍まで行ったらスケール号をその電子の大きさにまで縮小して陽子に向うんだ。」

「ばぶ―、ばぶ―」

「ゴロニャーン」

スケール号が艦長に応えて動き始めました。

 

漆黒の宇宙空間に黄金の惑星が少しずつ近づいてくる。

スケール号の窓から太陽族と呼ばれる金色の陽子星はそんなふうに見えました。

スケール号の乗組員たちはだんだん大きくなってくる陽子星を見守っています。

何て神々しいのでしょう。注意を払っていてもなんだか気分がうっとりしてきます。

隊員たちはそんな自分の気持ちに気付いていませんでした。

現実から少しずつ夢の世界に入って行くような感じなのです。

スケール号は静かにゆっくりと進んで行きます。

「きれいダすなぁ。」

「なんだかとても幸せな気分でヤす。」

「きっと優しい王様ですね。」

隊員たちが思い思いに心の声を漏らしていました。

その時でした。

「ぎゃニャおおおお-ん!!」

グサッ!!という衝撃音と共に

スケール号の今まで聞いたこともないような悲鳴が操縦室に響き渡ったのです。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(ちょっと一休み)

 

上のスケッチは、中央の完成作品の左右に、新たな作品を描くイメージ図です。

先の展覧会に展示した中央の作品を見ながら浮かんでくる形を描いたものです。

今回制作の唯一の指標です。

まず右の絵を完成させ、左の作品に移る予定。

制作時間、約2年。

 

上段、中段の絵はおよそ固まってきたので、次に進めていきます。

 

中段、下段にはまだ未知数の白地が手つかずのまま。

アトリエの天井の関係で、3枚が一堂に並べられないのが残念ですが

常に今この時、この場所だけを意識して描き進めています。

 

今この時、この場所とは

己のことだと、描きながら気付くこともありました。

 

キャンバスの前に座って手を動かしていると

それだけで幸せなのです。

 

 

 

 

 


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2 コメント

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Unknown (桂蓮)
2022-08-19 13:57:28
>キャンバスの前に座って手を動かしていると
それだけで幸せなのです。

その引用した文にこころ打たれました。

私もバレエのレッスンを受けている時、
それだけで幸せを感じています。
自分の極限に毎秒直面しながら
至福(福に至る)を細胞単位で感じています。

水曜は一日に4時間の3つのレッスンを一気に受けます。
3つ目はポワントレッスンで
もう訓練の極限みたいな感じですが、
限界を越えようとする自分の意思を
自分が観察できるから
それが幸せ、を感じさせるのでしょうね。


目に見えなかった空間感覚を
見せようと
2年かけて
作業しているのしてんてんさんの
意思が見えて(垣間)きた感じもしますしね。

絵が完成していく過程を目撃させてくださって
特別感が持てますね。

ここのブログにきている人たちも
言わなかっただろうけど
みんな過程を見守っていられることに
感謝していると思います。
返信する
桂蓮様 (のしてんてん)
2022-08-20 16:34:32
「限界を越えようとする自分の意思を
自分が観察できるから
それが幸せ、を感じさせるのでしょうね。」

桂蓮様のこの感覚は今の私の最先端の感覚と同じです。

それを論理的に言えば、
認識というのは「限界を越えようとする自分の意思」という部分と
「その意思を自分が観察できる」
という二つの部分に分かれます。本来私達はこれを一つのものととらえて疑問を持ちません。しかし私達が考えるこの人間の認識は、物質としての自分と空間としての自分が癒着したものだと考えるのです。
「限界を越えようとする自分の意思」は肉体的思考であって、それだけでは思考は成り立ちません。
「その意思を自分が観察できる」作用がなければ、私達はどんなにいい考えを起こしても、気付くことがありません。つまりこの「その意思を自分が観察できる」というのはそんな自分を照らし出す意識、「気付き」の作用ですね。
自分の考えや想いを自分で知るのは
私の外から静かに見守っている存在があるからです。その存在を私は「空」だと考え、この気付きこそが日常的に感じている「空」の実感だと理解できるようになったのです。

物質の作用と空間の作用を癒着から引き離して、空間の作用もまた自分だと認めた時、その気付きこそ至福なのではないのか、と思ったりします。

目下絵を描きながら自問自答の毎日です。

作業工程は、もう自分を丸出しにしてもいいかなという思いが出てきて、失敗も成功も丸投げで、自分を捨てられるのかという自問に対する対応です。
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